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天才理論  作者: 三輪 圭一 ・
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第七話

最近鬱気味で文体が安定していません。

ご容赦ください。

 かつての相棒の家を後にした彼は、彼の通っている学校の近くにある公園で時間を潰していた。このような日に限って、彼の親は珍しく休みであり、彼は親に「五時くらいに帰ってきます」と伝えていた。それが二時頃に帰ってきたとなれば親に変な気を掛けさせてしまうかもしてない、と彼は考え、結局この夏場、お金もなく外に出た彼はコンビニに涼み兼買い物を装って入れず、勉強道具も持っていないため勉強と銘打って図書館にも入れず、ただ公園の日陰で夏の猛暑を耐え忍ぶ事しか出来なかった。無論、この場には他に様々な確率が存在していたが、彼が気付く事は無かった。

勢い余って色々やらかしてしまったな…。やはり感情的になるのは危険かもしれない。まぁ、感情的にならないようにする手立てがあるわけではないんだが。

彼は反省しつつ、周りで泣き叫ぶ蝉の声に耳を傾ける。

このまま喧嘩…というには些か激しい衝突をしっぱなしでいいのだろうか。いや、向こうは俺を拒絶しているように見えた。いっぱい蹴られたし。となると、このままであるのがきっと正しいのだろう。普通に考えて、嫌われている相手に寄っていくメリットは存在しない。うん、そうだ。関わらない方がいいんだ。これでアイツとの関係も終了。仕方ない、嫌われているんだから。嫌う、というのはつまりその存在自体が主観にとってマイナス要素であり、近づくだけ主観は嫌悪感を覚える。だから、近づかないのが正解、正しい、正しいんだ。

彼はそう自分に言い聞かせる。彼の思考回路では、これは無論正しいと判定されており、彼はその判定通りに行動する。何故なら、これまでの彼の研究の結晶だから、一番頑張って作り上げたものだから。彼は、大人の言う「努力は決して裏切らない」という言葉を信じ切っていた。というか、彼の思考回路の殆どは大人に言われた綺麗事、褒められたときに掛けられた甘い言葉を主軸とし構成されていた。そこには、彼の経験、感情は一切含まれていなかった。そしてそれを良しとしていたがための現実との乖離に眼を瞑り、さもその考え方が正しいとしてきた歪みが、この頃から少しずつ、確実にバグを起こしていた。そして今回は「努力したんだ、頑張って作り上げたんだ」という意識から「この作り上げた思考回路は完璧に近しい所にある」という勘違いを起こし、そしてそれを信じ込み、今後彼がすべき事から彼の今後の行動は大きくずれてしまった。無論、これまでも様々な失敗を犯している。まぁ、この時の彼は知る由もないが。

正しい…はずなのに何だこの感じは。正しいというのに、気持ち悪い。はっ、これだから感情ってやつは無駄なんだ。感情何て無駄なものを持つ人間も、全く無駄が多すぎる。プラスマイナスで客観的に物事を捉えなければ、正当性のある判断を下せないと何故分からないのか。

彼の思考は彼の主観の元彼の都合の良いように展開され、彼は自らが正しいという事を、彼の思考のイコールの部分だけに焦点を当て凝視し、そして自分は正しいと錯覚させ、虚から湧き出る根拠の無い自信に一人酔いしれる。この状況を客観的に(・・・・)観測する程の器量がこの時の彼に無いとはいえ、その様子はとても滑稽で、惨めで、とても恥ずかしい姿だった。

まあ、そんな皆より一つ上の段階に既に登っている俺がぁ。ここまで頭を悩ませるって事はやっぱり感情ってのは難しいもんだな。これだけ高度って事はやっぱり何か高次元の存在が関与してるとしか思えないな。感情と魂の関係は、やっぱり研究し続けなければならないな。うん。

彼の頭の中で、あまりに偏屈な茶番が終了したところで彼は時間を確認するべく公園内にある時計に目を向ける。その時計は、二時二十七分を示していた。彼の家からここまで三十分程度掛かる事が、彼の無駄な頭の回転の速さを示唆する。また、この時彼は茶番の頭で「親に気を掛けさせる」という事を気にしていたのにも関わらず、元相棒の親が彼の家に電話をし、あの惨劇を伝えるという事、顔の傷の跡が残っていないか、等の心配をしていなかった。はぁ、なんて馬鹿なんだろうか…。

ていうか、アイツ何なんだよ、「勉強しなきゃいけない理由は何だ」ってよぉ。勉強は毎日しっかりやってこそ実が結ぶってもんだ。毎日やらなかったら、勉強の意味がない。効率も悪い。勉強をやらないという事にはデメリットしか伴わない。結局俺の方が頭が良いって事か。エリートだかなんだか知らないが、結局俺の方が優秀なんだな。俺が受験しなかっただけで、実際は俺も進学する実力は十分にあったって事だ。うちの中学の中野さんがおかしいだけだ。あれはガチの天才。天才の凡人の俺やアイツが敵わないのは当然。でも、俺はアイツに勝ってる。へへっ。

ちょっといい加減にイラついてきたから、これ以上彼の妄言を垂れるこの状況の描写は止めておこうと思う。


それから彼は只々自分に酔いして、その長い時間を過ごし、結局五時を少し過ぎるまでその公園に蔓延り、帰宅したのは五時半頃だった。

「ただいまー。」

「おかえりー、おやつ食べる?っあでも敬道君の家でなんか頂いたりしたかな」

「いいや、頂くよ。」

「そう?いつもの場所にあるからね」

「うん。」

そう言って彼は靴を脱ぎ家に上がり、玄関で掃除をしていた母親の横を通り過ぎ、廊下を歩き、扉を開けリビングルームに行き、キッチンに向かう。そこにある戸棚からパンを取り出し、冷蔵庫からジュースを取り出し、いつもの席に座る。そしてリモコンを操作し、動画配信サイトを開き、テキトウに動画を見繕い見ながら間食を食べ始める。

これが、彼の親へ向けた"良い子"の姿勢だ。普通のこのように皆見てる動画配信サイトの人気な人の動画を見て、健康なように見せるため間食を欲しがり(健康そうに見られているかは不明)、普通に話し、節々に真面目そうなニュアンスを混ぜる。模範的な優等生を彼は親の前では演じ続ける。いつもに増して態度が良いのは、きっとあの茶番が彼の自信を肥大化させたのが原因だろう。ここからもなかなかにムカつく態度を取るため詳細は割愛するが、凡そ先ほど挙げた条件を守り続けていた。このように彼は親に不信感を抱かせる事無く、あの異常な思考回路を保持し続け、研究を続けていた。

そして、彼は一日を終え、床に就いた。結果として、あの昼間の彼のやらかしは彼の親に伝わる事は、果たして無かった。まず、彼の顔の傷は気付かれなかった。ビンタを受けてからなかなかの時間が経っていた事が幸いしたらしい。そして何故向こうの親は電話してこなかったのか。理由は今も良く分からないが、きっと電話をしたら、彼の親は彼に状況を問い詰め、結果として彼に対して息子が手を挙げたという事が伝わってしまう事を恐れたのだろう、というのが今のところの予想だ。結果として、彼は確実な落ち度があったのにも関わらず目標を達成してのけてしまった、という事実だけがこの場に残った。

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