表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら神様、転生能力ネタ切れ中!!!  作者: フレア
世界観説明兼プロローグ
2/2

石鹸パニック

めっちゃ長いです

能力開発。


何も神様だからといって転生者にそれほいっと能力を与えられる訳ではない。ある程度の調整が必要なのだ。


例えば剣を生み出す能力が欲しいとする。そしたらまずは何処までを『剣』とするかの調整だ。


幼い子供が『剣』だと思って振り回す木の枝。


確かにそれは剣ではなくただの木の枝だ。しかし幼子は間違いなくそれを剣だと思ってる。そうなるとどうだ。


仮にこの能力をその幼子が使えば枝が生み出される。しかし、それは他人からすれば『剣』を生み出す能力では無く、『枝』を生み出す能力となってしまう。


そういったことが起こらないよう、まずは剣という概念を設定する。


等身はこのくらいまで…能力は…等苦労して設定をすれば次は『生み出し方』だ。



例えば剣を生み出したいと思った場所に既に物質が存在したらどうするのか?


仮に生み出せたとしよう。そうなれば剣が生み出された場所に存在した物は何処へいってしまうのか?


謂わば矛盾、バグが起きてしまうのだ。それを防ぐために特に念入りにそこら辺の判定を決める。


そうして他にもいくつも、いくつも厳しい判定を越えやっとこさ能力が誕生するのだ。



だが最も楽な仕事だった。何てったって一度作った能力は何度でも流用できるのだ。


つまり剣を生み出す能力がまた欲しいとなれば今作ったそれを渡すだけでその仕事は完了してしまう。


チート能力なんてまともに考えりゃ基本的に似たり寄ったり。本当に稀に新しい能力を作るだけで後は元々作ったものをコピーし渡すだけの実に楽な仕事なのだ。


昔までは…。



俺、ノウリはまた頭を抱えていた。そう新能力の作成だ。


さっき言った通り新能力の作成はごく稀、基本的な能力は一通り作成済みなのだ…だが…!だが…!!


「なんだ固定石鹸を生み出す能力って!!あるかそんなもん!!!どうやってそれで魔王を倒すんだよォォォーーー!!!」


現在、数千年前に能力考案、転生者会話担当が変わってからこの職業は地獄と化している。


どれもこれもあの頭のおかしい小娘のせいだ。何でも『適当な量産型じゃ可哀想よ』とのことらしいが…


どう考えてもこっちのが可哀想だろ………。


渡された資料の上で項垂れる。


「あの…大丈夫ですか?ノウリさん」


「うん大丈夫じゃねえわ」


「ですよね」


申し訳なさそうに顔を潜めるのはクイムという子供。可哀想にアイツの部下にされちまった転生者だ。


「作れそうです…?」


「まあ前の顎を紙飛行機にする能力よりは」


「あの節は本当に…」


「いやまあ…作れたのは良いんだがアレで世界救えたのか?」


「奔走中みたいですね」


「すげえなソイツ」


「っていうかお前も良くこんな無茶苦茶な要望をここまで綺麗に纏められるな」


「まあ…慣れてきましたから…」


能力を作る際、どういったものが欲しいのかを指定する発注書はクイム作らしいがいつも意味不明な能力が綺麗に細かく説明されていてとても助かる。

流石は転生者候補だった男だ。


ちなみにクイムが来る前はあの女が書いてたが「ゴリラが上から生える」みたいな一文ときったねえイメージ図が載ってるだけで今以上に頭を抱えた。


「まあ分かった…今回も何とかするわ」


「お願いします。それでは」



「さて…作るかな…」











最終工程を終え、能力を納品する。


「マジで疲れた…」


とてつもなく疲れるキツい仕事。


それでも苦労して作った能力は全て世のため人のためになるのだから、俺もやりがいがあるというものだ。というかそれがないとやってられん。だから…だからこそ!


失敗ってなんだよぉ…!!!







―――――――――――――――


「ごめんなさい…返送?されちゃいました」


「返送!?」


「そんなことある!?」


「あの…むこうの方曰く、『こんなふざけた能力で役に立つかァ!!』とのことです…」


「ぐうの音もでないとはこの事ですね」


「そんな…一生懸命考えたのに……」


「酷すぎますよね………」


「いや明らかにその場のノリで決めてたでしょう…。それよりどうするんです?セイン様」


「…とりあえずこの子は責任もってここに置いて、あの世界には新しい人を…」


「いや、そうじゃなくて。また滅茶苦茶な依頼した上に今度は返送されたとか…とうとうノウリさんぶちギレるんじゃないですか?」


「げ………!そういえば!!」


「あのー私はどうすれば…」


「とりあえず仮部屋を」


「あっありがとうございます。」


「待ってクイム!!一緒に言い訳考えて!!」


「お一人でどうぞ」


「待って!行かないで!!!」







流石にそろそろ考えを改めるべきだろうと思っていた頃合いなので丁度いい。一度ノウリさんにガツンと言って貰いましょう。


「…今後私ってどうなるんですかね」


「先程セイン様も仰っていた通りここで暮らして貰うことになりますね…ごめんなさい」


「あっ!いえいえ全然!ただご迷惑じゃないかなぁって」


「そこは寧ろ私達がご迷惑かけた側なので…」


そうこうしている内に仮部屋前に到着する。


「こちらです」


「うわぁ…広い」


「仮部屋というか多分ここに住んで貰うことになりますが…大丈夫です?」


「えっ!?ここに住めるんですか!?」


「そうなりますね」


「やったあ!!!」


「満足していただけたなら。それでは掃除致しますね」


「それなら私も手伝います!」


「いえ、突然のことで大変でしょう?休んでていただいて…」


「そう言うわけにはいきません!住まわせて頂くんですから働きますよ!」


「………」


懐かしい。


僕が最初にここに来たときも似たようなことをセイン様にいった気がする。


「でしたらそちら側をよろしくお願いします。」


「わかりました!!」


元気いっぱいに返事をする少女。まあ…いい人だったのが不幸中の幸いですね…


なんて爽やかな石鹸の香りに包まれながら考える。


………石鹸の香り?


嫌な予感を感じて後ろを向く。


「凄くないですか私の能力!」


信じられない位泡立った泡の中から少女の声が聞こえてくる。


泡は瞬く間に膨張を続けやがて僕も泡に飲まれる。


「あー、これは戦闘に使えますね…」






――――――――――――――


足取り重く報告書を手に廊下を歩く。


転生者を送った趣旨の報告書の提出が私達には義務付けられているのだ。

普段はクイムが作成から提出までなんやかんややってくれていたのだけど…生憎クイムはあの子の対処で不在。


まあここで働いて貰うことになるだろう。

否、それは別に良い。いや少女には悪いが。それよりも問題は転生者を失敗したという事実だ。


以前クイムの時ですら、私何にも悪くないのに滅茶苦茶叱られたのだ。それが今回は私に非がある状況でのミス…あー怒られる…!!


特にノウリ。アイツは図体デカイ癖に些細なことで怒る。やれなんだこの能力はやれどうだこの能力は…なんだかんだ言って作ってくれてはいたが…それを無駄にしたとなれば間違いなく怒る。


出来ればアイツには永遠に届かないで


「セインーーーーー!!!!!!」


「…」


届いてた。凄まじい声量で叫びながら走ってた。ヤバイ。


喋ったわねクイム…!!


ていうか私悪くないじゃない。オンリーワンの能力をあげたいっていう100%の善意よ?そもそも石鹸だって使いようによっては戦えるわよ!ポケットティッシュと紙飛行機が活躍してるのよ?それを使いもしないで返送するなんて…ピンチなんだから何でも使いなさいよ異世界!!


そうこうしている内に目的の部屋の前についてしまう。


少し深呼吸を


「セイ―――――」


する間もなく野太い声を聞いて部屋に(にげ)る。


「どうもセインさん」


部屋の中で天使のように微笑むのはジェル。可憐だが彼女こそ私達人間の転生を担う神々のリーダー格だ。


「お話によれば転生を失敗なさったようで?」


「はい…」


噂って広まるの早いのね…いやノウリが大声で叫んでるからか…おのれノウリ。


「とりあえず報告書を頂きますわね」


「…どうぞ」


「………なるほど…石鹸ですか。具体的にこれでどう世界が救えると?」


「えっ…と飲ませる…とか」


「毒殺ですか、でもそれならば毒物で良いですよね?」


「――――ベニテングダケとか?」


「いやなんでベニテングダケ指定なのかは分かりませんがまあそういうのです。」


「まあこの際です。普段から思っていたのですがこの際ハッキリと」


「オンリーワン、ただ1つの能力を与えるというのは大変素晴らしい試みですが如何せん実用性というものが…」


笑顔で淡々と始まる説教。これが後二回は残っているのだ…。ノウリとそれから―――――


その時ゴゴゴと音がする。


「何の音です?」


「扉開けますね」


ガチャリとドアを開くと…そこにあったのは大量の白い泡やシャボン玉。恐らく石鹸だ。


「何事!?」


「ジェル様!!」


「げっ―――」


「セイン!!ってそれどころじゃねえ!!大変だ!!!」


「この状況は一体?」


「能力の暴走だ!!何かしでかして石鹸が無限に泡立ってんだよ!!!」


「いやどういう状況!?」


「知るか!!例の転生者は!?」


「クイムが部屋に連れてったけど…」


「部屋っつうと…こっちか!!」


「いやどっち!?」


指を指すも全面泡とシャボン玉まみれで前が見えないのだ。


っていうか不味いのでは…?これもしかして現在進行形で私の罪増えてるのでは?


「セインさん…これは始末書ですね…」


「待って待って待って!!」


「言ってる場合か!!こんなんじゃ過ごしにくいったらありゃしねえぞここ!!!」


「能力の暴走なら能力者本人が止められるのでは?」


「確かに…!ならなんで…!!」


「―――そういえば止めかた…っていうか能力の使い方教えてないです…」


「――――始末書ですね」


「あーーーー!!!!」


「いいから早く止めるぞ!!」


「わ、わかったわ!!」


「あっお待ちください、この床じゃ走ると」


「うわっ!!」


ジェル様が何かを言い終わる前に私の体は床に倒れる。


「滑りますよ…って遅かったですか…」


「てかテメエ!こけた拍子に更に泡立って…ってこうやって増えてんのか!!!」


「なるほど!!」


何も知らずに巻き込まれてこけた神の摩擦で石鹸が泡立てられるのが繰り返してるって言うわけね!


特別製の石鹸の泡立ちは凄まじくそれだけでも凄まじく膨張するのだ。


「って立ち上がれない!!」


「何やってんだお前!…うわ泡立つ泡立つ!!やめろ!!」


つるつると滑る床で私は立ち上がることが出来ず滑る度に石鹸は泡立っていく。


「世界救えそうですね」


「むしろ滅びそうですけど!?」


ノウリの叫び声が響く


「水属性魔法で石鹸を流しつつ進みましょうか」


「廊下ビッショビッショになるな…」


「後でセインさんが片付けるのでご心配無く」


「嘘でしょ?」


―――――――――


信じられない勢いで泡立った石鹸は瞬く間に部屋の外まで流れ出してしまう。


大変なことになってしまった…!


「ちょっ!?なんですかこの泡立ち!!」


焦ったような転生者さんの声。


「転生者さん!?何処ですか転生者さん!!」


「あっクイムさん!!こっち!こっちです!!」


「とにかく能力の解除を!!」


「能力の解除ってうわぁっ!!」


「転生者さん!?」


転んでしまったのかストンと音が響く。


音を便りに泡を掻き分けようやく見つける。


「よかった…無事ですか?」


彼女に手を差し伸べる


「はい…ありがとうございます…」


その選択が不味かった。彼女をある程度持ち上げた瞬間、体勢を崩してしまったのだ。


「うわっと!!」


そのまま僕は勢い良く彼女に押される形となり…


「あーーーーーー!!!??」


「クイムさーーーーーーん!!!!??」


石鹸で摩擦を失った床を高速で滑りながら部屋を飛び出すことになってしまった。


明らかに物理法則を無視したこの滑りは間違いなく転生能力。――――なんて感心している場合ではない。何とかして止めなければ






「なんか音しない?」


「気のせいじゃねえか?」


「っと…あ、ノウリさん避けてください」



「あーーーー!!!!!!」



「あ?うぉぉぉぉ!?」


風を切るような速度で先程までノウリが居た場所を少年が横切っていく。


「今のクイム!?」


「かっ飛んでったな…」


「っていうかせっかく流した床がまた石鹸で………」


「いやクイムの心配をしてやれよ」


「先程セイン様が滑った時とは比べ物にならないほど滑っていきましたが…能力が強化されてるんですかね…」


「そんな能力つけた覚えはないんだが…」


「調整間違えたんじゃないの?」


「んな筈はねえと思うけど…」


「どのみち確認は後です。急いで止めないと犠牲者が増えますよ」


「ジェル様、死んではないです」


「そもそも私達死なないしね」







時間が経つ毎に聞こえる悲鳴と凄まじい速度で通りすぎる人影が増えていく


「地獄絵図ですね」


「思ったりより大惨事になっちまったな…」



「クイムさーーーーーーん!!!!!!」



「とかなんとかしてるうちについたぞ。アイツだろ」


「転生者ちゃーん!!!」


「アレ…?セインさん!!!」


「能力を止めてー!!」


「どうやって止めるんですか!!!」


「念じるのよ!止まれ!!って!」


「何度もやってますよそんなこと!!!」


「えっ!?」


「…妙ですね」


「転生者自身で能力を止められねえなんてまずあり得ねえぞ?」


「あーなるほど」


「ジェル様?何かわかったんですか?」


「呪いですねアレ」


「呪い!?」



「ちょっとどいてください。……転生者さん、少し驚くかも知れませんがごめんなさいね」


「え!?誰!?何!?」


ジェルが手を翳すと目映い光の柱が転生者の部屋を包む。


「うわっ!?眩しい!!!」


「解除完了です」



ジェルの言葉通り石鹸は能力の効果を失い増殖が止まる。


「あれ…泡立たなくなった…」


「ジェル様!?呪いって一体!?」


「セインさん、どのようにして異世界転生に失敗したんですか?」


「………すみませんどういうことです?」


「私は以前のように『送るのに失敗した』と思っていたんですが」


「いえ、送ることには成功したんですけど送り返されてしまって…」


「ふむ」


「いやどう考えてもおかしいだろそれ」


「おかしいって何よ」


「なんで送り返せるのか…ですね」


「送り返したってことはソイツは異世界、この場合は俺らの世界に『転生させなおした』ことになる」


「そういえば…」


「最低でも私達レベルの神があちらにいることになりますね」




「なんか難しいこと話してる…」


恐らく私のせいだろう。床は石鹸まみれ色んな人に迷惑もかけてしまった…。


幸いもう石鹸が溢れてくることはないが、一度溢れてしまったものは私でもどうしようもないらしい


すると深刻そうな顔をしたセインさんが私の元に歩いてくる


「迷惑かけたわね。改めて説明するけど。とりあえず貴女にはここで暮らしてもらうことになるけど大丈夫?」


「はい…」


「それは良かった。それと今回の件は貴女は悪くないわ。」


「へ?」


「ちょっと良くないものに狙われちゃったみたいね」


「よかったぁ…」


「?」


「いや、良くはないんですけど私がなんかやっちゃったのかと思って!」


「そこは大丈夫よ。安心して」


「それでちょっと相談なんだけど」
















再び光に包まれ、世界を越える。


目の前にはローブを着た男の人かも女の人かもわからない人


その人の前で私は全力で手を擦り


「………!お前は!?」


「石鹸の恐ろしさをくらえーーー!!!!!」


泡を増殖させる。


「ちょっ!?きさっ――――――」


一瞬で泡とシャボンで辺り一帯を埋め尽くすと、私の体は光に包まれる。


「セインさんから伝言です!!次に手を出したらもっと酷い目にあわせるぞこのやろー!!!」




―――――――――




「セイン様……」


「うるっさいわね!結局何故か石鹸は私が掃除する羽目になったし文字通り一泡吹かしてやらないと気が済まないでしょ!」


結局石鹸騒動の黒幕は別世界の神。こちらに攻撃する目的で、わざと世界を偽造し送られてきた転生者に能力暴走の呪いを掛け返送。


しかし、ふざけた能力だったせいで嫌がらせ程度にしかならなかったのだ。「こんなふざけた能力役に立つかァ!」ってそういう意味ですか…


「っていうか私がこんな能力にしなかったらここ滅んでたかも知れないんだからもっと感謝して欲しいわね!」


「そういう問題じゃないでしょう」



すると間も無くして部屋に光が灯る


「おかえりなさい、アロマ」


「セインさん、クイムさんただいま!!」


転生者さん…アロマと新たに名付けられた少女は結局セイン様の弟子にして僕の後輩となった。


「ちゃんとぶっ放して来た?」


「それはもう!これでアイツの家は石鹸まみれでツルッツルですよ!!」


「ちなみに復讐の心配とかないんですか?」


「そこら辺はジェル様がなんとかしてくれたみたいよ」


「あの人何でも出来ますね」


「まあ今回は大事になりませんでしたけど、これに懲りたら転生先の確認はしっかりと」


「おやつにするわよー!」


「わーい!!」


「聞いて下さい!!」


ともかくここは一人増えて賑やかになりそうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ