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きみと歩くすこし不思議な魔法の世界  作者: ねんねこザウルス
2/15

第2話:異界の物

 執筆中のデータを保存失敗して消えてしまい泣きそうでした(T ^ T)


 少女は彩香と同い年位で、身長も同じくらいです。


 感想等ありましたらよろしくです。


 空が夕焼け色に染まる中、目の前の赤い髪の女の子を眺めている彩香。


 目の前の少女は彩香と同い年ぐらいで、とても顔の整った、一般的に美少女と言った感じの子だった。

 そして何よりも、彼女の比較的長くてとても綺麗な赤色をした髪がとても印象的だった。


 そこに少し寒い秋風が吹き、彩香は寒さに少し身体を縮こませた。

 それから本来の目的を思い出す。

 

 多分だが、この少女が案内人だろう・・・彩香は何となくそう思った。


 近くの時計を見ると、もう集合時間から3時間以上も経ってはいる。

 もしかしたら違うかもしれないが、一応確認を取るために目の前の少女に話しかけた。


 「あの・・・すみません・・・」


 「・・・・・・」


 少女の返事がない。

 むしろ反応がなかった。


 「あのーすみませんー」


 先程は聞こえなかったかもしれない。

 今度は大きめの声で、はっきりと話しかけた。


 彼女はチラッと彩香を見る。


 「・・・・・・何?」


 面倒くさそうな冷たい返事が返ってくる。

 なんだか話しずらい人だ。


 しかし現状彩香の周りには彼女以外の人の姿は無く、目の前にいる少女が地図に書かれた案内人で無い場合、こんな時間にこんな所でこれからどうすればいいか分からない。


 正直あまり話したくはないが、他に頼る人もいない彩香は、目の前の彼女に仕方なく話しかけることにした。


 「えっと・・・僕、一ノ宮彩香っていいます」


 「・・・・・・」


 彼女は黙って駅のホームを数秒見て、それから彩香の方に体を向ける。


 「貴方が一ノ宮彩香?」


 「はい・・・あの・・・手紙に書かれている案内の人ですか?」


 少女はコクリと何も言わずに頷く。

 どうやら彼女が手紙の案内人の様だ。


 そうで無い場合これからどうしようか心配していた彩香は、彼女が案内人だと分かって胸をなでおろす。


 「・・・じゃあついてきて」


 そんな彩香の気持ちを知ってか知らずか、彼女はそう言うと、何も説明しないままスタスタ彩香の前を横切った。


 「あ・・・ちょっと待って」


 「・・・何?」


 「えっと、君が案内の人なんだよね」


 「そうだけど、何?」


 彼女はとてもめんどくさそうに話す。

 本当に話しかけにくい人だ、彩香は困りながらも話を続ける。


 「これから行く場所とか、君の名前とか教えてくれないのかなって思って・・・」


 「私はクレハ。行き先はあそこ」


 クレハと答えた少女はそう言うと、少し遠くの山を指差した。


 「あの山の上の建物まで歩いて行く」


 彼女が指差した先に確かに山は見える、しかし建物らしいものは何処にも見えない。

 そもそも彩香のいる地点から山までそれなりに遠い。


 「あの山まで・・・歩いて!?」


 彩香は驚き戸惑いながらクレハと名乗る少女に問いかける。


 「そう」


 彼女はあっけらかんと言った。

 

 太陽も沈み始めている今現在、彼女が指示する山の麓に行くだけで太陽は沈んでしまい月が顔をだすだろう。

 彼女が言うには、そこから更に建物まで歩く様だ。


 幾ら何でもそれは無茶だ。


 「タクシーとかないの?」


 彩香はさすがに歩くのは難しいと判断してクレハに交通機関がないか尋ねる。

 しかし彼女から帰ってきた返答は、


 「楽しい?」


 「いや、楽しいではなく・・・」


 ・・・一体この少女は何を言っているのだろうか?


 なんでタクシーが楽しいになるのか?

 彼女が一体今までどの様な教育を受けてきたのか気になる。

 そう彩香が思っているうちにクレハと名乗った少女はスタスタと指をさした先に進んで行く。


 「だからちょっと待ってよ」


 「何? 貴方が寝ていたから早く行かないと暗くなる」


 彼女は不機嫌そうな顔でそう言い放つ。


 確かに自分がつい居眠りをしたために集合時間が遅れたのは間違いない・・・だが、それでもこんな素っ気ない態度をされ続けたら誰でも腹がたつ。


 「まあそれはそうかもだけど・・・それなら寝ている僕を起こしてくれてもよかったのに」


 彩香はそう言い、彼女に問い詰める。


 「・・・・・・」


 返事は無かった。


 確かに彩香が寝てしまったのがそもそもの原因ではある。


 しかしこんな田舎の駅を利用しようとする人はそんなにいないはずだ。

 実際に電車の中は彩香一人であったし、駅に降りても周りに人はいなかったと思う。

 だから仮にベンチに座って寝ていたとしても、それが目的の人物だろうと容易に想像出来るはずだ。


 彩香はそう思い彼女に強めに言い返し、彼女の返答を待った。


 すると・・・


 「一ノ宮彩香は男と聞いていたのに女だったから分からなかった」


 その答えを聞いて彩香は悲しく納得する。

 そして小さい声でこう言った。


 「ごめん・・・一応僕、男です」


 「・・・・・・」


 「・・・・・・」


 何と無く気まずい空気が流れる。


 しばらくの沈黙の後、彼女は何も話さずまたスタスタと歩き出した。

 そんな彼女を眺めながら、彩香は黙って後ろをついて歩いた。



 月明かりに照らされた山道。

 彩香の思った通り、目的の山の麓についた時にはもう夜になっていた。

 しかも目的の建物のは更にこの山の中である。たまったものではない。

 しかし、案内人の少女は街灯が1つもない山道をただひたすらに歩き続ける。


 彩香も文句の1つでも言いたいが、案内してくれている以上、仕方なく彼女の後ろを歩いていた。


 明かりのない山道は不気味で気味が悪い。


 それでも救いなのは、月明かりで山道が視界を確保できるくらいは明るいと言う事だ。

 彩香はクレハとはぐれないよう必死で山道を登った。


 そんな彩香が今歩いている山道だが、結構綺麗に整備されていて、土の道だが車3台程並んで走れるのでは無いのかと思うほどに道幅を取っている。


 (これだけ整地されてるんなら、やっぱりタクシーでくればよかったのに・・・)


 彩香はそう思ったが、結局は自分が寝てしまってクレハを待たせてしまった負い目もあった為、彼女の後を黙ってついて歩いた。


 実は彩香には、他に黙っている理由がある。


 それはクレハと話しても話しにならないという事だ。

 ここまでの道すがら、一応彩香はクレハに何度か話しかけた・・・


 「あの・・・クレハさん?」


 「クレハでいい。

 で、何? 一ノ宮彩香?」


 「僕も彩香でいいよ。もう一ノ宮の人間ではないし・・・

 それでクレハ、その・・・寝ていてごめん」


 彩香は眠っていた事をまだ謝っていなかったので謝罪をした。


 「別に、気にしてない」


 「それならいいんだけどさ・・・ところで僕が今から行くとこはどんな所?」


 「建物」


 「いや・・・そうじゃなくて、何をしている所って意味」


 「寝る所」


 「・・・・・・寝る以外は何かしているの?」


 「別に」


 「・・・・・・」


 「・・・・・・」


 とまあこんな具合に会話をバッサリとカットされるのだ。

 何とも話しずらい。


 言葉のキャッチボールをしようとしたら、そのままバットで打たれた気分だ。

 他にも色々話しかけては見たが、「そう・・・」や「さあ・・・」や「別に・・・」と言った感じにバッサリ切られ続けた。


 そして現在、彩香はもう話す事が思いつかないので、諦めて暗い山道をただ黙々とクレハの後を歩くことにした。

 

 そしてしばらく暗い山道をクレハの後を追って歩いていると、前方の山の頂上付近に、木々に隠れてはいるが大きな建物らしい物が2つ見えてきた。


 そのうち一つの建物には明かりが点いている。

 多分あれが目的の建物だろう、彩香はそう思い安心した。


 知らない山道を・・・険しくはなかったが、街灯もない、ゴールもどこか分からない山道をただひたすら無言で歩きつ続けたので、そろそろ精神的に辛くなっていた。


 ようやくゴールが見え、足早に建物に向かおうとする彩香。

 しかし先行していたクレハが急にピタッと歩くのをやめてしまった。


 「どうしたのクレハ?」


 「・・・・・・」


 また返事がない。

 やれやれ、まただんまりか・・・


 クレハが一体何を考えているのかどうも分からない。


 しかし案内人であるクレハが立ち止まってしまったので、仕方なく彩香はクレハの少し後ろで立ち止まった。


 暗い山道の真ん中で立ち尽くす二人。

 それからしばらく経ったが、何故か動かないクレハ。

 彩香はそんなクレハにイライラしながら、そろそろ文句の一つ言おうとした時。

 

 ガチャン・・・ガチャン・・・


 何やら聞きなれない音に気付く


 「・・・え? なんの音?」


 金属の擦れる音が山に響いて聞こえる。

 こんな山奥に一体なんだろうか?


 ガチャン・・・ガチャン・・・


 その無機質な音は、だんだん自分達に近づいて来ている様な気がする。


 ガチャン・・・ガチャン・・・ガチャ・・・


 暗い山道の先、それは彼らの少し先で止まった。


 「・・・・・・え?」


 目を疑い、驚きを隠せない。


 そこには、周りの山の木よりも高く、そして全身を鎧で覆われた正体不明の巨人が立っていたのだ。


 鎧は西洋の全身鎧のような見た目で、足の先から頭の先まで完全に覆われていた。

 こんな大きな鎧の中に一体何が入っているのかは分からないが、その無機質のはずの鎧は、まるで呼吸をするかのように胸の部分を伸縮させている。

 

 まるで鎧自体が生き物かの様に・・・


 そしてその巨人の背中には、一体誰がどうやって作ったのかわからない二本の巨大な剣が見える。


 「あ・・・あ・・・・・・」

 

 彩香はこの理解しがたい生物を目の前に、恐怖で震えていた。

 頭の中で逃げろと警鐘を鳴らす、だが足が震えて動かない・・・

 自分の中の常識以上のことが起きると何もできない、ただ訳もわからず彩香はその場で動けないでいた。


 一方クレハはと言うと、特に怯えることなく巨大な鎧に向かって歩きだす。

 

 「異界の物・・・まだ早いのに・・・」


 そんな訳もわからない事をクレハは言いながら、恐怖で動けないでいる彩香の事など気にせず巨人に向かって歩き出す。


 「ちょっと、クレハ! 早く逃げないと・・・・・・」


 彩香の心配を他所に、彼女は鎧の巨人に向かって走り出した。

 走り出したクレハをよく見ると、いつの間にか身の丈はあろう大きな鎌を持っている。

 今まで一緒に歩いていたがそのような物を持っていなかった筈だが・・・一体それを彼女は何処から取り出したのだろうか?


 クレハはその大鎌を地面にこすりながら鎧の化け物に向かって走っていく。


 そして彼女は大鎌の先端をマッチでこするように地面を切り上げた。

 すると大鎌の刃が炎を上げ鎌の部分を炎が纏う。


 「なんなんだよ・・・一体」


 鎧の巨人はそれを見て、背中にある片方の剣を持ち、迎撃態勢に入る。


 それでも一向に足を止める気配のないクレハ。


 彩香は自分の理解の範囲を超えるこの異常な状況に、唯々立ち尽くして眺めることしかできなかった・・・


ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回は鎧の巨人と戦闘シーンです。

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