女子会道中。
「それじゃあ行ってくるけれど、くれぐれも無理をしないようにね」
「明日は雨でも降るのか?」
「鞭をお望みのようね、それならウチが帰ってきてから存分に振るってあげるわ」
我子はウルチルにデコピンをすると彼の頭を撫で、ルーアとフィリアム、ルウとともに件の場所を目指す。
一行はルウが連れてきた黒服の女性が操る馬車に揺られ、道を進んでいくのだが、ルーアとフィリアムが我子を見ており、我子は首を傾げていどうしたのかを聞く。
「アンジュちゃん、心配なら心配って言ってあげればいいのに」
「調子に乗るから嫌よ。そうでなくてもウルは乗りやすいタイプなんだから、必要以上にそういうことはしない」
「アンジュ様アンジュ様、アンジュ様はわたくしのことをいつも褒めてくれますよぅ?」
「ルーアは素直で聞き分けがいいからね、驕ることもないし褒めやすいのよ。それとフィムもね」
照れたように体を揺らす2人に我子は微笑みかけると、このやり取りを見ていたルウに視線を向ける。
「で、あんたのことは一切聞いていないんだけれど、そこの黒服はなに?」
「あら、私のことに興味がおありなんですの?」
「興味あるから聞いてんのよ。それともあんたの周りには社交辞令しか言わない奴らばかりだったの?」
ルウがクスクスと喉を鳴らすと、不躾な人ね。と言った。
「最初に断っておくけれど、ウチは一々あんたの都合に付き合うつもりはないわよ。ウチはウチの勝手で動く。だから言いたいことがあるのなら言っておきなさい」
「……私の都合通りには動いてくれないと?」
「嫌ならウチを納得させなさい」
ルウが小さく微笑むと首を横に振る。
「いいえ、それは私が納得しましたわ。どこまで役に立てるかわかりませんが、私の力、思う存分役立ててくださいまし」
「そう、それならあんたフィム――フィリアムと行動しなさい。ランクもシルバーには届くんでしょう? それなら安心だわ。フィムも良いわね?」
「う、うん、あたしはフィリアム=ランドクローバー、ルウちゃんよろしくね」
「ええ、よろしくですわフィリアムさん。ああそうですわフィリアムさん、先ほどギルドにあった食器類はあなたが?」
「え、うんそうだけれど……」
食器の話が出た途端、フィリアムは頭を垂れ、力なく肩を落とすと我子を可愛らしく睨みつけた。
「全部割れちゃったけれどね」
「あれはウチのせいじゃないわ、挑発したルウが悪い」
ぷっくりと頬を膨らませるフィリアムを我子は宥める。
するとルウがその通りだと声を上げた。
「何よ突然」
「ええ、あれは私にも非がありますわ。ですのでどうでしょう? お詫びも兼ねて私が同じものを揃えますわ」
「う〜ん、気持ちは嬉しいけれど、あれ一点ものだよ? どうやっても集められないだろうし、諦めて別のものを探すよ」
「あら、それは残念ですわ。私、あの食器類を作った者と取引したことがあるんですの。だから頼めばきっと満足のくものを作ってくれるはずですわ。あれは私に借りがありますし」
ルウの言葉にフィリアムは瞳を輝かせ、ルウにずいっと体を寄せた。
「ほ、本当?」
「え、ええ。頼めば作ってくれると思いますわ」
「そ、それならさ――ちょ、ちょっと待ってて」
フィリアムは紙にペンを走らせ、頭を捻りながら何かを書き走っていく。
我子はその紙に目を落とすと、頑張ってと呟き、馬車から景色を覗いているルーアを膝に乗せる。
「アンジュ様アンジュ様、ルーアはたくさんお出かけできてとっても楽しいです」
「そうね、これからも色々な場所に行きましょう。お泊りするのも良いかもしれないわね」
我子はパッと表情が明るくなったルーアを撫でると、目的地までの道に想いを馳せるのだった。




