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もう安らかに眠らせてくれ

「・・・・・異世界転生? 」

唐突にそう言われ俺は、首をかしげた。


『フッフッフッ』と、少女の口元が緩む。

『そうです! 異世界☆転!生! 異なる世界で生まれ変わり、ハッピーでウハウハなライフを生きるのです!』そう言って、くるくると回していた手首を俺のほうに向けてビシッ! と指差す。


『オナ○ーし過ぎて、死んじゃったそこのあわれなあなた! 悔いは無いですか? 童貞捨てれましたか? ♂(やり)残した事ないですか? ・・・・あるでしょ!』


こいつ、しばいたろか! と思う俺を他所よそに、彼女は大袈裟な身ぶり手振りで、バナナの叩き売りのように異世界転生の魅力をプレゼンする。


『モテモテハーレム? うん うん。富、名声、力? YES! YES! そんな貴方の願い、叶えます! 全てがあなたの望むとうり!今なら、な!なんと出血大サービスでっぇぇ! すっっごい、特殊能力なんかもつけちゃいます!今だけ!い・ま・だ・け!ですよ、おにーさん。』


某テレビショッピングの司会みたいなセールストークを披露し、どうだ!と言わんばかりの少女。額には汗をかき、その顔はやりきった感に満ち溢れていたーー



◇   ◇   ◇   ◇



「・・・・・・いや、いいです。このまま死にます。」



少しばかりの沈黙を破り、ぼそりと呟くように男は言った。


『ーーーーへっ? …………えっ? あれ? いま、な、何て言いました?』と、良い反応を期待していた手前、拍子抜けしたような顔をする少女。


「いや、もう…転生とかいいです…ほんと。死にます。土に還ります。」


何かを悟った様な目で、おとこは少女を見つめる。


『・・・・えっ!?ええぇぇぇ!! なな、なんでですか!? 生き返れるんですよ! 新たな生命を謳歌したくないんですか!?』


「・・・・・・いや本当いいです。………ほんと…オナ○ーのし過ぎで死んだ息子を持つことになった両親や…オナ○ーし過ぎて死んだ兄を持つことになった弟達……残された家族のことを思うと……ほんと……ほんと…申し訳なくってねっ!異世界転生とか……そんなこと言ってられないなってっ……」


怒りであろうか 悲しみであろうか 震える手を握りしめ涙を堪えながら男は語る。


「・・・・許せなくてね本当。……自分自身が……オナ○ーで死んだ自分がさぁ…限界超えたら死ぬんだって……オナ○ーてっ限界超えるんだって……知らなくてね。」

彼女は、うんうんと頷きながら黙って俺の言葉を聞いていた。


「言い訳がしたいんじゃなくてね!そんなオナ○ーを限界超えるまでやってしまった自分がね。ほんとね。情けなくてね。・・・それだけはほんと、許せなくてね。」


うんうん、わかる、わかるよ。と少女はいつの間にか、鼻水をたらし大粒の涙をこぼむせび泣く男の隣にしゃがみ込み肩をポンポンと叩く。


『木村さん過去のことを悔んだってしょうがないじゃないですか。起こってしまった事は変えられません。』

あまりにも憐れに思ったのか急にフレンドリーになり俺の肩を抱き、諭すように耳元で少女は言う。


『過去は振り返らず、明るい異世界転生に向けて進んで行きましょうよ。今、あなたの目の前には千載一遇せんざいいちぐうのビッグチャンスが転がってますよ!』


少女がキラキラと目を輝かせ、俺を見つめる。


「・・・・分かりました。あの、1つお願いがあります。」


よっしゃ! キタコレ! と言わんばかりに少女が食い気味に聞く。


『なんでしょう! なんでしょう!イケメンになりたいとか、強靭な男性器が欲しいとか出来うる限りのことなら何でも致しますよ!』


「・・・・じゃあ……あの、俺が死んだ後どうなったか見せてもらってもいいですか?」


『ファ!? 』思いがけない言葉に少女は驚く。


『きき、木村さん! 今、過去は振り返らずてっ言ったばかりじゃないですか!』

今にも飛び掛かりそうな少女をなだめるように俺は弁解べんかいした。


「ちょ、ちょっと待ってください! 違うんです! ……俺、そう言うのずっと気になっちゃうてっ言うか。この世界での自分の結末をちゃんと見届けたい……最後の心残りを無くしたいんです!」


そう、訴える俺に対し少女は悩んだ。


『いやぁ・・・止めといた方が良いと思いますよ。』

少し前の狂気乱舞を思い出したのか、少女が引きつった顔で俺を見る。


「もう大丈夫です。覚悟は、出来ています。…どうかお願いします。」



◇   ◇   ◇   ◇



『木村さんこれから見せるのは、あなたが亡くなった直後の映像です。』

何処からともなく現れた大きな鏡に1人の男が映しだされたーー


         ーーーーー俺だ


間違いなかった。髪はボサボサいつも同じような服を着て、雑誌やらゴミやらで散らかった部屋。何故だかとても懐かしく感じた。そして、もう二度と戻れないと思うと少し寂しかった。


『少し時間を早めます。第一発見者である、あなたの母親が朝食の時間になっても来ない独身で、童貞で、出不精でぶしょうで暇さえありゃ部屋にこもって自慰行為ばっかりしてる、しょうもない息子をーー』


おおおおい!と少女の言葉を遮る。


「急に、辛辣しんらつ過ぎでしょ! どうしたんですか! イメチェン!? 毒舌キャラに路線変更するつもりですか!」


いきなりの言葉の暴力に思わず声を上げた。


『いやいや、違いますよ。これ私が思ってるんじゃなくて、木村さんの母親が思ってることを代弁してるだけですから。』


「・・・・え? 嘘でしょ?」


『いやいや本当ですよ。ほら、もうじき母親が倒れてるあなたを発見しますよ。』少女は鏡を指差す。



「まことー、朝ご飯できたわよ。早く起きなさい。」そう言いながら、母がガチャリと部屋のドアを開ける。


「・・・・まこと? ・・・・・・!? ・・・まこと!!どうしたの!?まこと!! 」

慌てて、ち○こ丸出しで倒れている俺に駆け寄る母ーーーー


「ーーてっ、チ○コ丸出しじゃねーかあああああああああああああ!!!!!!!」

鏡の映像にモザイク処理が施されているが、それでも尚ぶらぶらと動いているのが分かる程に鮮明にチ○コが映し出される。


『そりゃそうでしょう、オナ○ーの最中に死んだんですから。ちなみにこの鏡は、あなたの世界で言うところの4K画質に相当します。』自慢気に少女が胸を張る。


「ああああああ! もういい! 止めてくれぇ! 4Kで俺のチ○コを映さないでくれえぇぇ!」

いきなり恥部を映され俺はパニックってしまった。モザイク越しと言うのが逆にダメージが大きかった。


『えっ~、もういいんですか。こっから面白いのにぃ。ちなみにこの後、父親が駆けつけて来てチ○コ丸出しのあなたを目撃し、騒ぎを聞きつけて弟たちが何だ何だとチ○コ丸出しのあなたを目撃し、最後に救急隊員の人があなたのチ○コを診ます。』

少し残念そうに背中の羽をへたらせ、この後の展開を説明する少女。


「いやいやいや!おかしーだろ!どんな展開だよ、家族全員にチ○コ見られるどころか、最後にいたってはチ○コ診られてんじゃねーか。他に診るべき所があるだろ!」


『いやいや、チ○コ丸出しで倒れてたんだからチ○コに原因があると思ったんじゃないんですか?なかなか居ないでしょ、チ○コ出して心配停止してる人てっ。』

少女が冷静に答える。


「あぁぁ…あぁぁ…」


〈チ○コ出して心配停止〉このワードがよほど効いたのか、男はガクッと気を失って倒れてしまった。


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