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やっぱチェーンよりスキルハンターに憧れる。

「アンジュ様アンジュ様、あっちです、あちらに見えるのがギルド管理協会でございます」



 ぴょんぴょこ腕の中で体を揺らすルーアの頭を撫でながら我子は目的地であるギルド管理協会やらに足を運んでいた。

 道中何をする場所なのかを彼女に聞いたところ、ギルドを申請することができ、さらにはギルド向けの依頼を請け負っているなどなど、ギルド関係のことを全て引き受けている場所とのことだった。



「ところでルーア、そもそもギルドってなんなの?」



「それは中で説明を受けたほうが早いと思います。というわけでアンジュ様、行きましょう」



 ルーアの言葉に頷くアンジュは管理協会を見上げた。

 ごくごく一般的な学校ほどの大きさだろうか? 我子は通っていた高校を基準に建物の大きさを計り、大体そのくらいであると認識する。

 しかし建物から出てくる人々は学生ではなく、屈強な男女、なんだかわけのわからない力を空気として纏っている老人やら、さらには人の体をしていない亜人とも言うべき人々やらだった。



 と、そうやって呆けているとルーアに袖を引っ張られてしまい、我子はすぐに我に返り協会に入るのだった。



 いらっしゃいませ。の声に我子はなんとなく懐かしくなり、キョロキョロと辺りを見渡してしまう。

 別段豪華な作りの内装ではないが、家族旅行で行った東京のホテルのエントランスのような作りで、ラウンジに喫茶があってどうにも宿泊に来たように錯覚できる。



「アンジュ様ぁ?」



「ああごめんごめん、それで受付は――」



 するとちょうど受付となっているテーブルに座っていた男性がどき、その人物と話していた女性が笑顔を向けてきた。

 我子は彼女に会釈をするとそのテーブルに足を進ませ、椅子に腰を掛けた。



「いらっしゃいませ、今日はどのようなご用でしょうか?」



「新しい携帯を――じゃなくて。えっと」



 どことなく携帯電話の受付のような雰囲気だったためについ我子はそう言ってしまった。

 しかしすぐにルーアに目を向け、どうしたらいいのかを尋ねる。



「ではわたくしが。ギルドの申請をしたいのですが、受付はこちらでいいのでしょうか?」



「はい、こちらでもギルドの申請は承っております。ではこちらの書類に……ギルドマスターはお母さんで――」



「誰がお母さんだ」



「アンジュ様はお母様ではありません。ルーアのマスターです」



 我子の膝の上で胸を張るルーアに受付の女性は苦笑いを浮かべると、我子に失礼しましたと頭を下げた。

 すると受付はいくつかの書類を取り出し、それをテーブルに並べる。



「まずはこちらに記入をお願いします、こちらにはギルドの理念、目的などなど、それとどのような活動をしたいかを具体的にお願いします」



「はいはい。あ、身分証とかいるの?」



「身分証? ああ、身分を証明するものでしょうか。そうですね、お二人のどちら様か、冒険者ライセンスは持っていますか?」



 我子は首を横に振り、ルーアに目を落とした。しかし彼女も持っていないらしく首を振ったために、受付に持っていないことを伝える。



「それでしたらこちらで申請の方をしておきますがどうなさいますか? もしギルドの目的に討伐やモンスターに関わることがあるのでしたら、ライセンスを持っている方がスムーズにいきますよ」



「なるほどね」



 我子はチラリとルーアに目を向けると彼女が頷き、控えめに手を上げた。



「はい、ではそのようにお願いします。それとアイテムなどを売る商業などにも興味があるのですが、それはどうしたら良いですか?」



「でしたら一緒に商業ギルドの方にもライセンスの申請を出しておきますよ。ですがお店を開くとなると一応、ある程度拠点となる建物の施設機能が充実していなければいけませんが、その点に関してはどのようにお考えですか?」



「施設に関しては問題ありません。こちらの建物なのですが」



 ルーアが受付と話している間に我子はわかる範囲で書類を埋めていく。

 目的や自身の名前やルーアの名前を記入していくのだが、我子はふと気になったことがあり、自身の名前を横線で消し、ルーアの肩を叩く。



「ねえルーア」



「なんですかアンジュ様」



「漢字じゃマズイわよね」



「かんじ?」



「あ〜……というかウチなんの違和感もなく見たこともない文字書いてるけれど、これも特典か。じゃあもうアンジュって名乗っちゃおうかな」



「? アンジュ様はアンジュ様ですよぅ?」



 ルーアを撫で、我子はアンジュと書類に綴った。

 そしてある程度書類を埋め、それをルーアに見せると彼女は満足したように頷くのだが、ある欄を見て首を傾げる。



「アンジュ様アンジュ様、ルーアがサブマスターになっております」



「え? だって他に誰もいないし、正直知らない人にやってもらうのならルーアにやってもらった方が安心かなって。嫌だった?」



「いいえ、いいえ! アンジュ様に頼られるととっても嬉しいです。ルーア頑張ります」



 お願いねと彼女に告げ、我子は受付に書類を手渡した。



「はい、承りました。ギルドの説明については明日以降、ライセンスの発行が終わり次第アンジュさんのギルドに伺いますのでその時にします。それとギルド員についてですが、こちらで募集をかけることもできますが、何か希望はありますか?」



「え? 希望……出来ればウチは楽したいから頼りになる人が良いわよね。それならやっぱり強い人かしら。それなら。う〜ん」



「熟練の冒険者ですと、ある程度アンジュさん自身に力があるか、ギルドが大きくないと難しいかもしれません。ああそうだ、一応アンジュさんの冒険者適正を調べておきますね。これによってライセンスのランクも変わってきますから」



 そう言って受付が足元から水瓶と透明な丸い宝石が入ったコップを取り出した。

 コップの中に水をいっぱいに入れると彼女がどうぞと促してくるのだが、我子は理解ができず首を傾げる。

 するとルーアが両手をかざしてくださいという。



「え、水見式? 裏ハンター試験なのこれ?」



「冒険者の適正試験ですよ?」



 放出系か操作系あたりじゃないかと我子が呟きながら手をかざすと、中に入っている宝石がキラキラと輝き出した。



「あれもしかして特質系――」



「ぷ、プラチナランク! アンジュさん、もしかして名のある冒険者とかじゃ?」



「え、え?」



 受付が興奮気味に話すのだが、我子には全く覚えがなく、それどころか頭の中には蜘蛛のマークでもエンブレムにしようかなくらいにしか思っていなかった。



 するとルーアが驚いたように口を開いた。



「アンジュ様アンジュ様、この冒険者適正とはつまり、その人の冒険者としての適正なのですが……」



 なんて説明したら良いのか考えあぐねているルーアだったが、我子は頭を掻き、その水瓶とコップに手で触れる。

 そうするといつかのようにピコンという効果音が鳴り、アイテムについてのテキストがそばに浮かんだ。



「えっとなになに? これは所謂個人のレベルを計り、それによって冒険者としてのランク付けを行なうアイテム。つまりレベルが高ければランクが高くなるってことか。ウチのランクはプラチナって、一番高いじゃない」



 ここまでお膳立てされるのも悪くはないけれど楽しみがなくなるわね。と苦笑いを浮かべる我子だったが、ルーアが感心したように頷いており、どうしたのかと尋ねる。



「アンジュ様はすごい方だったのですね、わたくしが聞いた話では武器とその他の力をいくつかの渡すけれど、あとは普通の人間と同じだからしっかり守るように言われたですが、その心配もないようです」



「え? そうなの」



「はい、神様にはアンジュ様は強い武器を持ってはいるけれど、あとは普通と変わらないと言われたです。つまりアンジュ様の潜在能力が凄まじいと言うわけですね」



 我子は額から脂汗を流し、自身に触れステータスを表示するように念じてみる。

 すると彼女のステータスが表示されたのだが、レベルがなんと250、震える手でステータス画面をいじるのだがバックログに『神殺し』のスキルを入手した後、249回のレベルアップの表示がされていた。



「やっぱあれかぁ!」



 我子が頭を抱えるとルーアが心配げに我子の頭をポンポンと撫で、首を傾げている。



「まあやっちまったことは今さらどうしようもないわね、諦めましょう。それで受付さん、プラチナランクだと何かあるのかしら?」



「え、あはい、様々な特権を与えることができます。それについても明日以降、連絡します。それでどうしましょうか? プラチナランクともなれば大抵の冒険者はギルドに入ってくれると思いますが」



「ああそうね、それじゃあ――」



 我子はそこいらにあった紙に希望をいくつか書き、それを受付に手渡す。



「そんな感じで募集をお願いするわ。入団面接? はウチらの拠点でやるわ」



「はい、わかりました。それでは今回は私、フィリアム=ランドクローバーが承りました。では後日、改めて伺わさせていただきます」



 頭を下げる彼女、フィリアムに我子は礼を言いルーアを膝から下ろすとそのまま彼女の手を引き、管理協会から出ていく。



 そしてルーアの案内で拠点となる場所へと向かうのだった。

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