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ぼくには子どもの頃から

 ぼくには子どもの頃から、わりと明確な「理想の人生」のイメージがあった。

 そう特別なことではない。いい学校へ進み、いい会社に就職し、それなりの収入とそれなりの社会的地位、それなりに世の中に貢献しているという充実感を得る。そういったことだ。多くの人が目指すことだと思う。

 しかし、誰もが実現できることでもない。子どもながらにそれは分かっていたから、勉強も頑張ったし、部活とか、生徒会活動とか、アルバイトやボランティア活動とか、人生にプラスになりそうなことを色々とやってきた。理想の人生へ行きつくために、努力は惜しまなかったと思う。

 結果として、進学校から国立大学の法学部へ進み、誰もが知っているような企業に就職して、今に至る。少なくとも当分の間は、安定した生活を送れるだろう。

 想定していた「理想の人生」の条件は、あらかたクリアした。順調だ。

 他にクリアすべきことはただ一つ、理想の伴侶と結ばれることだ。

 理想といっても、別に唯一無二の完璧な女性を求めているわけではない。他のことにしてもそうだ。進学校というのは、世間の評判としてはぼくの育った県で三番目くらいの高校だったし、大学も日本で最高峰というほどのところではない。あくまでぼくの手の届く辺りを目指した。会社にしたって大企業だから当然多くの社員を採っているわけで、それこそ弁護士や国連職員になるよりは遥かに簡単だ。

 自分の資質を見誤って高望みをすることの愚かしさも、ぼくは子どもの頃から理解していた。これはなぜだったのだろう。プロのサッカー選手になるのだと息巻いていた、近所のお兄さんを見ていたからだろうか。彼は結局、高校時代三回くらいしか試合に出られなかった。

 それはいい。

 とにかく、ぼくは無闇な高望みはしないことにしている。曖昧な物言いにはなってしまうが、ぼくという人間で釣り合う程度の女性でいい。互いに分相応な相手と愛し合うことができれば、その夫婦は幸福だと思う。

 まあそんなわけで、ぼくは職場の先輩にアプローチし、交際を始めた。

 先に述べたことといきなり矛盾するが、ぼくにはもったいないような女性だった。頭がよく、仕事もでき、そのくせ人柄は柔和で、驚くほど気遣いがきく。おまけに美人だ。すらりとした体型と、つややかな黒髪もいい。実を言えば、ぼくは眼鏡をしている女性があまり好きではないのだが、そこまで好みにぴったりであることを求めるのは望みすぎだろう。

 とにかく、彼女は充分に理想の伴侶の条件を満たしていた。交際を始めて一ヶ月、夕食の後でぼくは彼女をホテルに誘った。



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