半兵衛との会談
おはようございます!日向を向く白猫です!
大変お待たせ致しました泣
ついに始まった半兵衛との交渉、今回はその前編といったところです。
ゲームファンの方には馴染み深い言葉も登場…?
続きをお楽しみください!
あたりの騒然さとは異なり、稲葉山城内はものすごく落ち着いた雰囲気だった。猪右衛門はその静けさに、少しずつ緊張しているのを感じていた。手に汗が滲む。状況や環境は違っているが、この交渉の結果でこれからの日本の未来が変わる。それはある意味、BoWの大会に出場している時と似ていた。ゲームの大会に優勝したとて、日本の未来には影響はしない。しかし、自分自身の未来は変わる。何かを変えるという点において、現代での自分とこの時代での自分で重なるところがあったのだ。BoWの試合の前、彼はいつも口にする言葉があった。それは「Good luck,have fun!」という言葉である。
BoWの大会は、各種配信サイトや動画サイトで配信が行われていた。とある有名なゲームの実況担当は、ゲーム開始の言葉としてこの言葉を使っていた。意味は、「幸運を、楽しんで!」であるが、大会の会場で聞いたこの言葉を彼はえらく気に入っていた。だからいつも試合が始まる時には、自分と仲間に当てて声に出していたのだ。すると自分自身の緊張が不思議とほぐれていった。
まさに今交渉という名の試合が始まろうとしている。大事な舞台を前に猪右衛門は、静かな稲葉山城で呟いた。
「Good luck,have fun...」
隣を歩く長康はその言葉を聞いていた。聞き慣れない異国の言葉。なんのことかさっぱり分からなかった長康が、猪右衛門に尋ねる。
「猪右衛門。その『ぐっどらっくはぶふぁん』とはどう意味だ?」
「上手く行きますようにっていうおまじないですよ。」
猪右衛門は少し笑って答えると、さっきまでの緊張がほぐれていくのを感じていた。彼にとってこの言葉はやはりまじないの様である。結果はどうなるか分からない、だがやらないよりもやる後悔の方がましだ。そう猪右衛門は、自分自身に言い聞かせた。
案内された先は、半兵衛と長康と猪右衛門の3人だけの空間。半兵衛の2人に対する最大限の配慮であった。この時半兵衛は、織田方の要求・思い、特にホンネを引き出したかった。そのためには、他の者の干渉は邪魔になる。そう思った半兵衛は、あらかじめ人を払っておいた。3人が床に座ったところで半兵衛が切り出した。
「君たちは僕を見るのが初めてだね?僕は竹中半兵衛。今はここの城主をしているよ。よろしくね。」
目の前にいる半兵衛は、その可愛らしい見た目と口調から子供のように見えるが、その優れた知性と冷静さで戦国の世に名を知らしめる天才軍師である。言葉の戦いとも言える交渉において、相手を揺り動かすには相手を上回る程の知性が必要である。今回の相手である半兵衛は、まさにそのスペシャリストだった。強大な相手を前にしていることを改めて認識した長康と猪右衛門は、より一層気を引き締めた。
「私は前野長康。織田信長様の家臣秀吉様より、交渉の人を預かりし者です。そしてこちらが…」
「山内猪右衛門です。長康様の家臣です。よろしくお願いします。」
2人が自己紹介をすると、半兵衛は早速要求を聞いた。2人の要求はただ1つ。稲葉山城の無血会場だった。長康は言う。
「我々の要求は、こちらの稲葉山城の無血開城でございます。秀吉様は出来れば戦を避けたいとお考えです。これ以上の犠牲を双方で出さないよう、何とか平和的に解決したいというのが私の主の意見です。」
半兵衛は中美濃東美濃の平定の際、何か違和感を感じていた。今までの信長であれば全てを武力で平定しようとしていたはずだ。立場上、周辺諸国の情報はよく耳にしていた。特に中美濃の平定において、秀吉の調略というのは大きな功績を残しており、美濃の武将たちにとっては脅威であった。できることなら戦は避けたい。自分の愛する国が、これ以上戦火に巻き込まれて崩れて行くのは見たくない。かと言って美濃を譲れば、実際に美濃を治めていくのは信長である。秀吉の思いはわかるが、信長の事を信用はしきれない。それに自分の行いで目を醒ました龍興の思いを無駄にはしたくない。
「平和的に解決したいのは僕も思ってるよ。この美濃をこれ以上の戦火でボロボロにしたくないんだ。でも仮にこの稲葉山城を君達に明け渡したとして、僕達斎藤家に何かいい事はあるかい?」
半兵衛は、迷っていた。秀吉の思い、龍興の思い、自分に付いてきてくれた家臣の思いは直接受け取った。そこに見えない信長の思いが重なり、自分自身が決断を下す。半兵衛は自分がその重大な役割を担っている事を重々承知していた。だからこそ織田方と斎藤方双方にメリットのある決断をしたかったのだ。
逸話では、この会談は信長が半兵衛に対し、美濃の半分を割譲するといった交渉を持ちかける。それに対し、半兵衛は稲葉山城は美濃の城であり、他国の人に与えて所領を得るのは本意では無いとし、信長の提案を突っぱねる。しかし今、目の前の現実で交渉しているのは長康と猪右衛門である。逸話とは違う状況に、猪右衛門は何か直感でチャンスであると感じた。そう思った猪右衛門はここぞとばかりに話す。
「半兵衛さん。あなたが今どういうものを背負っていて、どれだけの責任を感じているか自分達には到底分かりません。ですが、今この場で話をしているのは自分と、長康さんと、半兵衛さんの3人だけです。環境も状況も立場も関係なく、半兵衛さん自身がどうしたいのか。それが聞きたいんです。」
猪右衛門は半兵衛自身の思いを聞きたかった。現稲葉山城主として、斎藤家の家臣として、織田方の敵としての半兵衛の意見ではなく、1人の竹中半兵衛としての思いを聞きたかった。
「僕自身の思いか…」
軍師竹中半兵衛として斎藤家の為、美濃の為に行動してきた半兵衛にとって、猪右衛門の真っ直ぐな言葉は鋭く突き刺さった。自分自身がどう思い、どうしたいか、どうありたいか。そんなこと考えたこともなかった。半兵衛はここで初めて直接自分と向き合うことになる。今まで自分がしてきた事、思った事とその意味を半兵衛は振り返っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
3~4話ぐらいの展開を立てなければいけなかったので時間がかかっちゃいました。
ここからはある程度早めに投稿できると思います!
次回は半兵衛の回想編です!「ぐっどらっくはぶふぁん!」