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ゲーマーが戦国時代で生き抜くようです  作者: 日向を向く白猫
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墨俣城にて…

こんにちは!日向を向く白猫です!3話目にして、秀吉との対面のシーンです。場所は完成したばかりの墨俣城。信幸がまさに歴史の渦に巻き込まれて行く初めのシーンになります。後の天下人秀吉とその未来を知る信幸。その接触が2人にとってどういう意味を持つのか、お楽しみに。また史実に添わせる上で重要な役割を持つ人物が登場します。それでは、続きをどうぞ!

城の階段を登って、天守の最上階まで辿り着く。

「正勝殿、やっと参られたか。」

部屋の片隅にぽつんといたひとりの男が、正勝の名を呼ぶ。

「おう長康。待たせたな。」

長康と呼ばれたその男は、小六の後ろにいた信幸に気付く。

「して正勝殿、その御仁は?」

小六は、後ろにいた信幸をグッと自分の前に出すと、顎でクイッと合図をした。信幸は、自己紹介をする。

「今日からこちらでお世話になります。信幸と言います。よろしくお願いします。」

長康は答える。

「私は前野長康。秀吉様の家臣でそこにいる正勝殿とこの城の建築を任されておった。して、貴殿は見慣れない格好をしているが、どちらの出身か?」

長康の問いに、信幸は口ごもってしまった。見かねた小六が割って入る。

「長康、いいじゃねぇか。こいつはどこか遠くから来たんだ。今はそれでいいじゃねぇか。」

「正勝殿が認めた御仁だ。きっと話しにくい事情もあるのだろう。正勝殿に免じて、今は深くは探らないでおこう。」

またしても信幸は小六に助けられたのだった。

暫くしてそれまで慌ただしかった場内に緊張が走る。

「秀吉様、ご入城!」

物見の兵士が、声を上げた。

秀吉が来る。信幸の心は緊張と期待でいっぱいになっていた。

秀吉が座るであろう場所を空けて、長康、小六、信幸はじっと座って待っていた。天守に登る階段の音が聞こえ、その音の主が遂に姿を現す。長泰と小六が座ったまま一礼をする。それに倣って信幸も一礼をする。

「そんな畏まるなよ。わしはそんなに偉くないんじゃから。」

声の主は、史実の通り猿によく似た秀吉だった。長康と小六が頭を上げる。信幸はまだ頭を下げたままだった。

「わしのわがままを叶えてくれてありがとうな。一夜でこんな城を築くなんてさすがわしの仲間じゃ。」

秀吉は、まだ頭を下げている信幸に気付いた。

「お前も顔をあげてくれ。」

信幸は頭を上げる。少し高い所に腰掛けながら秀吉は続けた。

「おぬしは初めて見る顔じゃな。長康、小六こいつは誰じゃ?」

小六が答える。

「へい、こいつの名前は信幸。昨夜、森で木を切っていたところ俺の仲間が見つけて連れて来やした。話を聞いてみると、こいつは未来から来たらしいですぜ。俺はこいつが嘘をついてるとは思えねぇ。きっと秀吉様も気に入ると思いやして、連れて来やした。」

秀吉は、小六を信用していた。その小六に言われ、信じて見ようと思った。秀吉が尋ねる。

「小六が信じているなら、わしも信じるぞ。して信幸、この日の本は統一出来るか?」

秀吉の問いに信幸が答える。

「必ずできます。未来の日本はひとつになります。」

「それをするのは信長様か?」

幸信は正直に答えた。

「信長様と秀吉様の手で成し遂げます。」

秀吉は言った。

「信長様とわしの手でか…。面白い事を言うやつじゃ。わしもお前を気に入ったぞ。」

秀吉はこの時、自分が天下統一への道の担い手であることを自覚した。どこから来たかも分からない信幸の言うことを信じてみよう。そう決めたのであった。

「長康。こいつの面倒はお前が見てやれ。」

「私がですか?」

それまで他人事のように聞いていた長康は、突然呼ばれた自分の名前に驚いた。小六が言う。

「秀吉様、俺が見つけたんだぜ。俺に面倒を見させてくれよ。」

長康もそれに頷く。

「小六、その気持ちはわかるが、信幸は長康の元に付くべきだとわしは考えている。理由は自分でも分からんが、その方が長康にとっても信幸にとっても良い気がする。つまりは直感じゃが、わしの頼みを聞いてくれんか?」

小六は、秀吉の頼みを聞くしか無かった。そもそも、一夜で城を作れなんて事を言う主君の言うことだ。信頼している主君だからこそ、その直感を信じてみようと思った。小六は答えた。

「秀吉様の直感なら、俺も信じる。わかった。長康、俺からも頼む。こいつの面倒を見てやってくれ。」

長康は、少し悩んだ後に答えた。

「信幸殿はそれで良いのか?」

信幸は少し考える。が、考えてもわからなかった。ただひとつだけわかることは、この提案が秀吉という偉大な人物の直感であることだ。ならばその直感を信じてみよう。

「秀吉様がそうおっしゃるのなら、そうすべきだと思います。長康さん、よろしくお願いします。」

「この長康、命に変えても信幸殿をお守りいたす。」

小六が呟く。

「そんな大層なことじゃねぇだろ。」

それを聞いた秀吉が笑う。

「はっはっはっ。それが長康の良いとこじゃ。信幸のこと頼むぞ。」

こうして信幸は前野長康の元でこの戦国時代を生きることが決まる。秀吉は続ける。

「めでたいことじゃ。なぁ長康、信幸に新しい名前を付けてやったらどうじゃ?」

この時代主君から名前を授かるということは、主従を現すことと同時に信頼の証でもあった。その事を何となく分かっていた信幸は、快く引き受けると長康の付ける名前を待った。

「小六殿、信幸殿は森で見つけたと申したな。」

「おう、そうだな。」

「この辺の森はよく猪が出る。信幸殿は突然森に現れた1頭の猪みたいなもの。猪の名をそのまま入れて、猪右衛門というのはどうだ。」

小六が茶化す。

「猪か。こりゃあ面白ぇ名前だ。なぁ信幸。」

信幸は、どんな名前でも受け入れるつもりでいた。きっとそれがこの時代の文化だと思ったからである。

「これから私は猪右衛門と名乗ります。長康さんよろしくお願いします。」

小六は少し驚いた表情をしていたが、信幸の真面目な顔を見て真顔になった。

「そういえばおぬし、苗字はあるのか?」

秀吉が尋ねる。

「山内という苗字があります。」

真顔になっていた小六がまた茶化す。

「山の内の猪か。こりゃあしっくり来るじゃねぇか。」

今度はそこにいる皆が笑った。今日は山内信幸が山内猪右衛門になっためでたい日。新しい名とともに、信幸はここで生きていく覚悟を固めるのである。

世は戦国時代、自分がいつ死ぬかも分からない世界で、平和な世界を生きてきた人が生き抜く覚悟を決めた。まだ自分を守る術も知らない1人の若者にとって、それはほんとの一大決心だったのである。

さぁ遂に信幸がモデルとなる人物に近づいてきました。別名猪右衛門。信長時代~家康時代までを生きたとある武将です。気になる方は是非調べて見てくださいね。今回は秀吉とその家臣である前野長康が登場しました。秀吉の人物像はゲームの影響が強いかも知れません。前野長康については、史実の中で性格が出て来ることが少ないので小六とのバランスで基本的には真面目で冷静という設定にしました。これから信幸改め猪右衛門は、長康の元でこの時代を生き抜く術を学んで行きます。約2年間の信幸の成長の過程、全てオリジナルストーリーで展開しなくては…楽しみにお待ちください!

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