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不器用な姉弟は傷を舐め合う、舐め合う舌はちょっとざらつく  作者: 桜乃マヒロ
生徒会はあの日から始まっている

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初めてのランチ 前編

 ── 4月17日 12時50分 加賀美咲 ──


「橘さん? 今日はお昼どこか行くの?」

「ええ……すみません。ちょっと用事がありまして……今日は別の場所で食べさせていただきますね」

「うん! 分かったよ!」


 私がいつものメンバーで集まって昼食をとろうとしていた昼休憩の時間。

 橘さんも彼女のいつものグループと昼食をとるのかと思っていたけど、今日はグループの子たちに断りをいれ、弁当箱を持ち、一人で教室を去ってしまった。


 けど、先ほどの橘さんの表情が気になった。

 まだそれほど橘さんの事を知っているわけじゃないけど、私の勘が言っている。

 何かある、と。


 本当に何か用事があるのだろうか?


「ん? 美咲? どしたの~?」

「ごめん! 今日私用事あるんだった!」

「なに? 今日は別で食べてくるってこと?」

「うん! 時間キツイから適当にすましちゃうかも! ごめん!」

「お~、わかった~。いってら~」


 嘘を吐いたのは申し訳ないけど、橘さんの事が気にかかったので少し追いかけてみることにした。

 あわよくば一緒に昼食をとれないかと思って。

 橘さんとは入学式の事があったので、なかなか人前では話したいことが話せない。

 それに、橘さんって周りに人が集まりがちで二人になる機会が滅多にない。


 少しでもそういうチャンスは見逃せなかった。




 ——…………。


 橘さんを追ってみればやはりおかしい。

 教室から出てどこに行くのかと思えば、靴を履くなり外へ出て、校舎の裏までやってきた。

 こんなところで用事があるわけがない。


 校舎裏なんてなにも……あっいや、呼び出しとか?

 恋人はいないと怒ってたし、あの分だとクラスの外に友達がいるわけでもなさそうだった。


 なら告白とか?

 『校舎裏に来てください』って? うわ~‼


 と、一瞬でも思いはしたものの、普通に考えれば呼び出すにしても昼休みじゃなくて放課後だろうし、告白に弁当箱持参とか訳分からなすぎる。

 流石にこういった妄想で暴走するのはもう懲りた。


 でも、なら一体なんで?

 と私が頭を悩ませていると、橘さんは一人で校舎裏の竹藪に入っていった。


「竹藪……? 本当に何の用だろう……?」


 こっそり、と行こうにも竹藪なんて隠れるところがない。

 離れていれば分かりづらいかもしれないけど、後を追おうと思ったら離れているのも不都合だ。

 いい加減追跡はあきらめて素直に尋ねてみることにした。


「……橘さん!」

「ん……」


 急に声掛けたら驚くかなとは思ったけど、意外にも全くそんな素振りはなかった。


「加賀さん……お一人ですか?」

「うん、一人だよ?」


 さっきも言った通り竹藪で人が隠れるような場所はない。橘さんは私が本当に一人なのを確認すると、この前のようにふっと人が変わったように切り替わる。


 二度目でもやっぱり緊張した。


「……()けてきてたでしょ」

「え? いやだなぁ……私は偶然……」

「校舎裏まで? 告白の呼び出しでもあったの?」


 あ、私と同じこと考えてる……ちょっと嬉しい。

 とにかく下手に誤魔化す必要もないので、さっさと降参することにした。


「うーん、気づいてたの?」


 あまり驚いた素振りもなかったから、もしかしてと思って聞いてみる。 


「途中、窓ガラスに反射して見えてたよ」

「あはは……私マヌケだね。……ごめんね?」

「まあ悪趣味だとは思うけど……何の用?」

「いやぁ、もしかしたら今日は一人でご飯食べるつもりなんじゃないかと思って」


 そう言うと、橘さんはようやく驚いたような顔をする。


「……! なんでわかったの?」

「え、勘、かな?」

「勘って……間違えてたらとか思わないの?」


 そんなのどう対処すればよかったんだと橘さんは嘆く。


「本当に用事があっても、一人で食べる時があるならせっかくだし一緒出来ないかなって思って……本当に何かこの先に用事があった?」


 私も持ってきた弁当箱を掲げて見せると、橘さんはため息を一つ吐いた。


「私が嘘ついてまで何か隠そうとしてるって思ったなら、そっとしておいて欲しかったんですけど」

「やっぱダメだったかな……?」

「……まあいいや。加賀さんに秘密がバレるのなんて今更だしね。着いてきて」

「っ! ありがとう!」


 結局優しい橘さんは根負けして私のお願いを聞いてくれた。

 そのまま私に背を向けて橘さんは竹藪の中にある道を進み続けた。


「ただし、この先の事は秘密にしてね」

「もちろんだよ!」

「加賀さんには秘密にしておきたいことが次々とバレていく……」

「いいじゃん! 秘密の共有は仲良しの証だって!」

「まだ仲良くはない」


 相変わらずまだ友達とは認めてくれないみたいだ。

 まあ、それこそ気長にいこう。

 今日みたいな機会はこれからもあるはずだから。


「それで、この先に何の用なの?」

「なにって、弁当食べるだけだけど」

「本当にそれだけなんだ……でも、なんでわざわざ?」

「ふふ、着いてくればすぐ分かるよ」


 そう自信ありげな表情を浮かべて橘さんは笑っていた。

 そのまま歩くと、本当にすぐ異変に気が付く。

 けど、まだここに来た理由は分からなかった。


 大きなブルーシートが掛けられた謎の物体がある。

 ふくらみ的にそこそこのサイズだ。


「……なに、これ?」

「まあ、見てな……って!」


 そう声に合わせてブルーシートを捲ると、中身が露わになった。

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