2話 転移してきた和也《和也側》
光に包まれた後、俺はそっと目を開けた。俺は魔法陣の上に立っていた。かと思ったら、魔法陣が消えた。
さて、ここで問題です。
Q.魔法陣の上に立っていてその魔法陣が消えたら、自分はどうなる?
A.落ちる。
なので、俺は今、上空から真っ逆さまに落ちています。ガサッ、そんな音がしたので、下を見ると下は木だった。木のおかげで助かったようだ。滑り落ちないようにゆっくりゆっくりと降りていく。ようやく、地面に足がついたので安心した。
そして、降りている際に気づいたことがある。俺の手がやけにちっちゃいのだ。あと、やたら服が大きい。ちなみに今着ているのは学校の制服とやよいがプレゼントしてくれた、趣味の悪いパーカーだ。一見普通のパーカーなのだが、中にはやよいの好きなキャラクター、狐の稲荷くんがいる。
やよいから貰った時には小さかったパーカーが今ではダボダボになっている。つまり、俺は小さくなってしまったのだ。
小さくなった自分の体を見ながら、小学生になってしまった、某マンガの某探偵はこんな気分なのだろうと思っていた。それより、現状確認をしよう。えーっと、持ち物はエナジーバー1つ。終わり。流石に見知らぬ土地で少年の姿でエナジーバー1つは色々とまずい気がする。とりあえず、水辺にでも行こう。
***
水辺には美しい少年がいた。中学生ぐらいか?銀髪に青色の目というとても珍しい容姿をしていた。
見ているのに気づかれたようで、
「やあ、こんにちは。僕の名前はセリル。君は?」
と言われた。
「唐松和也だ。」
そういうと、結構驚かれた。
「カラマツ・カズヤか。苗字があるんだね。貴族とかなの?」
貴族なんていつの時代だ。そう思いながら返事をした。
「いいや、平民だ。」
「そうなんだ。でも、ここら辺は魔物が出るから早く帰ったほうがいいよ。」
魔物?そんなのファンタジーの話だろ。そう思っていると、
「来た!けど、これはいつもより厄介だな。」
そう言うと、セリルは剣を抜いた。って、剣?色々とヤバイのでは?
「一応、持っておいて。」
そういって、セリルは短剣を俺に渡し、自分の剣を抜いた。どうすればいいのやら。
すると、茂みから何かが現れた。薄橙色の肌に体の丸いライン。豚か?けど、俺が知っている豚とは少し違った。何故なら、2本の角があるからだ。俺が知っている限りでは豚に角なんかなかった気がする。
ツノありブタはセリルの方へ突進していく。セリルは剣で軽くツノを弾くと後ろに下がり高く飛ぶ。そして、ツノありブタの背中に深く突き刺す。当然、剣が背中に突き刺さると痛いだろう。ブタは暴れ始める。剣を抜き、ブタの背中から降りたセリルは暴れるブタの横に立ち、何かを唱えた。すると、緑色の魔法陣が現れ、剣が緑色に輝いた。セリルは緑色に輝く剣を使い、深い一撃を入れる。すると、ブタはゆっくりと草の上に倒れた。
だが、まだ終わってなかったようだ。ブタは傷口から血を流しながら、こちらに突進してくる。俺はとっさに短剣を抜いた。そして、頭の中で先ほどのセリルの一撃を思い出しながら、短剣でどうやったら深い一撃が入れられるか考える。
ブタが俺の2メートルほど前に来た時、俺は短剣を振った。ちゃんとできたようでブタは今度こそ、ピクリとも動かなくなった。
どうやら頬に血が少し飛んだようで、手で拭おうとしたがパーカーを着ているので手を袖からだし、手で拭った。
「大丈夫だったかい?」
セリルが心配そうに駆け寄ってくる。
「まさか、生きてるとは思わなくて。僕はまだまだ詰めが甘いな……」
謝罪の言葉と共にセリルはそう呟いていた。というか、あんなことができるお前もヤバイけどな。そう俺は思った。
「それより、最後の動きすごかったね。こんなことを訊くのは失礼かもしれないけど、剣術スキルのレベルはいくつなの?」
スキル?なんの話だ?そう思って訊くと、
「もしかして、自分の『ステータス』知らないの?だったら、ステータスって念じれば出てくるはずだよ。」
どこの話だ。そう思いながらも、「すてーたす」と念じてみる。すると、何か出ててきた。
名前:唐松和也
性別:男
年齢:10(17)
種族:人間(?????)
スキル:<剣術LV1><異眼LV1><身体強化LV1>
称号:転移者、異眼の主
なんだこれ。
そして、今ので確信した。ここは異世界だ。今の世の中ではこんなのを出すのは不可能だし、セリルの見た目とかからも、薄々気づいていた。1番の証拠はステータスかな。中学生の時、やよいがラノベにハマっていた事があった。それで無理やり読まされたのだが、ラノベの中であった状況に似ているからだ。
じゃあ、ステータスについて少し考察してみよう。剣術はやった事がないから、さっきの攻撃のせいだろう。スキルってそんなに簡単に取得できるものだっけ?まあ、気にしないでおこう。身体強化もなんとなくわかる。だが、『異眼』ってなんだ?よくわからない。そのうち分かるだろう。
あと年齢だな。なんだよ(17)って。10はこの体の年齢なのか?まあ確かに10歳くらいの感じだが。じゃあ、17はこの体になる前の年齢?魂の年齢的なやつっぽいな。
「大丈夫かい?」
セリルが心配そうにこっちを見ている。まあ、心配になるわな。どこかを見つめながらじっとしている、少年がいたら。先ほどのセリルの質問に答えるとしよう。
セリルは信頼できる男だ。なんとなく肌で感じた事だが。たとえ、セリルが裏切ろうともそれは信頼してしまった俺のせいだ。あと、異世界で最初にあった人だから、色々と聞けそうだしな。
「剣術はレベル1だ。」
「それであの動き……」
セリルが呟く。
「この魔物はどうするんだ?」
俺が訊くと、
「魔石と角を取ってギルドに持っていくよ。それ以外は素材にならないし、あまり価値がないからね。」
なるほど。「ぎるど」に持っていくのか。
腹が減ったな。すると、グーという盛大な音が鳴り響いた。俺かだな。今日の朝から何も食べていないからな。セリルは笑うと、
「ツノブタの素材は価値がないけど、美味しいらしいからね。」
そういうと、セリルはこちらを向いてウインクをした。バーベキューみたいにして食べたいな。
「火魔法で調理とかできるかな?串とかは研磨スキルでできたりしないかな……」
セリルはぶつぶつとそんなことを言っている。魔法で火をつけるにしても、木が必要だろう。意外と木の枝がたくさん落ちていたので、拾って積みかせねておいた。串に使えそうなものは分けてある。俺がそんなことをしている間に、セリルは短剣を出し、ツノブタを解体していた。少し手伝わせてもらうと、脳内にアナウンスが響いた。
『スキル<解体>を獲得しました。<異眼>がLV2になりました。』
スキルがぽんぽん獲得できる。不思議だな。ついでに研磨するのも手伝わせてもらった。
『スキル<研磨>を獲得しました。』
楽だな。一通り材料が揃ったので、焼くことにした。セリルは木に火魔法を使い着火する。<火魔法>もどうやらスキルらしいのだが、これは一瞬で獲得できなかった。<火魔法>もどうやらスキルらしいのだが、これは簡単に獲得できなかった。もう少し練習する必要がありそうだ。火の周りに肉がついている串を地面につき刺す。
じわじわと肉が焼かれていく。さて、焼けるまでセリルと少し話でもするか。
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名前:唐松和也
性別:男
年齢:10(17)
種族:人間(?????)
スキル:<剣術LV1><異眼LV2><身体強化LV1><研磨LV1><解体LV1>
称号:転移者、異眼の主
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次回も引き続き和也視点です。少しセリルの視点が入るかもしれないです。
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