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そんな、あなただから

ここに来て、どれくらい時間がたっただろう。テクノブレイクして異世界転生を促されて、いざその気になったら『転生先ウンコです。』てっ言われて・・・・俺はどうしたらいいんだろう。


と言うか、ここはそもそも何処どこなんだろう?あの少女は、結局何者?・・・・え?今さら過ぎじゃね?疑問に思うの…。これ、もっと早く突っ込まないといけない事だったんじゃないの?


と、そんなことを考えていると『もしもーし』と声が聞こえてきた。


『あの~聞こえてますか?』


我に返ると目の前で、手をヒラヒラさせながら『これ、何本に見えます?』などと、よくあるちょっとイラッする意識の確認見たいなことをしている少女がいた。


「あの、大丈夫です。ここに来てからのこととか、色々考えていただけなので。」


俺がそう言うとヒラヒラさせていた手をしまい、ふぅーと1つため息をつく少女。


『そうでしたか。あんまり反応が無いんでとうとう精神が逝ったかと思いましたよ。』


肩をすくめてやれやれといった様子で少女が軽口をたたいた。


「すいませんね。ウンコにしか転生出来ませんって言われたもんですから。」


やや渋い顔で苦笑いをしながら答える俺に、『まぁまぁ』と少女。


『あれ、冗談ですから。私にそんなこと決める力とか無いですから。』


           ズコーーーーーーーーー!!?


ねーのかよ!じゃあ何だったのあのやり取り?まさかの発言に思わずズッコケてしまった俺。そんな俺を見て少女がフフッと笑って手を差し伸べて言った。


『木村さん、いま私達が一緒にいられるのってほんの一瞬の出来事なんです。まばたきしている間に終わってしまう。・・・・不思議ですね、それなのにこんなにも長く感じる。』


唐突によく分からない事を言う少女。俺は差し出され手を前にポカンと口が開いてしまう。


『ここは、何処でもありません。あなたがこの世界から消える、ほんの一瞬の空白。死後の走馬灯。』


そう言う少女の姿がだんだんと透けていくように見えた。少女の手を掴もうとした手が空振ってしまい俺は、尻餅しりもちをつく。「君は一体何者なんだ…」不意に口を衝いて言葉が出た。


『私はただの案内人。昔、あなたが事故で死にかけた時『生きる事は辛いことだよ』と、死への階段を勧めた。でもあなたは、その時「まだ、死ねない」と、言った。それからあなたは、いじめられていた子を助けに行った。たいして喋ったこともないその子を。』


そう語る少女に、先程までのあどけなさは感じられなくなっていた。少女がつらつらと続ける。


『どうしたら、もう誰もいじめられないか。あなたは、前から考えていた事を実行した。それは、<自分が率先そっせんしていじめの対象になる事>でした。苛めは無くならないと悟ったあなたは、この先…苛めの対象になるかもしれない【まだあったことも無いクラスメート達のため】にまでも、その身を犠牲にして守ろうとした。……だから、「まだ、死ねない」。・・・・こんなことは、考えられません。』


・・・・哀しい顔で彼女が俺を見た。俺はどうしていいか分からず、ただ黙ってその瞳を見つめた。


『あなたは、苛められる役を中学、高校とずっと続けた。ストレスのせいで白髪だらけになった頭を抱え…嫌だと……耐えながらも。・・・・耐え難い苦しみ、痛みなどからのがれる手段の1つとして人は死を選ぶ事があります。でも、あなたは違った……逆だった。』


『こういった事をするには普通……なにか、理由が必要です。決意、信念、約束、誓い、復讐、出逢い。人生を生きる上で、こういった出来事が起因になり人は成長します。これが原動力となり世界を動かす力となる事もあります。なのに…それが、木村さんには無い。まだ幼かったあなたには、そうした過程が一切なかった…なのに出来てしまった。あなたの異常性は、いずれ世界に危険をもたらす可能性があった。』


それを聞いた男が「よっこいしょ」と、ゆっくりと立ち上がりながら口を開く。


「俺は…ただ、誰かが苦しんでいるのが嫌だっただけですよ。戦争や病気とかそう言うのも全部なくなってほしいんです。俺、そう言うの気になっちゃうんですよ。気になって良く眠れない。でも、だからといってどうも出来ないでしょう?自分の身の程は、知っています。だから、出来る範囲で自分が嫌な事を無くしている……てっだけです。」


そう言う俺に、分からないと言った様子で彼女が返す。


『嫌な事を無くすために、嫌な思いをする。おかしくありませんか?見て見ぬ振りをしたり、逃げたっていい。誰もあなたに強制していないし、責められることもない。』


少し語調を強める少女。俺は1つ鼻息をすると視線を落として言った。


「それでも、どうしても見過ごせない事がある。頭じゃ分かっているけれど、体が言うことを聞かない。どうしようもない。こう言う性分なのか運命なのか、自分でも分からない・・・・。」


「でも、後悔はしていない。それだけは、はっきりと言える。」と、視線を彼女に戻す。


『見過ごせない・・・・たったそれだけの事で、故あればあなたは世界をも敵に回す。でもーーーー』



         『ーーそんなあなたにだから、救われる命もある。』


急に世界がどんどん白くなって行く。目映い光に包まれ、遠退いていく少女の声に俺は必死に耳を傾ける。



『木村さん、あなたにしか出来ない事をしてください。滅びゆく世界だとしても、きっとあなたにならーーーー』


だんだんと視界が真っ白になり薄れていく意識のなか少女の声が微かに聞こえる。



 『ーーーー言い忘れていましたけど。ここでの事は忘れてしまうので、あと素敵な出会がーーーー乞うご期待!』


最後に、屈託のない笑顔で手を振る少女が見えた。そういえば前にもこんなことあったなと、うっすら思いながらも俺は目を閉じた。・・・・ってここでのこと忘れるんかいぃぃぃ!!!



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