ネタ切れ
世界観説明その1兼プロローグ的な。今回はちょっと短め
「ネタが切れた!!!」
大きな声でそう叫ぶ女の名前はセイン。不慮の事故なんかで死んでしまった若者の中から資格のある者を異世界に送る役目を持つ…所謂神様である。
問題は異世界転生といえば外せないのはチート。能力を持たない若者を送った所で餌になっておしまいである。故に転生者には神の権限からチートを与えるのが基本だ。
しかし…何千、何万どころかピンチの異世界は無数にある。それ1つ1つに転生者を宛がうとなればチート能力のネタ切れはほぼ必然なのである。
「だからありきたりに魔力無限!とか力最強!とかにしちゃえばいいじゃないですか」
呆れたようにそう返す少年の名はクイム。彼も転生者になるはずだったのだが…どういうわけか失敗しここに留まることになってしまった謎の少年である。
仕方がないので秘書兼弟子として働いている。
「何適当なこといってんの!私達にとっては無数の人々の1人でも当人や異世界にとってはたった1人の人生であり主人公なのよ?全員固定で適当に決めるなんて可哀想でしょ!!」
「そうは言いますけど、いくらオリジナリティがあったとしてもろくでもないもん渡されたら却って可哀想ですよ。」
「前の鼻からポケットティッシュ生えてくる能力で転生させられた人の顔見ました?」
「でも…見た感じうまくやれてるみたいだし…」
「ともかく無理に一人一人考える必要は…」
「なんだかわかりませんけどもしかして私鼻からポケットティッシュ生える能力でよくわからん世界送られそうになってます?」
2人の問答を前にひたすら押し黙っていた少女が口を開く。
「あっ大丈夫よ私転生者の能力は被らせない主義だから!!」
「そういう問題じゃないかと…」
今回の転生者はこの少女だ。転生先は魔王の危機によって国が壊滅しかけているという異世界。本来国を守る勇者がうっかり死んでしまったらしく、滅びの一途を辿ることとなってしまったようだ。
「ともかく、この異世界ならば戦闘系の能力が必要じゃないですか?」
「そうね…カボチャを生み出す能力とかどうかしら?」
「話聞いてました?」
「私カボチャで異世界救うんですか!?」
「させないから安心して!?」
「そうは言ったって戦闘系の能力なんて殆ど作りつくしたわよ?」
「だから王道なので良いんですって」
「石鹸系とか?」
「もしかして王道の概念壊れてます?」
「石鹸!!ちょっと良いかも…!」
「ちょっと良いの!?」
「じゃあ石鹸系は確定ね」
「はい!!」
「良いの!?」
「じゃあ石鹸を使って何をするかね」
「手を洗う以外ありませんよ?」
「液状で出すのか…個体で行くか…悩みますね!」
「悩むの!?てかなんでそんな楽しそうなの!?」
「液状ならすぐに使えるけど固形なら武器にするという点もあるものね…!!」
「ないですよ?」
「…悩みますけど固形がいいです!」
「武器にするんだ!?」
「決まりね!!貴女の能力は『固形石鹸を生み出す能力』よ!」
「やったあ!!」
「良いの!?固形石鹸で魔王倒せるの!?」
「早速転生よ!!」
「本当にありがとうございました」
「はい、本当にごめんなさい…どうか頑張ってください」
結局固形石鹸を生み出す能力を獲得した少女は笑う。
能力担当のノウリさんが滅茶苦茶頭抱えてた。
「貴女なら魔王なんて余裕ね!」
「はい!!」
「何処からそんな自信出せるの?」
「じゃあ…いってきます!」
「ええ、いってらっしゃい!」
彼女の体を光が包む。
「彼女本当に大丈夫ですかね」
「当たり前よ!」
1人の主人公を生み出し世界へ送る。重大な転換点に見えるがコレが僕達の日常。神の世界だ。
やがて光が消え、そこには先程の少女の姿は…
「ごめんなさい…返送?されちゃいました」
「返送!?」