第08話 ルート1.「王都から出ていけ」と告げるなら
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「王都から出ていけ。二度と戻るな。」
勇者はエチゴーヤに命令する。
とりあえず王都から出すまでが命令だ。
政治や何やらはの後始末は、王に任せるとしよう。
どうしても、この商人が邪魔ならば城壁外に出せば、
王宮が暗殺者でも送って何とかするだろう。
この商人もボンクラでなければ、その程度の危険に備えて
護衛を雇うなりするだろう。
いずれにせよ、自分には関係ないことだ。
勇者は自省をやめて商人に命令する。
「それでは、1日以内に王都から退去することを命じる。」
商人に否やはない。頭を低くして了解の意思を示す。
こうして、悪徳商人エチゴーヤは王都から退去することになった。
その進退に拘らない恬淡とした態度は王都で評判となり、
娘夫婦が跡を継いだ木綿商店は、ますますの評判を得ることになった。
勇者は王宮内の噂で、何度かエチゴーヤ暗殺が試みられたとの話を聞いたが、
数度の失敗を経て、立ち消えになったようだった。
勇ましく糾弾しようとしたのに、うまく躱された形となった
勇者の糾弾だったが、当人はエチゴーヤにあまり悪感情を
抱くことはなかった。
かえって王命でエチゴーヤ本人の暗殺を匂わされた際には、
光の剣にかけて、そういった振る舞いは見逃すことはできない、
と主張したとの記録も残っている。
その後、勇者とエチゴーヤの人生が交差することは二度となかった。
現在、「勇者の糾弾」という言葉は「見当違いの空回り」を表す言葉として
古い慣用句の中に残るのみである・・・。
・・・Good END?