8:続・続・お手伝い
サービスが開始された次の日。本日は月曜日で時刻は朝の8時。
普通の社会人ならば出社して、仕事を始めている頃だろうがゲームの為に仕事を辞めた俺達にはもはや関係ない。
シコウとの約束の時間は8時からであり、朝に弱い俺はなんとか5分前にログインすることが出来た。
辺りを見渡せば、平日だというのにプレイヤーは昨日程ではないが結構、ログインしている。
みんなこのゲームの為に有給でも取ったのだろう。
シコウを探し、周りを見れば欠伸をするイケメンの姿が目に入る。
俺に気付いたのか欠伸を噛み殺し、軽く手を上げて挨拶してくる。シコウも実は朝が弱い。
本日は人がまあまあ少ないこともあり、メニューを開いて依頼を受けることが出来なくなっていた。仕方なくギルドへと向かい残った3つの依頼を順次受けていく予定だがその前に教会へ行き、クラスアップを済ませる。
今の俺達のJobは剣士であり、クラスアップすると中級剣士に上がる。クラスアップ特典としては30ptのステータスポイントが貰えて、J/skillとskillの枠がひとつ増える。
誰もいない教会の礼拝堂で祈りを捧げるとクラスアップ演出の光が降り注ぐ。
すると目の前にはクラスアップ可能なクラスが表示される。
・中級剣士
今の俺がなれるクラスは1つのようだ。
これがもし攻撃魔法系のスキルを持っていたりすると魔法剣士系のJobとかも出たりするんだが魔法剣士はあくまでこのゲームでは派生系Jobに分類される為、ハイエンドJobまで到達出来ず強さが頭打ちというとんでもない罠がある。どこかで運営が救済として何か手を打つとは思うが開発中に俺が見た限りではなかった。なので俺達は飽くまで王道を貫き徹す予定だ。
派生Jobに比べて、正規ルートにあたる中級剣士はこの後、上級剣士、剣豪、剣聖、剣帝、剣王、天剣士としっかりと条件を満たしていけば、最高クラスのJobのひとつになる。
俺達は無事に中級剣士へとクラスアップが完了すると教会を後にする。恐らく、俺達が最速でのクラスアップじゃないかと思う。
クラスアップの恩恵により、得たポイントを脆弱なVITとMNDに15ptずつ振り分けると2つ目のJ/skillに盾を装備したことによって、新しく取得可能になった【J/盾術Lv:1】を取得してからギルドに向かい依頼を受ける。
本日、最初の依頼は『人捜しのお手伝い』だ。
依頼主の元へ行くと捜す人物のことを聞き、さっそく街中へと向かう。
今回はヤマ勘&相棒との人海戦術に頼る。二人しかいないじゃんっていう愚痴は聞かない。
◇
結局、ランダムに出現する捜し人を短時間で見つけ出して称号を獲る×二人分で苦労していると時刻はお昼時となってしまった。
この後にまだ『迷い猫捜し』のお手伝いもあるので気が重くなってきた。
昼休憩を1時間取り、お互いに気持ちをリフレッシュさせて、次の『迷い猫捜し』の依頼へ。
依頼の方はシコウはわずか2回で成功し、あっさりとクリアして、これは行けると思ったのが悪かったのか俺は15回を超えて、16回目でやっと称号を獲ることが出来た。
称号が獲られた時は思わず、抱き合って喜びを分かち合い。周りからは変な目で見られた。
さて、残すは『鍛冶場の補助』というお手伝いだけだ。
ハッキリと言ってこれはDEX値がものをいう依頼だが今の俺達なら問題なくいけるだろう。
『ワールドアナウンスをお伝えします。』
不意に響くアナウンスに耳を傾け、俺達は足を止める。
『東の街道のフィールドボスが倒されたことにより、東の街道先のマップが開放されました』
ワールドアナウンスはそれだけを伝えると静かになった。ついでに開放されたことを告げるメールでのお知らせも着たが内容がわかっているので既読にするとすぐに閉じて、次の依頼へと進む。
俺達に焦りはない。
レベルが20にもなり、さらにスキルの効果でステータスが2倍となった俺達にこなせないお手伝いなど最早ないのだ。
お互いに完璧な鍛冶の助手を勤めあげた俺達はついに7つの称号を手にする。それと同時に変わったアナウンスが響く。
『7つのお手伝い系称号が統合されます』
『称号、【引っ越しの達人】
【配送の達人】
【清掃の達人】
【猫捜しの達人】
【販売の達人】
【人探しの達人】
【鍛冶補助の達人】
は統合されて、【セブンズマスター】になります。』
《称号》
【セブンズマスター】
ステータスALL+30
俺達がなぜこれ程、苦労して7つの称号を集めていたのかこれでわかって貰えたと思う。
俺達は達成した瞬間、鍛冶場を飛び出してお互いを求め合うように広場で再び熱く抱き合った。
言うまでもなく、俺達の周りにはプレイヤーが寄り付かない円形の空間が出来上がっていた。絶対領域ってやつだ。
ひとしきり抱き合い、満足した俺達はギルドで報告を済ますとお世話になった鍛冶場へと向かう。
理由は見事に仕事をこなした俺達は親方に気に入られ、割安で防具を作って貰らえるからだ。
素材は幸いにも昨夜、倒したブラックウルフの素材がある。
シコウと防具が出来上がったらいつもの噴水で会おうと待ち合わせをして出掛ける。
防具が全て出来上がるのに1時間を要したがお手伝いをやり切った俺には些細な時間だった。
出来た防具を受け取り、さっそく装備する。
[Name]ユウギ
[level]20
[Job]中級剣士
HP:570 MP:420 SP:350
STR:142(284)[+50]
VIT:70(140)[+145]
INT:30(60)[+150]
MND:65(130)
DEX:152(304)
AGI:132(264)
LUK:35(70)
《J/skill》2枠
【J/剣術Lv:2】
【J/盾術Lv:1】
《skill》6枠
【剣士の心得Lv:2】
【思考加速Lv:1】
【同調強化】
【生活魔法】
【器用強化】
【脚力強化】
【装備】
・[銘なき剣]+50
・[銘なき盾]+50
・[黒狼の服]+30
・[黒狼の手袋]+15
・[黒狼のズボン]+30
・[黒狼の靴]+20
《アクセサリー》4枠
1.[レギンレイヴピアス]
2.
3.
4.
《称号》
【大物殺し】、【セブンズマスター】
※()内は同調強化により補整された数値。
※[]内は装備品の数値。
そうそう、クラスアップに伴い、《skill》の枠も一つずつ増えたので適当につけといた。
【J/盾術Lv:1】
VIT+10、MND+10
【生活魔法】
MND+5
【器用強化】
戦闘時DEX+10%
【脚力強化】
戦闘時AGI+10%
約1時間後、お揃いの装備を纏った俺達は仲良く、ギルドへと向かう。
しかし、俺達はまだこの時は知るよしもなかった。
広場で何度も抱き合い、お揃いの装備を身に付けたことで在らぬ噂が流れていることなど・・・。




