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俺は考える。

なんのために村から抜け出してきたか、それは自分の憧れていた冒険者になるためだ。


でも、これから先もあんな恐怖の中で生きていかないといけないのか、そして何よりも俺はマホにチホ、そしてナオトに死んでほしくない。

それだったら俺たちは帰った方が良いのか?そしたらあんな恐怖に怯えなくて、感じなくていいし、何よりもマホたちが危険な目にあわなくて済む。


そこまで考えて俺は自嘲した。


今さら何言ってるんだ俺は、マホたちを危険な目にあわせたくない?馬鹿なことを言うなよ。もうとっくに何度もあわせているだろうが。俺の考え無しの行動のせいで!

今回もそうだ。俺が調子に乗ってマホとナオトの制止も聞かずに勝手な行動をしたせいであんな目にあったんだ。



…そうだな。そうだよ。やっぱり俺には向いていないんだ。


俺は「冒険者を辞める」とトシオに伝えようと顔をあげた瞬間頬を誰かに叩かれた。


「何考えてんのよ、バカユウト!」

「マホ…」


マホだった。


マホは目に涙を浮かべていた。


「何一人で背負い込もうとしているのよ、あんたの考え無しの行動なんて昔からでしょ。確かにそれで、危険な目にあったし嫌なこともあった。でも…それでもユウトに着いていったのはそれ以上に救われたことや、楽しかったことがあったからよ。だからユウトはそのままで良いのよ。ユウトは純粋でばか正直に自分がいいと思ったことをすればいいの。それをフォローするのが私とナオトの役目なんだから。ユウトは一人じゃない、私たちがついているでしょ」



そう言って、抱き締めてくるマホ。俺はいつの間にか涙を流していた。


「マホ…」

「何?」

「もう少し頑張れ」

「はっ倒すわよ!」


何をとは言わなかったが、長い付き合いの俺たちは言わなくても考えが伝わり、自然と笑顔が生まれた。


「メソメソしているユウトなんて似合わないよ、やっぱりあんたはそうやって馬鹿な方がお似合いよ」

「馬鹿って…失礼だなおい」

「本当のことでしょ」

「そうですね」

「だな」


そう言って、いつの間にか近くにいたチホとナオトが同意していた。

そう言って、その場が笑いに包まれた。






「お前らさ、俺のこと忘れていない?」


そう言いながらほったらかしにされたトシオは少しだけ拗ねたように呟いた。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




「トシオさん、俺はマホたちと冒険者を続けます」

「いいんだな?」

「はい!」


俺はまっすぐとトシオの目を見つめて、しっかりと返事を返した。

するとトシオは薄く笑みを浮かべてから立ち上がり、俺たちの頭を乱暴に撫でていった。


「うわっ、なにするんですか!?」

「何、良い顔つきになったから褒めてやってるんだよ。よし、これからキツいが頑張れるよな?」

「え?」

「何、すっとぼけたような顔をしているんだ。ここで出会ったのも何かの縁だ。俺が鍛えてやるって言ってるんだ」


そりゃあ、素頓狂な声も出すよ。だって…


「いや、トシオさんって俺たちと変わらないくらいの年齢だよね?」


そりゃあ、あの半端ない威圧を放てるのだから強いのは分かるけど、俺たちと同い年くらいの人にいきなりそう言われてもねぇ…ちょっと釈然としないというかなんというか。


「何、面白いこと言ってるんだ。俺は52歳だぞ」



「「「「……嘘だぁ!」」」」


俺たちはトシオの冗談を笑い飛ばした。




トシオの冗談に笑うと何故かキレられて、俺たちは仲良く頭にたんこぶ作って罰として『セイザ』というものをさせられた。

どう行ったものか知らなくて、トシオに教えてもらって座り、結構楽な罰かもと思いながらした。




30分後…


足が少し痺れてきた。でも、まだまだしないといけないらしい。




1時間後…


足の感覚が無くなってきた。でもまだまだ、やってないといけないらしい。

あ、マホとチホが泣き始めた。ナオトはさっきから呆然としたような顔をして目に光を宿していない。

帰ってこい、ナオト。



1時間30分後…


ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。俺たちが悪かったです。もうしません。許してください。

あ、ナオトが気絶した。そして、マホとチホも精神崩壊し始めている。




二時間後…


「セイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖いセイザ怖い」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


舐めていた。俺たちはセイザを舐めていた。

あれは駄目なやつだ。やってはいけない奴だ。あれを考えたのは邪神か何かに違いない。


この日以来、俺たちはトシオを絶対に怒らせないよう。固く…固く誓いあった。

それと、マホとチホ。ちょっと怖いからやめて。気持ちは凄い分かるけどさ。



トシオに鍛えてもらうことになった俺たちだが、その前にクエスト達成報告をギルドにすることにした。

その際、トシオが冒険者じゃないということを知り、驚いた。


だって聞いた話によるとあのグラノール森林を抜けて来たらしいからだ。

だから高名な冒険者だとばかり思っていたのに。



『グラノール森林』…危険度Bランクに指定されている。魔の領域だ。



それから俺たちは町につくまでの間、トシオと色んなことを話した。

俺たちの村の話や、トシオ自身の話なども聞いた。

でも、その時ちょっとしたトシオの仕草でマホとチホがビクッと肩を震わせて、少しトシオから距離を取ろうとしてトシオがちょっとだけ傷付いたような顔をしているのが印象的だった。


よっぽど、セイザがトラウマになっているらしいな。仕方がないとはいえ、ちょっとトシオが可哀想に思えた。

それにたぶん、あの威圧のせいもあると思うけど。俺でも良い人だとは分かるんだけどちょっと怖いし。




それから少しして、王都『グラフィス』に辿り着いた。







次も、明日の午後5時くらいに投稿します。

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