ちょっとお兄さん、話聞かせてくれない?(暗黒微笑)
「で、あんたって結局なんなの?」
ナイトとウルチルが青い顔で震えているのをルーアが慰める横から、我子は尋ねた。
それは先ほどの魔剣から放たれた光が彼の腕に傷を作っていったことを聞いているのだが、それを聞いたウルチルが首を傾げる。
「魔剣にもやったように僕のことも調べればいいだろう?」
「やっても構わないけれど、知られたくないことからあんたの黒歴史も何もかもウチが握ることになるけれど、いいのかしら?」
「……ああわかった、わかった僕から話す」
ウルチルが先ほど出来た傷を撫で、これは魔剣の魂を宿したと言う。
「まあ、自分のことを優れた魔剣使いだとは驕ってはいないが、僕は魔剣をこの身に宿すことができる」
「なるほど、他の人間ならいざ知らず、あんたに関しては例え魔剣が半分になっていようが、力の根底を持っていくことができるのね」
「そういうことだ」
我子は考え込む。あの剣がどれほどの力を持っているかについては見識した段階でそこそこ把握した。しかしそれを彼が使うことでどう変化するのかはわからず、ウルチルにちょっと使って見せてくれと頼む。
「良いだろう、僕はシルバーランクだが、ゴールドにもプラ……ゴールドにも劣らないというところを見せてやろう」
「あんた今ウチの顔を見てプラチナには届かないって諦めたわね」
そっぽを向くウルチルに我子は呆れつつ、彼が何かをしようと行動し始めたために黙って見守る
「恐れ慄け。魔剣とともにあるということは、誰もが脅威を覚えるその力をすべて委ねたということだ」
ウルチルの傷が強く発光する。
その光からはとてつもない力の奔流が渦巻いているということを我子、そして表情を見る限りナイトも感じ取っているのか、2人はそれぞれ、口角を釣り上げた。
そんな極悪人のような顔をした2人にウルチルが一度肩を跳ねさせたが、集中が途切れたのはそれ一度きりで、彼の力が顕れる――。
「あ〜〜うるちゃんこんなところにいたっぺぇ〜、こ〜りゃぁそんちょ〜にほ〜こくだ〜あ」
ひどく訛りのある年配の女性が藪から顔を出した。
「え、誰? 気配を感じなかったんだけれど」
「拙者もでござる。あのご婦人、只者ではないかと」
「ねえあんたの知り合い……」
我子がウルチルにそう尋ねたのだが、彼は顔を真っ赤にし、藪から顔を出したおばちゃんにあわあわと身振り手振りで声を発しようとしているが、上手く言葉が出てきておらず、口をパクパクと開閉するのだった。
「ほ〜らうるちゃん、家出は終わりだっぺぇ、そんちょ〜も心配してるっペよぉ〜」
「家出?」
我子がじろりとウルチルを見ると、彼は目線を逸して体を震わせた。
またか。と、我子はナイトに目をやった後、盛大にため息をつく。
どうしてこのギルドには頭がおかしいのしか近寄ってこないのかと頭を抱える。
まともなのはギルドができる前に出会ったルーアと自分から声をかけたフィリアムだけじゃないかと、手近にいたナイトの頬を引っ張る。
「痛い痛いでござる」
我子は頭を掻きナイトから手を離すと懐っこい顔でおばちゃんに話しかけた。
「もし、報告するのは良いけれど少しお話良いかしら?」
「あんっらまぁべっぴんさん、うるちゃんの小指だっペ?」
「あ、小指はイコール恋人じゃないですよ。どちらかというとウチが彼の小指を落としたいので」
震えるウルチルを軽く睨み、我子は話を聞こうとする。
するとおばちゃんがうるちゃんのお友だちなら大歓迎だっペと言い、村に案内してくれると言うのだ。
我子はそれを笑顔で承諾し、嫌だと暴れるウルチルの脳天にげんこつを落とし、気を失わさせてナイトに担がせると、彼の村に向かって歩き出すのだった。




