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5.第一章[再会]


2015年5月6日


昨日とは打って変わって外には人が増えたていた。

法改正の1つに自衛隊員の各所配置が義務付けられ、至るところに深緑色の制服の隊員が立っている。


今回の法改正は様々な事に自衛隊等が関与していて、そもそも刀を配布したのも自衛隊、国の治安維持には警察よりも権力があるらしい。


改正初日のあの事件は、刀の配布に時間と人員を割かれた事や、警察との連携が上手くとれないでいた事が大きな原因だったようだ。

その為、今日は暴動なども沈静化している。


ただひとつ気になるのが、警察官も自衛隊員も銃は持っていないようで、腰にサーベルを(たずさ)えているだけの様だ。

まるで江戸か明治時代だ。


今回の法改正では銃の取り締まりも強化されており、銃の所持は即死刑。

また帯刀が規則になっていて、帯刀していない者には罰金なり何かしらの罰則が課せられる。


銃規制なんて元々あったし、まぁ良いと思うが、警察まで銃を所持できないとは思っていなかった。暴力団など抗争があった時に抑制するには重火器の力は必要だと思う。

果たして警察や自衛隊はサーベルなんかで押さえられるのか、等とそんな心配を俺がしても意味はないな。


そもそもなんで刀なんだ、アルメント国はよく言う銃国家だし、刀なんて羅国発祥だ。

なんでわざわざ刀が……。


噂ではそのアルメント国の後にも、別の国やら組織やらが暗躍しているらしいとかネットに書いてあったな。

まぁ、イチ国民の俺には、これもまた関わり合いの無い話だ。

どうせ俺1人が何したって変わらないだろうし。

取り敢えずは流れに身をまかせていくしかない……

今までと同じ。


「おはよ!」

後ろから元気な挨拶がきた、声でわかるが、昨日連絡しなかった奴にいつも通り接するのはしゃくにさわるので……取り敢えず無視。


「え!シカト?!」


「そう」


「答えてるじゃん」

馴れ馴れしく肩を組んできたがさっとかわす。


「昨日、学校来ないなら連絡くらいしてこいよな」


「えっ、高柳昨日学校来たの?!……というか昨日学校に来る人なんかいたんだね」と半笑いでまた近づいてくる。


「いました。こことそこに」と斜め前を歩く古西さんを指差す。


「え、高柳ならわかるけど、あの古西さんまで?じゃ結構人来てたんだね、てっきり皆出歩かないかと思ってたよ……」


「俺ならわかるなよ、あと来てたのは俺ら合わせて5人くらいだったよ、俺も例の法令の事知ってたら来てないよ」


「えっ!!…………知らなかったの??それに驚きだよ、朝テレビとか見ないの?!……というかテレビ見なくても家に刃物届けられたら普通おかしく思うでしょ」


なんか疲れるな。

今話してるのは、同じ軽音楽部の黒木泰平(くろきたいへい)だ、ギター担当で高校ではまぁ仲は良い方だが、たった今から悪くなりそうだ。


何故だか一緒にいる事が多い。

元サッカー部とギターが好きという共通点があるからかもしれない。


身長は俺より10㎝は高いし顔はまぁまぁカッコイイからモテそうだが、今のところ彼女などはいないらしい、ってこいつの情報なんてどうでもいい。


「あれ、幸成の刀なんか渋いな」


「え、皆同じじゃないの?!」


「俺のは、これ 」と見せられた刀は鞘は漆が塗られたように鮮やかな赤、柄巻きは赤と黒の縞模様のようだ。


「派手だな、それ」と泰平の顔と見比べる。


「そうか?!俺っぽくない?最初からだし気に入ってるけどね」とニコニコ顔の泰平くん。


「幸成のは地味すぎて逆にないわー」


まわりを見渡すと、だいたいは同じ見た目だが、数人は色や形まで少し違う刀を差しているようだ。


「そんなことより、取り敢えず昨日出来なかった打ち合わせ今日しよ、時間はいくらあっても足りないよ」

とフワついたたい泰平に釘をさす。


「そうしたいけど、今日は奥村も加賀も来ないよ」


「え?!そうなんだ?……でも朝のテレビで……」

そう、今朝のテレビで7時からと8時から、全チャンネルで同じ放送が流れた。

内容は昨日の法改正に加え、この法改正により仕事や学校等、人が外出しなくなる可能性を排除する法令が作られた。

それは、今までと同じ生活をしなければ罰則が課せられるというものだった。


まぁ刃物持った人が回りにたくさん出歩いていたら怖くて外出なんか出来ない。

ただそれでは国がまわらなくなる。

それを避ける為の措置みたいだけど、そもそも今までと同じ生活って誰が判断するんだよ。

今までの生活を一人一人監視してなんか無いだろうし。

おそらく、会社員は会社へ行く、学生は学校へ行くくらいの制約だと思う。

今回の法改正は何故か穴だらけ、というか考えなしに作ったみたいで後から後から変更されていく。

国民が黙って聞いてられるのも時間の問題だ。


「そう、朝の放送でそう言ってたんだけどアイツら今日はライブを観に行くからって休むらしいよ」

やれやれみたいな昔ながらのポーズをとりながら話されても余計にイラっとするからやめてくれ。


「あっ、そういえばそんな事一昨日言ってたかも」

と記憶を辿る。

でもこのご時世でライブなんかやるのか?


まぁ今日は取り敢えず各々練習して、打ち合わせは明日すれば良いか。

「じゃ今日は二人で合わせるか、今日の練習室は狭いし、丁度良かったかも」

渋々そう提案したが帰ってきた答えは


「ごめん!おれも今日急な用事が出来て、ホントごめん!!明日は頑張るから、ねっ!」

ねっ!じゃねーよと思ったが、どうせ曲も決まらなきゃ始まらないし。


「わかった、じゃ明日な。練習室は俺使うけど良い?」


「全然大丈夫!高柳頑張るね!じゃ俺1限目物理室だからまた後でってあれ、今さらだけど高柳今日歩きなんだ?」


「ホント今さらだな……自転車は昨日学校に置きっぱなしだから歩きなんです。以上!じゃまた!」


うちのクラスの1限目は……なんだっけ、取り敢えず急ご。


その後の授業は何事もなく、昼休みに入った。

いつもはクラスの男子数名+泰平で昼食をとるが、今日は生徒の数も疎らだし、何故か1人で食べたくなったので中庭のベンチで食べる事にした。


泰平にはメールしといたし、まぁ大丈夫だろ。

中庭へ行く前に職員室を覗く。

諸戸先生は……やはり今日は来ていないらしい。

お通夜やお葬式等の手配、あんな事があった後で太一君の事も心配だろうから当分は来れないかも、と教頭先生から聞いた。


少し落ち着いたらお見舞いに行こうかな。


ベンチに座り弁当を開く……今日は天気が良い。

昨日も良かったのかもしれないが、お昼頃からの記憶が曖昧過ぎて覚えていない。

こんな風にゆったり空を見るなんて久しぶりな気がする。


ふと目を閉じる。

5月の暖かな日差しが心地よい。

そのまま数分間じっとしていた。

眠たくなりそうだったので目をあけ、好物の回鍋肉弁当を食べはじめた。


母親の料理は美味しい。

絶品!!という程ではないが飽きない美味しさとでも言うのか、とにかくこんな料理が作れるお嫁さんが欲しい。いや、取り敢えずは彼女が欲しい。


さっ食べよう。

その時、自分の左側、校舎とは反対の校庭の奥、校外との柵から視線を感じた。

少し遠かったので良く見えなかったが、普段散歩途中のおじいさんが学校を覗く姿を良く目にしていたので多分それかな。

なんでおじさんやおじいさんの散歩コースには学校があるのか、、女子高生目当てか?……いやきっと自分の学生時代の青春を思い出すためだ。

きっとそう。

さっ、そろそろ教室戻るか。


生徒が少ない人数の授業は大変だ、いつもより先生に当てられる可能性が高い。

今日は家庭教師がついたくらい先生とやり取りしちゃってるよ、全然おじさんだから嬉しくないけどね。

ごめんね、先生。


そして最後の授業も無事に終わり下校の時間、各々部活に行ったり帰り支度をしていた。


じゃ俺も練習室行こうかなーと考えてたら、後ろの席の小西さんから声をかけられた。


「高柳くんは今日は部活なの?」


「あぁうん、そうだけど古西さんも?」


「え、いやうん私も部活だけど、今日はギター持ってきてないからてっきり休みなのかと思って……」


「あ"っ!…………やべ、忘れたわ」

何をしに練習室に行くんだか……


「……大丈夫?」

古西さんに心配そうに顔を覗き込まれてしまった。

近くで見ると古西さんはやっぱり可愛い。

黒髪の艶のあるロングヘア、薄化粧そうなのに可愛いとはポテンシャルの高さが伺える。

身長は俺より少し低いから150センチ後半くらいかな、たまに授業中にメガネをかけており、メガネ女子!そこもポイントが高い!……

だが今はそんなに可愛い古西さんに心配されても素直に喜べなかった。


昨日の今日で今まで通りなんてやはり無理がある。

普通、人が目の前で、しかも知っている人が……やめよう思い出したくない。


「昨日色々あったから疲れてるのかも、古西さんも無理しないようにね!ありがと、じゃ俺は帰るわ」


「あぁーうん、そっか、ありがと。じゃまた明日ねっ」

古西さんは笑顔で手をふってくれた。

さすが中々古西さん、普通の男ならきっとこの状況であの笑顔、落ちるな。


だが、幾度も勘違い親切で痛い目を見ている俺は騙されないよ。

基本女子は嫌いでは無い人には優しいのだ。

回りの目、良く思われたい、その他諸々の理由から女子はそういう生き物だと推測される。

だから俺は勘違い告白なんて絶っ対にしない!

「○○君優しぃー」からのタッチ、何度心を揺さぶられた事か!

飛びついたりは絶対にしない!

吟味に吟味を重ねて……重ねて……そうしていると俺のように高2現在まで彼女いない男子になるのだ。


いやいや、まだこれからですよ。

最初は目立つ男子がチヤホヤされるが、そのうち「あれっ○○君ってなかなか良くない?そうそう!私もそう思ってた」という展開になるはずだ。

それまではじっとしていよう。

誰か見つけてね、そのまま帰られて夜中まで隠れてるかくれんぼは嫌だからね。

あ、ちなみに古西さんは弓道部の次期部長さんです。


さてと、帰るか。

とぼとぼと下駄箱から中庭を通り正門へ向かう。

すると何故か正門に人だかりができている。


人だかりの中に知り合いを見つけ質問してみた。

「ねぇ、これ何かあったの?」


「お、高柳か、いや、何かめちゃめちゃ()()()()が正門で待ってるらしいんだよ!」

何!なんとうらやましい!


その時その隣の女子が「えっ、私は凄く()()()()()()()()()がいるって聞いたんだけど」

何!可愛いくてカッコイイお兄さんとはなんだ、オカマか。


まぁいいや、疲れたから今日は帰りたい。

通れないじゃねーか、つかどちらも人を待ってるんだろ!なんで関係ないやつらが群がってるんだよ……


あぁもういいや、裏門から出よ。


今日は歩きでいいや。

自転車回収を諦め歩きだす。


裏門は校庭側にあり、体育の授業などで外周を走るときに開かれる門だ。

普段は開いていないが、飛び越えられない高さじゃないし、このまま待ち続ける方が大変そうだ。


疲労からか身体が重く、裏まで来るのに少し時間がかかってしまった。

校庭ではサッカー部、野球部が精を出している。

サッカー部の練習を見ると少し胸が痛む、1年生の途中まで俺はサッカー部に所属していた。

辞めた理由なんて色々付けられるが、温度差っていう事が1番しっくりくる。

チームで1つの目標に向かうときには、きっといつもその壁にぶつかるのだと思う。

自分のやる気とまわりのやる気。

ただ楽しむだけのサッカーもきっと楽しいのだろう。

でも、中学の頃は弱小校だったがそれでも毎日強くなれるよう、全国目指して頑張っていた。

高校生とは難しい年代だ。

遊びや勉強、まわりの空気を気にしながら生活しなければならない。

少しでも弱いところを見せたり、合わない事を発言したら命取りだ。


1つの失敗からスクールカーストの順位は一気に下がり、今まで普通に話していた友達と呼ばれるものは友達では無くなっていたりする。

そして何故か今まで話したことのない人達に話しかけられ別のグループへと加わっていくんだ。

社会に出るための練習なのだろうか、世の中は平等ではない、弱肉強食だと高校へ入って学んだ。


などと意味のない考えを巡らせていたらようやく門へ着いた。

自分と同じ考えの先客が何人かいて、門を越えるのに苦労していた。


近くにくると門は自分の身長程(約165~170㎝)で、運動が苦手な子には乗り越える事は大変かもしれない。

自分は服を汚したくないのでよじ登るというよりは飛び越える感じだ。


「イチニーノッよっと」良くわからない掛け声を出してしまった。

きっとまわりに人がいるから恥ずかしいんだなと、自己分析。


着地も無事に出来、まわりからは薄く「ぉぉー」と聞こえた気がする。

まぁそれほどでもないよ。


帰るか。


とぼとぼとぼとぼ、いつもは猫背を直すために背筋は極力伸ばしているけど、今日はなんかその気力すらない……


途中何か甘いものでも買って帰ろ。

200m先にコンビニ発見(知ってたけど)


今日はたらふく食うぞっと歩き出そうとした時、どこからか視線を感じた。


まわりを見回したが特に誰もいない。

ただ何か変な感じだ。

まわりに人がいない、たまたまなのかもしれないが、コンビニまでの通りには誰もいなかった。


そして、ある交差点の信号で止まった時にそいつは現れた。


全身はほぼ黒一色の服、白い髪、左腰にはあの時と同じ柄が赤く、鞘は黒の刀を差している男が立っていた。



kogetora_suguです。


やっと話が動き出してきました。


これからは少しずつアクション要素が増える予定です。

どうか最後までお付き合いください。


お気づきの点や感想等、是非お願いいたします。

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