表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみと歩くすこし不思議な魔法の世界  作者: ねんねこザウルス
8/15

第8話:思い出

 気がつけば結構前話からかなり時間が空いてしまいました。

 投稿が遅く申し訳ないです。


 4/6

 修正しました。

 

 夏望ちゃんのいた病室を出た僕と結翔は、今度は僕為に用意してくれた部屋に向かって長い廊下を歩いている。

 周りを見渡すと、夜遅いのに比較的多くの人の姿が見える。


 「夜だけど結構人がいるんだね」


 「所属によっては夜勤があるからな」


 横で一緒に歩いている結翔はそう話す。

 ここは夜勤まであるのか・・・まあ、異界の風とやらは夜も監視してないと危険なんだろう。


 「討伐隊も緊急の時は夜も呼ばれるぞ」


 結翔は続けてそう言った。


 ・・・・・・つくづく討伐隊は大変だと思う。


 「でも、寝てたりしてて急に呼ばれたら大変だね」


 「まあ寝なくても大丈夫な魔法薬があるし、次の日は基本休みになるからいいんだけどな」


 寝なくていい薬って・・・その薬本当に大丈夫なのだろうか?

 そのような話しをしながら、僕達は先生と話をした応接間のある方向に歩いている。

 そして、1階の突き当たり、応接間の前のエントランスにたどり着いた。

 

 「ここの2階に上ってすぐの所に彩香の部屋を用意してるんだ」


 「僕の部屋はこの先なんだね」


 「まだ決まったわけじゃあ無いけどな」


 決まったわけじゃ無い?

 結翔はそんな事を言いながら2階に上がって行く。


 よく分からないが、とりあえず結翔について僕も2階に上がった。


 2階にに上がり横を見ると、まずちょうど応接間の上に当たる所に、会議室と書いてある部屋があった。

 その反対側は長い廊下になっていて、その廊下の一番手前のドアの前に大量の段ボール箱が積み重なっているのが見える。


 多分購買部で買った物だろう。


 「彩香の部屋はすぐそこの部屋だ」


 そう言った結翔は近くのドアを指差す。

 まあ大量の段ボールがあるので、大体そのあたりだろうとは予想はしていた。


 購買部のちえさんは荷物を部屋まで持って来てくれると言ってたが、こんなに大量に持って来てもらうとなんだか申し訳なく思う。


 でも、こんなに僕は物を買ったかな?


 「ちえさん、荷物を持って来てくれたんだね」


 「そうだな。後でお礼をしておくよ。

 それじゃあ彩香の部屋の鍵を取ってくるからちょっと待ってろよ」


 結翔は段ボールが沢山ある所のドアの鍵を開けている。

 多分今鍵を開けている所が結翔の部屋なのだろう。


 結翔の部屋は廊下の端っこで、彼の部屋の隣が僕の部屋と言っていたから、きっと今鍵を開けている部屋の隣が僕の部屋なのだと思う。


 ドアを開けた結翔は、山になっている段ボールをいくつか自分の部屋に入れ始めた。

 そういえば結翔宛の荷物もあるとちえさんは言っていた様な気がする。

 あの段ボールのいくつかは結翔の荷物なのだろう。

 結翔は自分の段ボールをどんどん部屋の中に入れていった。

 結局山ほどあった段ボールは3個だけになった・・・結翔は一体何をそんなに買ったのだろうか?


 結翔が部屋に入っている間、特にすることもないので何と無く今上がってきた階段を眺めた。

 階段はまだ上に続いていて、この建物が3階以上あることがわかる。

 何階まであるのだろう・・・と階段を覗き込んでいると、段ボールを入れ終えて部屋から出てきた結翔が話しかけてきた。


 「どうしたんだ彩香?」


 「あ、いやなんでも無いよ。

 ただこの建物、まだ上の階があるんだなって思って。

 この上の階は何があるの?」


 「3階か? 3階は女部屋があるフロアだ。

 この建物は1階が食事や買い物するフロアで、2階が男部屋、3階が女部屋で分けてるんだ。

 だから彩香は・・・まあ男が用がないのに3階に上がっちゃダメって事だ」


 結翔は僕の名前を言って僕の顔をみた後、一瞬言葉に詰まった。


 ・・・・・・話が進まないから今はスルーしておこう。


 「それでこの建物は3階建なの?」

 

 「一応4階まであるんだけど、4階はVIPルームってとこかな」


 「VIPルーム? お客さんの部屋って事?」


 「少し違うんだけど・・・今はまだお前には関係ないから気にしなくていいよ。

 とりあえず特に用事が無いのに3階以上に行くなってことだ」


 3階以上に行くな・・・か、覚えておこう。

 

 「それじゃあ彩香の部屋に入るか」


 そう言った結翔と一緒に僕の部屋に入る。

 部屋は割と広く、ベット、テレビ、冷蔵庫、大きいクローゼットと見えるだけでも充実した設備だ。


 「広いだろ、この部屋」


 結翔はどうだと言わんばかりにそう言った。


 「あ・・・うん、そうだね」


 僕は一応肯定しておいた。

 確かに一般的に広い部屋なんだと思う。

 ただ世界的富豪の屋敷に10年以上居た僕にとって、当時居た部屋に比べればとても狭い部屋だった。


 一ノ宮の屋敷にいた時、一応僕の部屋も割り当てられていた。

 ・・・まあ、部屋を貰ったと言うよりも、そこに押し込められていたの方が正しいかな。


 それで、その部屋はこの部屋よりもっともっと広かったので、申し訳ないが結翔が期待した程の感動は僕には無かったと思う。

 

 でも、広すぎる部屋にたった一人ぽつんといるのもそれはそれで辛かった・・・


 「どうしたんだ?

 この部屋気に入らなかったか?」


 一ノ宮の屋敷にいた時の事を思い出し、少し悲しい顔をしていた僕を結翔は心配して話しかけてきた。


 「ごめん、大丈夫だよ。

 前に住んでいた所の部屋があまり気に入ってなかったから、それを思い出して・・・うん、いい部屋だよ」


 「そうか、ならよかった。

 あと、そうだな・・・そういえば何か忘れているような?」


 そう言いながら結翔は顎に手を当て、忘れている何かを思い出そうと唸りだした。

 彼が何かを思い出すのに時間がかかりそうだったので、僕は外に置いてある段ボールをこの部屋の中に入れる事にした。


 とりあえず外に出て段ボールを持って入る。


 そんなに重いものを買った覚えはないので段ボールは軽く、すぐに部屋に入れることができた。

 結翔は僕が段ボールを全て持ち入っても、忘れた何かを思い出そうと唸っている。


 もう少し時間がかかるかな? 


 なので、とりあえず持って入った段ボール箱を開けて中身を確認することにした。


 1つ目の段ボールは購買部で買った身の回りのものやタオルなんかが入っている。

 2つ目の段ボールは買った服なんかが綺麗に畳まれ入っている。

 3つめの段ボールには・・・・・・あれ?

 買った覚えのない服や靴が入っている。

 結翔の荷物と間違えたのだろうか?


 「ああ!! 忘れてた!!」


 突然結翔は大きな声を出した。


 「ど、どうしたの?」


 「やばいな、購買部もう閉まってるしなぁ」


 結翔は困った顔をして頭をかいている。


 「・・・? なんの話?」


 「いやな、お前に買わないといけない服があったんだけど忘れてたんだ」


 「服? 服なら買ったよ?」


 「それは普段着だろ、そうじゃなくて・・・あ!!」


 結翔は最後に開けた段ボールの服を見て、その中に入っている服を手に取った。


 「あった強化服」


 「強化服?」


 「ああ、魔法装甲強化服って言うんだけど、長い名前だから強化服って呼んでるんだ」


 結翔はそう言いながら段ボールの中の服を僕に見せてくれた。

 それはなんだか学校の制服の様な・・・見た目の服だった。


 これがどうしたんだろう?


 「これは魔法使いの戦闘服さ。

 こいつには特別な魔法の糸が使われていて、かなりの衝撃にも耐えられるんだ。

 見た目は布だけどそこらへんの鉄よりも頑丈なんだぞ」


 「そうなの? そうには見えないけど・・・」


 僕は強化服と言われる服を結翔から貰ってそれを触ってみる・・・が、どう見てもただの服だと思う。


 「それで、これがどうしたの?」


 「山の外に外出する時、俺達魔法使いはこの服の着用が絶対なんだ。

 だから購買部に行ってお前の分を買う予定だったんだけど、すっかり忘れてたよ。

 ちえさん気をきかして持ってきてくれたんだな。

 よかった、これで先生に怒られずにすんだよ」


 結翔は本当に焦っていたのだろう、ホッと胸を撫で下ろしてしているのが見てわかる。

 とりあえず、そんなとても必要な物なら忘れないでほしい。

 

 それから結翔はこの部屋の設備について教えてくれた。

 部屋には洗面所やトイレ、お風呂まで常備しているとても充実した部屋だった。

 

 「今日はこの辺にしとくかな。

 彩香も疲れただろ、何か聞きたいことがあったら今度聞いてやるから今日は休めよ」


 「そうだね、そうさせてもらうよ」

 

 明日朝7時半に1階の応接間の前に集合して食堂に一緒に行く約束を結翔と交わし、彼は部屋を出て行った。

 去り際に、「これからよろしくな」と僕の肩をポンと叩き激励してくれた。


 「さて、頑張らないといけないな・・・」


 とにかく早くここでの生活に慣れなきゃいけない。


 結翔が部屋から去った後そう思いながら、そういえば今何時だろうと思い部屋の時計を探す。

 見渡してみたが、どうやらこの部屋に時計は置いてない様だ。

 仕方なく持って来た携帯電話を取り出すと時刻はもう夜の10時になる所だった。


 携帯電話は相変わらず圏外のままだ。


 ここが山奥だからか電波が届かないのか、それとも携帯電話を解約されたのかは分からない・・・とにかくこの携帯電話がここでは目覚まし位にしか使えない事はわかった。


 何と無く携帯電話の受信メールをチェックしてみる・・・

 圏外のなので当然新着メールなんてものはない。

 僕はメール受信フォルダを確認する。

 そこには爺さんと書かれた既読済みのメールが沢山あった。

 

 この携帯電話は昔学校で携帯電話が流行った時、僕を引き取った爺さんに頼んで買ってもらった数少ない物の1つだ。


 学校ではイジメこそなかったが、周りの同級生は、僕と関わろうとしなかった。

 どうやら、同じ学校にいる同年代の一ノ宮の人達に、僕と仲良くするなと脅されていたらしい。

 この組織に来る事を決めて、学校を僕が去ろうとした時、数人の同級生がそんな話をしてくれた。


 でもその当時、そんな事を知らない僕は当時携帯電話を持てばみんなともっと話しが出来ると思ってた。

 結局こん携帯では、何人かと電話やメールの連絡先のやり取りをしただけで、誰とも連絡をする事は無かった。


 ただ、爺さんだけは違った。


 富豪の長である爺さんは基本世界中を忙しく飛び回っていて、殆ど家にはいなかった。

 そんな爺さんだが僕が携帯電話を持つと、ほぼ毎日メールを送ってくれた。


 「今日は元気か」や「辛いことは無かったか」みたいな感じだったり、「今世界のこの辺りにいる」みたいな近況報告メールだったり・・・・・・


 改めて受信メールを確認すると爺さんの名前ばかりで、内容もどうでもいいことばかりだ。

 その当時、爺さんに迷惑がかからないよう「元気だよ」とか「心配いらないよ」と僕は送っていた。

 メールは何年も、ずっと続いていて、爺さんが死ぬ前日まで僕にメールをくれていた。


 自分が死ぬ寸前なのに・・・・・・本当に爺さんらしい。


 圏外の携帯電話をみた時に、もしかしたら爺さんからメールが届いているかもしれない、そんなありもしない事を考えた。


 もちろんメールは来ていない。


 もう爺さんからメールが来ないんだと思うと寂しくなる。


 「もう・・・寝よう」


 明日は確か7時半に階段下のエントランスに集合と結翔は言っていた。


 今日はもう疲れた。


 お風呂は・・・もう身体を拭くだけでいいか。

 僕は段ボールから、購買部で買った身体を拭くウエットティッシュで簡単に全身を拭き、下着と寝間着に着替えると、置いてあるベットに飛び乗った。


 ベットはとても良質なのか、それともやはり疲れているのか、横になった瞬間急激に睡魔に襲われる。

 寝てしまう前に、目覚ましだけになってしまった携帯電話のアラームを7時にセットする。


 「おやすみなさい・・・」


 携帯電話におやすみを言って僕は眠りについた。




 『ピピピピ・・・ピピピピ・・・』


 携帯電話のアラームが朝を知らせてくれる。

 ベットの上でもぞもぞしながら携帯電話を探しアラームを消す。


 ムクッと起きて周りを見渡す。


 昨日寝た部屋と同じ・・・・・・まあ当たり前か。

 目を覚ますため洗面台で顔を洗うことにした。

 時刻は朝7時だ。これも昨日アラームをセットしたから当然か。

 まだ覚醒しきってない自分の頬を叩き目を覚まさせる。

 集合は7時半、10分前集合って言葉もある、自分は新入りだし早めに出ることにした。

 

 応接間の前、エントランスの様なこの場所のいくつか置いてある椅子に腰掛け、あと10分したら来るだろう結翔を待つことにした。


 それから待つこと20分・・・・・・あれ? 

 10分前に来て、もう10分オーバーしてる。


 「昨日ここに集合って言ってなかったかな?」


 結翔は確か7時半にここに集合と昨晩いっていたはずなのだが・・・

 彼が時間になっても来ないとなると、集合場所が本当にここであっているのか不安になってくる。


 そう少し焦っていると、廊下の向こうから見知った女性が歩いて来た。


 その人は赤く綺麗な長い髪をなびかせ僕のいるエントランスの方に歩いて来る。

 それは駅からここまで案内してくれたクレハだった。


 僕は向こうから歩いて来る彼女を僕は何となく見ていた。


 整った顔立ち、長く綺麗でサラサラしている赤い髪・・・多分一般的に美人と言われる人なんだろう。


 一応挨拶くらいしたほうがいいかな?


 ・・・ただ、彼女と一緒に歩いたあの案内の道中、会話にならないアレを思い出すと、彼女にこれから話しかけるかどうか迷う。

 しかし何も言わないのも何か悪い気がする、それにここまで案内をしてくれたのは事実だし、お礼の1つ無いのも失礼だろう。

 クレハが近くに来た時、僕は椅子から立ち上がると、とりあえず彼女に挨拶をした。


 「あの・・・おはようクレハ」


 「・・・・・・」


 そう・・・この感じ。返事が無い・・・


 それでもクレハは一応僕の前で止まってはくれた、しかし顔色ひとつ変えないクレハに、彼女が僕の事を覚えていないのでは無いかと不安になってくる。


 「えっと・・・一ノ宮彩香なんだけどな・・・覚えてるかな?」


 「えぇ・・・分かっていますよ彩香」


 ・・・分かっているのならそれなりに反応して欲しい。

 どうもクレハと話すと心が折れてきそうだ。

 それでもめげずにここまでの案内のお礼をする事にする。


 「一昨日は案内ありがとう。

 色々あったけど僕ここにいる事になったんだ。

 よろしく、クレハ」


 「・・・・・・そうですか」


 クレハはそうだけ言い残し、僕の前をスタスタ横切っていった。

 ・・・・・・これは慣れないといけないんだろうか?

 

 ちょうどクレハが僕の前を横切った時、階段からドタドタ結翔が降りて来た。

 よかった、どうやら集合場所はここで会ってたみたいだ。

 ちょうどクレハも階段を上がる所で、結翔とクレハがすれ違う。

 

 「ようクレハ! おはよう」


 「・・・・・・」


 結翔もクレハに挨拶をしたがやっぱり返事が無い。

 どうやらクレハのあの感じは僕だけでは無いようだ。

 ・・・・・・少し安心した。


 「すまねえ彩香。寝坊した」


 時間に遅れて来た結翔は僕の前で手を合わし、謝って来た。


 「おはよう結翔」


 「おう! おはよう!」


 「・・・これが普通だよね」


 「? 何がだ?」


 とりあえず頭にクエスチョンマークが出ている結翔と朝の挨拶をして、多分これが一般的な朝の感じだよな・・・と思う。


 「悪いな、時間がなくなってしまった。

 食堂に急ごう」


 時刻は7時50分・・・結翔、完全に遅刻だな。

 まだこの建物の中を把握できてない僕は、遅れて来て足早に廊下を歩いていった結翔にはぐれないよう食堂に急いだ。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ