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3.第一章[悲劇]


約束の10時になったので俺と小西さんは校門前に集合した。


学校に来ている生徒は俺達二人を含めて計5人と思ったより少なかった。

まぁ普通の家庭じゃ取り敢えず休ませるよな、…………お父様はお怒りかな…心配だ、別に反抗した訳じゃないし……素直に謝ろうと心に決めた。


教頭先生と古西さん、その他の生徒一人のグループと、諸戸先生と他の生徒2人、そして俺の2グループに分かれた。


古西さんの家はどうやら俺の家とは反対らしい。

とても残念です。


各々車で走りだし1人、1人と送っていく。

最後に残ったのは俺と先生だ。


本当は諸戸先生の家の方が先に着くので、先生の家で下ろして頂いて構わないですと言ったが「ちゃんと、送り届けると、約束したからな」と却下された。


だが諸戸先生から

「まぁただ俺も家族は心配だから様子だけ見に寄っても良いか?」と言われたので2つ返事で了解した。


先生の奥さんは学校でも有名なほど美人で、前に先生がお弁当を忘れて、奥さんが学校まで届けに来てくれた時に1度だけ会った事がある。


先生に指導されていた俺なんかにも優しくしてくれる素敵な人だ。

結婚するならあんな人がいいな~。

そのお子さんとあらば、さぞや可愛いのだろうと少し興味があるし、まぁどうせ帰っても暇だし。


というか諸戸先生はどうやってあんな美人と……美女と野獣だな等と考えていると家に着いたようだ。


「お前も少し上がって行くか?お茶くらいなら出すし太一にも会ってやってくれよ」

太一君とは先生のお子さんでまだ3歳だ、わーい楽しみと思いつつ先生のあとを付いていく。


呼び鈴を鳴らし鍵を開けた。

ん?と不思議に思ったが、きっと呼び鈴を鳴らしてから鍵を開けるというのが諸戸家の(なら)わしなのだろうと思う。


早希(さき)ー帰ったぞー」

返事はない。


「おかしいな、寝てるか買い物にでも行ってるのか、まぁ上がってくれ少しすれば帰ってくるだろ」


「お邪魔します」

と言い靴を脱ぐ、とそこで〈?〉と、またしても不思議に思う。

玄関には子供用の靴2足と婦人靴が4足並んでいた。


家に上がりリビングへ、家具は木目調のものが多く、ナチュラル系で自分の好みとも合っていて癒されるなー。


「まぁ座ってくれ、、お茶はどこだっけなー」と頭をかきながら先生は台所へ。


その時、隣の部屋から『ゴトッ』という物音が聞こえた気がした。

隣は寝室かな?子供部屋かなと考えていたら外でパトカーのサイレンが響いた。

すると隣の部屋から再度物音が聞こえた。


間違いない……何か聞こえた。


「先生!隣の部屋は何の部屋ですか?!」と少し大きめの声で尋ねた。


「あぁ隣は太一の子供部屋だよ、見てみても良いぞ」

その後は物音は聞こえない、気のせいかと思いお茶を頂く。


「早希達はどこまで行ってるんだか、妹の陽子(ようこ)も一緒だから安心だとは思うが、流石にこの非常時に遊びには行かんだろうしなー、たださっきから携帯にかけても出ないんだよ、どうしたもんか……」


その話を聞き、やはり何か違和感を感じた。

玄関へ戻り、靴を確かめた。


婦人靴は4足、2人分の靴を見比べるとサイズが若干違う。

靴の質感によってサイズを変えるにしては、違いすぎる。

きっと大きい方は先生の妹さんに違いない。

「先生!!」

と強めの声になってしまった。


先生も声の強さに驚いた様子で玄関まで来た。

「どうした高柳?!なんか虫でもいたのか?!」


「いえ……この靴は先生の妹さんと奥さんの靴ですか?」

ん?という、感じで見た先生の表情はみるみる変貌していった。


「どういう事だ?…………」


「先生、慌てずに聞いてもらえますか?

さっき僕が居間で待っている時に太一君の部屋で物音が聞こえた気がしたんです。気のせいかと思ったのですが……様子を見てみても良いですか?」

その瞬間先生の目は見開かれ表情が変わったように見えた。顔も赤くなり恐怖なのか怒りなのかわからない。


「なんだ隣の部屋か……まぁ寝てるんだろ、起こしてやるか。ったく帰ってるのに気付かないなんて……」

ゆっくり振り返り、自身の寝室を見てから太一君の部屋へ向かう先生、僕もそのあとに続く。


寝室には誰もいなかった。


次は太一君の部屋、扉を開ける。

先生の巨漢の隙間から見えた光景は、二人をその場に打ち付けた。動けない、頭が働かない。


太一君を抱く奥さんの早希さん、そしてそれを(かば)うように抱く先生の妹の陽子さんの姿。


その辺りは赤く、赤黒く染まっていた。


どれくらいそのままでいたか分からないくらい動けずにいた二人の目を覚まさせたのは(かす)かに()れ聴こえた声だった。


「ん、ん……」ほんの(わず)かだが動いた。

すかさず俺と先生は3人に近づき抱き起こす。


近くで見るとより悲惨(ひさん)さが伺えた。

身体に血がつく事など気にせず声の主をさがす。

最も外側にいた陽子さんは一番外傷がひどい、口元に手を当てたが息はしてないようだ……。

早希さんもまったく動かず太一君を抱きしめたままだ。

息はしてないように見える。


ただその腕の中にいた太一君は(ひたい)と腕に切り傷はあるがどうやら息はしている!


すぐ携帯を取りだし救急車を呼ぶ。

住所がわからなかったので先生に聞くが先生は反応しない。

太一君と早希さん、陽子さんを抱いたまま涙を流して動かない。


時間が惜しいと玄関を飛び出し、電柱に書かれている住所を告げた。


ただ救急も人手不足で対応に時間がかかるとの事だった。

念のため一番近い病院を聞いておいた。


血まみれの身体で外に出れば逆に通報されるか叫ばれるのが普通だが、今日は普通の日ではない。誰も外にはいないし、もし誰かいても皆そんな余裕はないだろう。


急いでさっきの部屋に戻って再び僕は凍りついた……


太一君のベットの横で、泣きながら三人を抱きしめる先生の後ろに全身黒ずくめの人らしきものが立っている。


奧のクローゼットが開いている、恐らくそこに隠れていたんだ。


物音の発生源は太一君ではなく……アイツ、だからパトカーのサイレンにも反応したんだ、一瞬のうちに考え、叫ぶ。


「先生!!後ろに犯人が!」

犯人だという証拠はない、ただその顔の表情、笑いながらひきつった口、そして左の腰には刀が差してあった。今にも右手が(つか)に触れそうだ、そしてずっと身を隠していたこと……それだけあればこの状況ではそう叫ぶしかない。


「危ない!」や「気をつけて」では先生はきっと何が危ないのかで混乱するかもしれない。

この状況では犯人だと伝える事で、危険さを、そしてどう行動するかを伝えられると思った。


犯人の右手は柄を握り刀を抜き放つ、先生は人間とは思えないバネで、一足で僕の横まで太一君を抱いたまま飛んできた。


「走れっ"!」

そう叫ぶ先生と、体育の授業では見せたことのない速さで先生は外へ走り出た。


先生は車を出す時間はないと踏んで路地を全速力で走り抜ける、そしてその後を俺も全速力で追う。

走っている途中で先生の背中から血が流れていることに気がついた。


荒れる息のなかで「先生!はぁはぁっせなかっ」と伝えると、

「大丈夫だっ、走れっ、もうすぐだ!」

先生も息が荒くなり速度も落ちてきた。


恐怖から後ろをみる余裕がなかったが、家からはもう大分離れた。

距離でいうとだいたい800メートルは走ってきた、しかも直線ではなく路地を左や右に走ってきたんだから犯人はついてこれる訳がないと思った。


お互い全速力で走るには限界がきた、速度を落としまわりを確認する。

「よし、はぁはぁ…………はぁはぁ大丈夫だな、はぁはぁ、もう少しで櫻井病院だ、あと少し頑張ってくれ……」そう先生は汗だくで話す。


それは俺に言ったのか、それとも腕の中の太一君に言ったのかはわからないが、そんな事はどうでも良い。

全員が無事に病院へたどり着く事が大切だ。

俺は「急ぎましょう」と答えた。



kogetora_suguです。


拙い文章ですみません。

間違った表現等は都度修正をしていきたいと思います。

気になる点がございましたら、是非お伝えください。

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