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世の中には、知らなくていいことがある

俺の名前は木村真実きむら まこと、何処にでもいる平凡な男だ。

今、俺の目の前には美しい花畑が広がっている。・・・・何となく分かる、俺は死んでしまったのだと。


だが何故?思い出せない。


「思い出せないけど、まぁいいか。事故かなんかだろう。」


俺はそう言って自分自身を納得させた。死んでしまったものは、しょうがないというか。

妙に晴れた気持ちだった。何か色んな、しがらみから解放されたような。それでいてどこか虚しい。


食欲、便意、眠気も一切感じ無い。何か胸にぽっかり穴があいてしまったような。そんな感じだ。

俺は充実しているんだか、いないんだかよく分からない状態に途方に暮れていた。


するとすぐ後ろから声が聞こえてきた。


「あの、さっきからずっと呼んでいるんですけど・・・」


俺は内心すごくビックリしたが平静を装いこう言った。

「どぅ・・・どぅあれだ!」(誰だ)・・・と


「そ、そんなに驚かなくても大丈夫ですよ。」


なんと、そこには金髪、碧眼にギリシャ神話を題材にした絵に出てくる様な格好の、背中に羽の生えたそこそこ可愛い少女が少し慌てた様子で立っていた。


「今、そこそこてっ言いましたか?」


なん…だと…俺の心の声が?


「えぇ、だだ漏れですよ。まぁ、それは置いといて・・・木村真実さんこのたびは、誠に御愁傷様です。お気持ちをお察しします。」


「やはり私は死んだのですか。」


「はい、それとなくお気付きの様でしたが、思いがけない事故で残念なことです。」

・・・事故、そう聞いて少し顔をしかめた。「事故かなんかだろ」と言ったが、まさか本当にそうとは。


「事故でしたか、トラックか何かに跳ねられたんですか?」


「・・・えっ?・・・いやぁ・・・う~ん・・・まぁ・・・突然の災難と言うか。」


「お願いします、はっきりと教えてください。」

事故と言うことは、相手がいる。俺が死ぬ時は、誰にも迷惑と言うか不幸になってもらいたくない。


         『立つ鳥跡を濁さず』


そう、俺はすぅーとフェードアウトして逝きたいのだ。後顧こうこの憂いなく、出来ればーー

ーーーーーあれ?そう考えたら色々とやべぇ物残して来たな……えっ?やばくない?このまま逝ったら?

やべぇよ……とくにタンスの奥はシャレにならねぇよ………なんか……事故とかもう、どうでもいいや……


「えぇ~と事故と言うか、自慰行じいこと言うか・・・」


ところで、さっきからあの娘は一体何を言っているのか?。俺が現世に置いてきた恥の産物を冷静に数えている最中もずっと、よく分からんことをぶつぶつと言っていた。

俺は、ひょっとしたら此奴こいつアホの娘なんじゃないかと思い始めていた。


「いや、アホの娘じゃねーよ!聞こえてるつってんでしょ!」


じゃあ何故、はやく言わないのか?もったいぶってるんですか?後、口が悪いですね。てっ言うかお前、羽生えてんじゃん。何者なの?


「いや、喋れや!利用すんなや!急にタメ口!?」

少女はひとしきり喚き立てた後、ぜぇーぜぇー、と息を切らし深呼吸をし、息を整えコホンと咳払いをした。


俺はと言うと一回りも年が違うであろう少女に圧倒的に捲し立てられ、呆気にとられていた。




  ーーーーーーーーーーー暫くの静寂ーーーーーーーーーーーーー



            「木村さん。」


            「はい。」


「先ほどは取り乱してしまい大変申し訳ありませんでした。」


「いえ、わたくしのほうこそタメ口をきいてしまい!本当にすいませんでしたぁ!久しぶりに女性と話せてテンションの高鳴りを抑えきれませんでしたぁ!」俺は膝をつき頭を深く下げ腹から声出して少女に詫びた。

彼女はドン引きしていたが、すぐに「まぁまぁ」と言い、気を取り直さんとばかりに手をパンパンと2回叩いた。


            「木村さん。」


            「はい。」


「世の中には知るべきことと、知るべきでないことの2つがありますが、これは圧倒的に!圧倒的に後者です!

 命賭けれます。絶対知らないほうがいいです。・・・知れば死ぬでしょう、もう死んでるのに。」


何ともいえない表情で、そう言う彼女に俺はこういい放った。

            

            「本望。」ドンッ!!

現世に置いてきた恥の産物の事を思えば、俺はもういっそ死にたいのだ。死んでるけど!

でも・・・その上があるのならば!俺は…っ…逝ってみたい………無になりたい……


俺の曇りなき眼の「本望」発言に、先ほどとは逆に今度は彼女が呆気にとられていた。


「本当にいいんですね?」

先程と違い神妙な面持ちで少女は言う。


「聞かせてくれないか?俺の人生のエピローグを」





   ーーーーー暫くの沈黙ーーーーーーーーー 少女は決意したように、ゆっくりと口を開いた。




            「木村さん。」



            「はい。」

 


    「ーーテクノブレイクてっ知っていますか?ーー」


ーーにっこり笑って彼女はそう言ったーーー

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