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この戦いが終わったら祝杯を上げよう。  作者: 七井望月
第1章『コンビニバイトとクリーチャー』
7/8

「未知との遭遇」

「遅いな、アイツ。」


 待ち合わせの公園にて待つこと三十分。流石に遅い。何かあったんだろうか?しかし、電話をかけても繋がらない。


「全く、何なんだよ。」


 “逃げろ、もうすぐ、奴が来る。ーその前に。”


「もう一回、電話かけてみるか。」


 “駄目だ!逃げるんだ!早く!早くしろ!”


「……繋がらないな。」


 “急げ!逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ!!”


「こんにちは、ちょっといいかい?」


 “くそっ……間に合わなかったか。”


 ーー話かけてきたのは、かなり背の高い、不気味な笑顔を浮かべた男だ。見た感じのままだと只のヤバい奴だ。


「少し、話がしたい。」


 そう言うと男はナチュラルに、ベンチの俺が座ってるすぐ隣に座ってきた。


 思わず距離を離す。怪訝な顔で睨み付けるが、男は笑顔を崩さない。こいつ見た目だけじゃなく、本当にヤバい奴だわ。俺は戦慄する。


「……アンタ、誰だよ。」


 俺は尋ねる。男は何を言ってるか分からないといったようなキョトンとした表情で、


「ああ、僕かい?」


 と、間を開けてから、すっとんきょうな声でそう答える。コイツ、ヤバさのゲージが降りきってるな。なんて頭の中で軽口を叩いていたが、次の瞬間に俺は全身に鳥肌が立った。


 男は酷く歪んだ邪悪な笑みを浮かべた。見るもの全てを恐怖に陥れるような……


 “怪物だよ。彼は、もう終わりだ。”





 ※






 瞼を開けて、眼に光りを入れる。眠りから覚める瞬間というのは脳の理解が追い付かず、夢と現実がごちゃ混ぜになる。


 俺はどんな夢を見てたんだっけ?確か、誰だっけ、俺の記憶に無いが友人的ポジションの奴が宇宙人を探しに行こうとか言ってて、ーーどうしたんだっけ?


 ーーああ、そう言えば待ち合わせにそいつが来なかったんだよな。その後誰かが出てきて……。


 ああ、忘れちまった。どうやら脳が現実を理解したらしい。そうなったら夢の記憶は綺麗さっぱり真っ更よ。


 そして脳が現実を理解と同時に、


「うわ、ヤバい。滅茶苦茶腹へった。」


 爆発音のような腹の音を鳴らし、忘れていた空腹感を思い出させる。


 だがここは我慢するしかない。台所へ行き、蛇口を捻る。コップに水を注ぎ、五、六杯。胃袋に水を流し込む。これで少しは腹の足しになるだろう。


 餓死しそうな状態で眠りについたのにも関わらず、随分と良く眠れた。時刻はバイト開始時間の一時間前。やることも無く、少し早いがコンビニへ向かう事にした。


 それにコンビニに行けば、取り敢えず何かしら食料はあるはずだ。俺は獲物を見つけた獣の様に、しかしあまり体力を使って空腹感が増長しないように、本能と理性を上手く釣り合わせ、目的地へ向かった。






 ※







 コンビニへ到着した。…が、一つあることを思い出した。今日は店長とやらが店に来てるのだった。岩隈さん曰く、怒ると怖いらしい。頑固者のサンダー親父、というのは俺の想像だが、気のいい優しい人だといいな、というのも俺の願望である。


 しかし、怒ると怖いというだけの情報でどんな人かは全くもって分からない。つまりは未知との遭遇である。


 知らないということ、それは一番の恐怖である。例えばお化け屋敷。幽霊の配置や仕掛けを全て知っていれば子供騙しにすらならない。


 知らない方が幸せだ、なんて言葉もあるが、知ってしまって受けるショックは一瞬だ。「お前は知りすぎた。」なんて言って殺されるなんて事、普通の人にはまず無いことだ。


 それに未知には対策法が無い。だって未知だから、知らないから。


 しかし、それでも立ち向かわなければならない時もある。今がその時だ。それに店の前でうろちょろしてて不審者扱いされるのはもう懲り懲りだからな。


 店の扉を開ける。いざ行かん。


「おー、今日も来てくれたんだね。」


 最初に声をかけてきたのは岩隈さんだ。出会ったのが昨日だがすっかりお馴染みの顔になりつつある。


 そして恐らくその奥にいるのが…


「ほう、貴様が昨日入った新入りとやらか。」


 濃い青色の髪、年は恐らく岩隈さんより一つ、二つ上で、目は少しつり上がっていてやや強面という印象を受ける。胸の前で腕を組んで仁王立ちしている…………女性だ。


「初めましてだな。私がこの店の店長。漆原マキだ。」


 予想通り店長だった、が、まさか女性だったとは、全くの予想外だった。


 俺が呆気にとられていると岩隈さんがやって来て耳打ちで、


「どう?予想外だった?」


「ホントに予想の斜め上でしたね。て言うか岩隈さん店長はオジサンって言ってなかったでしたっけ?」


 斜め上どころか、狙いを大きく外しているがそこん所は突っ込まんでくれ。


「そんなこと言ったっけ?でもそれならせめておばさn……。」


 その言葉を言おうとした瞬間、岩隈さんは店長のパンチによって大きく吹っ飛ばされた。そのまま転がり壁に激突。効果は抜群だ!


「二人とも何を話しているのかと思ったら私の悪口か?私は陰口が嫌いだ。何か言いたいことがあるなら私に直接言ったらどうだ。」


 店長は正に怒り心頭と言った様子だ。岩隈さんの言う通り、怒るとマジで怖い。何かオーラのようなものが見えるのは俺だけですか?


「おい、新入り。無視か?店長に向かって。私は無視が嫌いだ。言わぬなら言わせて見せるが私の信条だ。殺さぬ慈悲に免じて口を開いたらどうだ?あ?」


「ひぃ!」


 何故か俺が巻き込まれてしまっている。店長のオーラが勢いを増した。もはや見間違いではないな。これ。何かとんでもないこと言ってるし、陰口が嫌いだとか、無視が嫌いだとか、もはやこの世の全てが嫌いなんじゃないか?暴力以外。まあ、そんなこと言ったら半殺しじゃ済まず、9割殺し位はされるだろうな。


「じゃあ!店長!店長の年齢はいくつですか?」


「ふんっ!」


「ぐほぁ!!」


「岩隈さーん!!」


 岩隈さんは死んだ。 どの道こうなる。分かっていたさ、世の中が理不尽な事なんて。店長が気のいい人だったらいいなとか思ってたつい数分前の若い俺、人生はそんなに甘くない、だからこそ面白い。嫌なこと、辛い事から逃げるな。強く生きろよ。


「死ね!!ゴラァ!!」


「アッーー!!」


 店長のアッパーが腹に突き刺さる。胃に何も入ってなくて助かった。入ってたら間違いなくキラキラをぶちまけてたからな。そしたら俺は夜空のキラキラ星だ。


 まあ、そんなことがあったが普通にこれから午前の仕事だ。ちなみに岩隈さんは普通に元気に生きてます。

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