3話 セリルとの話《和也側》
最後にセリルの話が少し入ります。
「さてと、セリル。俺はセリルを信用して、いくつかのことを話したいと思う。その代わり、セリルに少し聞きたいことがあるから答えてほしい。」
俺はセリルの海のように深く、美しい目を見つめながらいった。
「いいけど、カズヤは僕の質問にも答えてくれるんだよね。」
自分だけ答えないというのは理不尽なので、もちろん了承した。
「俺からいこう。俺は異世界から転移してきた。つまり、転移者だ。」
俺ははっきりとそういった。相談するのにも転移のことを話しておくのが便利そうだしな。
「て、転移者?しかも異世界って?一体誰が?」
セリルがパニックになっているようだ。折角の顔が台無しだ。
「まず、異世界は異世界だ。大きな違いとしては、魔法が存在しないことだ。で、俺は誰が俺をここに呼び寄せたのか、なんの為にとかは何も知らない。」
セリルの質問?に答えておいた。少し落ち着いたようで、セリルは徐々に冷静さを取り戻していく。
「わかった。これ以上君が何をしようとも、僕は驚かない。」
なんか違う気がするが、まあいいだろう。
「異世界転移っていうのはそんなに大事なのか?」
「大事だよ。まだ、転移系の魔法も発見されてないんだからね。もしかしたら、君は召喚されたのかもしれないね。」
「召喚?」
「まだ転移系の魔法は確立してないけど、召喚はできるんだ。女神の加護とかの影響でね。」
なるほど。召喚か……でも誰に?分からない。話を進めるか。
「あと、俺は17歳だ。いや17歳だった、というのが正しいのか?要するに元の世界では17歳で、けどここに来たら子供の姿になった。10歳とステータスにあった。」
「要するに、精神年齢が17歳ってことなの?」
「違う、いや、違わないのか?そんなところだろう。」
セリルは納得してくれたようだ。では、ちょっと質問をしよう。
「ここはどこだ?」
「ああ、そう来るとは。ここはケルゼニア帝国の北にあるへルポテ町の近くにある森だね。」
分からない。でもここで頑張っていくしかないだろう。できれば、元の世界に戻りたい。やよいの通夜にちゃんと参加できなかったし、きっとやよいは怒っていることだろう。
「じゃあ、僕から少しいいかい?剣術はレベル1と言っていたけれど、今まで剣に触れたことはあるのかい?少しやったことがあるとか。」
「剣に触れたのは今日が初めてだ。そもそも実物を見たことがなかった。」
「本当かい……」
セリルは呆然としている。あの時の俺の動きはぎこちないものだっただろうに。すると、ふと肉の美味しそうな香りがした。ちょうど、焼けたようだ。手にとって見てみると、ちょうどいい感じになっていた。固まっているセリルの口に肉を放り込んだ。
「あっふ、あふい。」
肉を口に入れたまま、セリルが喋っている。セリルは一口頬張ると、また固まった。しばらくすると、
「美味しい……」
そう言ったセリルの顔を見ると、とろけていた。頬を真っ赤にして、目も口もフニャとなっている。美味しいというのがよく伝わってきた。
俺も肉を少しかじる。すると、肉から肉汁が溢れ出てきた。少し熱いが、濃厚でジューシーな肉汁が口の中で踊る。味付けは何もないので、今度、調味料とかを使ってみたい。
残っている肉を二人で分け合って食べた。焼く肉の数を偶数にしておいて良かった。でないと、争奪戦が起こっただろう。
「そういえば、カズヤはこれからどうするつもりなの?」
セリルが肉を頬張りながら訊いてくる。
「そうだな、元の世界に帰れるまでお金を稼いでいきたいのだが。」
「現実的だね。そういえば、和也は僕より年上なんだっけ。お金を稼ぐ方法としては、カズヤの見た目だと、定職につくのは大変だから、探索者か、冒険者が妥当だと思うよ。」
なるほど。冒険者はなんとなくわかるが、探索者って何を探索するんだ?俺が考えていることにせリルは気づいたようで、
「あっ、探索者はダンジョンを探索する人のことだよ。冒険者はギルドに登録して、依頼を受けたりする人のこと。」
『だんじょん』っていうのはあれか。階層ごとに、分かれてて、下に行くほどモンスターが強くなるってやつか。
冒険者がいいな。依頼も選べるようだし。それをセリルに伝えると、
「冒険者か。じゃあ、ギルドに登録に行こう。登録し終わる頃には夜だから、今日はそれで宿に泊まればいいとおもう。」
「セリル、もしよかったら同行してください。」
「いいよ。異世界の人がやっていくのは大変だろうからね。」
ありがとうございます。
俺たちは火を消し、ヘルポテ町へ向かった。そこに冒険者ギルドがあるようだ。
あと、眼鏡は外すことした。目立つし、無くても普通に見えた。<異眼>の影響だろうか。
ーセリルの話ー
僕の名前はセリル。今年で14歳になると思う。今日は不思議な少年、いや、青年に出会った。水辺で水分補給していた時に不思議な服を着た少年がやって来たのだ。
一応護身用の剣を持たせて、やって来たツノブタ(正式名称はホーンピッグ)を討伐することにした。風の加護を使い、終わったと思っていたのだが、しぶとく起き上がり、カズヤの方へと向かっていったのだ。すると、カズヤは僕の動きを真似して、攻撃した。あれは、真似するなんてものじゃない。僕の動きそのものかもしれない。
そして、なんと異世界から来たというのだ。異世界にはこんな人ばかりなのだろうか。もし、行けるものなら、この世界を捨ててカズヤの故郷に行ってみたい。
ステータスは変わっていないので書きません。
何卒、燃料補給(評価、ブクマ)をお願いします。