序章
ー木瀬やよいの話ー
「ねえー勉強教えてよー。」
私の声に対して、
「やだ。」
と答える男の声。
この男、唐松和也は、私、木瀬やよいの幼馴染である。
始まりは幼稚園の頃だった。体が小さいこともあり、その頃の私はよくいじめられていた。そんな時、くだらない。と誰かがいった。そんな事をいったら、いじめっ子が怒らないわけないだろう。
「もう一回いってみろ。」
いじめっ子はそういった。
「だから、くだらない、って言ったんだよ。」
そう言った男の子は立ち上がった。その子はメガネをかけていて、メガネの下には細く鋭い目があった。
「女の子1人に寄ってたかって恥ずかしくないの?」
いじめっ子は私を放置して、その男の子の方へ向かって行った。
その後のやり取りについては詳しくは知らないけど、何やら喧嘩をしてメガネの子が勝ったというのを後に知った。
その後、泥で少し汚れたその子が怒られている時に私の方を見て笑ったのを覚えている。
それから、色々あって腐れ縁となった私たちは高校生になった今も一緒にいる。
彼、和也の方がどう思っているかは知らないけど、私は和也のことが好きだ。LIKEじゃなくて、LOVEの方だけど、私は今も何も言えずにいる。でも、一緒にいれれば、それでいい。
そんな毎日が続くと思ってた。
大型トラックがこっちに向かってくる。信号が赤なのがわからないのだろうか。すぐ反対側に走って行けばいいいだけ、それだけなのに足が動かない。重りがついているかのように重い。こんなところで死ぬわけにはいかないのに。和也に想いを伝えたいのに。
ドン。
重い音がした。そして、意識がぷつりと切れた。
ー唐松和也の話ー
幼馴染が死んだ。
トラックに轢かれて、あっけなく。
なのに、俺には涙すら出てこない。嫌っていたわけではないし、俺の数少ない友人でもあるから大切に思っていた方なのだ。なぜだろう。
通夜が終わろうとした時のことだった。やよいの声が聞こえた気がしたのだ。なんていっていたかはよく分からなかったが。
その時、俺の足元に俗にいう「魔法陣」のようなものが現れて、眩い光を放った。そして、その光は俺を柔らかく包み込んでいった。
「お兄ちゃん?」
和也の妹の声が会場の廊下に響く。
「どこに行ったんだろ。帰っちゃったのかな?全くもう!やよいちゃんの通夜なのに。」
読んでいただき、ありがとうございます。今のところ、月一で更新しようかと思っています。
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改稿:和也のセリフを紳士っぽくしました。
誤字脱字を直しました。