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独言

作者: 浅咲夏茶

 更新しない期間中に本を読む機会があり、やはりプロ作家は凄いと実感した。幾多の応募の中を勝ち上がった人の書く文章は自分と比べ物にならないほど上手である。「うちで書いてみませんか?」と言われて書いている人が描き出すストーリーは面白さが宿っているようにしか思えない。

 読みやすさは作家それぞれだが、「面白い」を終着点に持つ点は一緒だ。惰性で読んでいるわけでなく、気分で読んでいるわけでもなく、単に「この先を見たい」「読みたい」という感情に釣られて読んでいるから、読み終えた後に抱く気持ちが「面白い」に統一されていく。

 妄想を垂れ流すくらいであれば、私のような「執筆」などという大層な言葉を使わないほうがいいような人間でも出来るかもしれない。特に構想を練ることも無く衝動に駆られて書けばいいだけなのだ。

 しかし、それを読んで「面白い」と言われる人はごくわずかである。少なくとも私は自分で色々と作品を書きながらそう感じた。ろくでもない評価しか貰っていない私からのせめてものアドバイスである。プロットを練ることは、本当の天才でない限りやっておいて損はない。

 プロットを練ることは風呂敷を広げすぎないことに繋がる。舞台ばかり作っても役者がいなければ話は始まらないのだ。役者を制限することは、魅力的なキャラクターを生み出すことに繋がると思う。少なくとも私のようなキャラクターをコントロールできないマスターアカウント保有者は、あんなに沢山のキャラクターを作り出すべきではなかった。

 また、設計図があると内容を思い出す時に便利だ。キャラクターの関係性が分かるから、後でそのキャラクターにアクションを起こさせようとする時のアイディア創造に繋がるし、自身でキャラクターの個性を整理するときにも役立つ。たとえ風呂敷を広げすぎたとしても、作品の行く先を知らせる装置があれば内容がめちゃくちゃになることを阻止することができるだろう。私はそれを用意しなかった上、書いたらそのままという場合がほとんどであり、結果としてめちゃくちゃな話の乱立に繋がってしまった。

 こうして次回作に繋げるために反省文という形で文章を書いていても、私の至らなさが滲み出ているのが分かる。まだまだ私は未熟であることを思い知らされた次第だ。難解な言葉を使おうとして辞書を引いたり検索に掛けているだけある。言い回しがくどいのも陳腐な文章を書く人間特有だ。底辺な自分の文章は、確実に「やったぜ。」から始まるあの親父の文章に劣るに違いない。オフ会ゼロ人を達成した大阪の三十代男性の文章にすら劣る。

 ああ、また全員が全員知っているわけでもないもので例示表現をしてしまった。これも底辺ゆえの過ちか。確かにどんな人間が書く文章にも癖があるから、そういったものは自分の文章の骨格として大切にするべきなのかもしれない。しかし、私のようなとんでもない文章しか書けない人間にはそれが逃げ道のように見える。「俺はこうだから」という理論をゴリ押ししているとしか考えられない。

 私にはクリエイターとして根本的なものが欠けていた。クライアントの立場になって内容を練ることも読み直すこともなかったのは今すぐに反省しなければならない。自分の妄想を垂れ流すだけで誰かに「面白い」と言われることはまずありえないのである。自分の作品の評価は自分以外の多数によって決定されることを忘れてはならない。そしてこの文章も含め、一時の衝動に駆られて書き連ねるのも一興だが、熱が冷めた状態での推敲作業を忘れてはならない。動作確認は作り手であるための必要十分条件である。

 そして私は、書き連ねた沢山の設計書と試作品を放棄した。自分の妄想話に対して残っている愛着も少しすればきっと消える。創造したキャラクター達にはひどいことをしたと思う。だが、自分であることを捨てなければ他人に「面白い」と言わせることは不可能だし、書き連ねた話を惰性で読んでもらうしかこと出来ない。誰の得にもならないのだ。そんな話は存在価値すらあるのかと思ってしまう。

 この文章を書けば書くほど自分の創作意欲と向上心が下がっていく。ああ、そうか。私はその程度の人間だったのだ。誰も笑わせることの出来ない価値なき存在で、妄想を垂れ流すだけの迷惑なスピーカーで、何かに影響を受けなければ筆を走らせることも出来ない底辺野郎なのだ。

 その点プロ作家は凄いと思う。最後まで面白さたっぷりなのだから。

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