プロローグ
とりあえず単発作品ですが、短編にしなかったのは読者様次第で連載するか否かを決めようと思ったからです。
プロローグ
パァンッ
全てが腐りきっている街に、何かが弾ける音がする。
それはこの街ではある意味日常で、ある意味非日常だ。
いや、それもこの街では全てが当たり前の日常になる。
「シロ、任務完了だ。今から帰る」
全てが腐りきっている街の、蜘蛛の巣の様な街にある道の一つ。
そこに一人の男と、人間だった”物”がある。
そして人間だった物には、すでに息はなく。
その死体の心臓部分には、小さい穴が空いている。
そこから血がとめどなく流れでていて、着ていた服を血で染める。
「は〜あ、最近の仕事は退屈だ。もっと刺激のある依頼は無いもんかね」
フハハ、と全てに絶望した様な、何かに裏切られた様な笑いをする男。
それはその男の癖であり、今までの人生の賜物だ。
いやそんないい物ではなく、今までの人生の闇か。
「めんどくせぇけど、帰りますかね」
その男の本当の名前を知る者は誰もいないだろうが、その男を知る者達からはこう呼ばれている。
いや違う、その男がそう名乗るのだ。
絶対に本当の名前を教え無い代わりに、そう名乗る。
『ロスト』と。
その名前の意味を知る者は、数える程しかいない。
そしてその意味を知る者達は、その男をこう呼ぶ。
『ホワイト』と。
なぜそう呼ぶかは、わからない。
でもその男から”ロスト”の意味を聞くと、その男を”ロスト=ホワイト”と呼ぶ様になる。
その男は、どこで生まれたかも、どこで育ったかもわからない。
何も喋らず、自分の為にナニカをする。
容姿は、この国ではすごく珍しいだろう。
真っ黒で漆黒で、鴉の濡れ羽の様な黒い黒髪。
艶やかで滑らかな髪を、肩上まで伸ばし右耳の後ろで三つ編みにして。
真っ黒で漆黒で、奈落の様な闇を全て見てきた様な黒い眼。
光はなく輝きもなく、黒くて黒いガラス玉の様な大きい眼。
右目は眼帯で隠していて、左目だけが暗闇を見る。
幼い顔立ちだが、作り物の人形の様な整った顔立ち。
高くもなく低くも無い鼻に、小さくて紅色の唇。
10歳から15歳位の子供と同じ身長。
膝下まである、何処にでもありそうな漆黒の外套を羽織り。
黒いスーツの様な服を着て、高そうな黒い革靴を履いている。
全身を黒を基調にして、闇に紛れる様な姿。
武器は持たず、今さっき人を殺した人間とは思え無い程に、落ち着いている。いやもう、ロストにとって”人を殺す”とゆう事は日常以外の何物でも無い。
人を殺しすぎてなのか、元より人を殺す事になんの感情も無いのか。
悠久の時を生きるロストにとって、”人殺し”と”人助け”に大きな違いは無い。とゆうよりも”人”に対して、あまりとゆうか全く興味が無い。
その為人を殺そうが、人を助けようがどうでもいいのだ。
ロストは人を殺した現場を後にする。
後始末も後片付けもせず、殺した現場から家に帰る。
ここは『スラム』と呼ばれる、所謂貧民街だ。
人も動物も、有機物も無機物も、何もかも腐りきっていて腐り落ちていて。
怨恨も復習も、約束も誓いも、何もかもが暴力と殺人で全てが解決する。
そんな”屑共”の吹き溜まりで、地獄の一歩手前のそんな街。
そんな街にいて、世界中から認められる存在がいる。
いや違うな、それは違う、違い過ぎるほどに違う。
その男を世界中の全ての生き物が、何らかの形で見聞きしているだろう。
そして恐怖して、歓喜しているだろう。
世界を守る『救世主』としてだったり、人間を守る『勇者』としてかも。
世界を壊す『破壊者』としてだったり、人間を滅ぼす『魔王」としてかも。
姫を守る『騎士』だったり、おとぎ話の『正義』の体現者だったり。
姫を殺す『暗殺者』だったり、おとぎ話の『悪」の体現者だったり。
民を守る『善王』だったり、病を治す『名医』だったり。
無辜の民を殺す『殺人鬼』だったり、死の病を作る『疫病神』だったり。
数えればきりが無いだろうし、とめどなく出てくるだろう。
『善』としての呼び名だったり、『悪』としての呼び名だったり。
『英雄』『勇者』『天使』『神の使い』『騎士』
『悪魔』『死神』『魔神』『魔王』『狂人』『犯罪者』『暗殺者』
様々な呼び名で呼ばれ、だがそのどれもが『ロスト=ホワイト』と呼ばれる人物で間違いは無い。
『ロスト=ホワイト』がいつから生きていて、何をしたかは知る由も無い。
本人曰く、『暇だったから人を救った』や『ムカついたから人を殺した』などの、何かをされる側からすればいい迷惑だが、それも許されるのだろう。
なぜなら何をしても、何もしなくてもその男の周りでは”ナニカ”が起きる。
それが『善』なのか『悪』なのかはわから無いが、”ナニカ”は絶対に起きる。
悠久の時を生き、現在スラムに住み着いたロストにはある呼び名がある。
それは愛称であり蔑称でもあるだろう、なぜならそれはある意味悠久の時を生きた”ロスト=ホワイト”とゆう男にぴったりな呼び名であり仕事だから。
『世界最強の請負人』
誰が呼んだのかはわから無い、だがその男を知る者なら納得するだろう。
納得せざるおえ無いだろうし、まさに生き様そのものだから。
依頼を受け、それを完遂する。
依頼に見合った報酬を提示し、それをいただく。
その男に失敗はなく例外は無い。
その男に頼めば、そして見合った金さえ払えば。
その男は世界を全て救う『救世主』になるだろう。
その男は世界を全て壊す『破壊者』になるだろう。
『勇者』にだってなるし、『魔王』にだってなるだろう。
何にだってなるだろう、そしてそれを実行する事も簡単だろう。
数も権力も力も何もかもが、その男の前では一律に成る。
王も平民も、裕福も貧困も、無にもかもが同じであって一律だ。
その男に権力は聞かず、その男に脅迫は聞か無い。
男曰く『王と民の違いって、俺からすればさ女王アリと働きアリ位の違いしか無いんだよ。お前、アリンコに対して何か思う事なんて無いだろ』
そう人に対して徹底的に圧倒的に興味がなく、関心が無い。
そんな男だからこそ、求められるし距離を取られる。
最強ゆえに最恐で、孤高ゆえに孤独だ。
それでもやっぱり、『世界最強の請負人』はどうしても魅力的だ。
ロストを知る者たちは疑問に思うだろう。
どれだけの時を生きているのか、どうすればそれ程の強さを手に入れられるのか、どういった思考回路を持ってして請負人なんてやっている。
なんて聞こうと思えばいくらでも出るだろう。
それでも全てがある一言によって納得できるだろう。
納得できなくともせざるおえ無いし、無理やりにでも納得する。
そう『我最強、故に我あり』と。
最強には”時”すらも無力で、最強の強さは最強だから持っていて。
何を依頼されても完遂でき無い事なんてなく。
それ故に『世界最強』だ。
まあこんな長ったらしい紹介文か?いや違う説明文は本来いらない。
この物語の主人公であり、『最強』とゆう言葉を背負うに相応しい男が。
これから何を請負そして、何をなすかの物語。
喜劇でもあり悲劇でもある。
それでもやっぱり”最強”は生きる。
悠久の時を生き続けるだろう。
『世界最強の請負人』は今日も闇を背負って歩く。
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