第06話 ルート1.「最初の約束通り、契約を結ぼう」と言うなら
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「やはり、最初の約束通り契約を結ぼう。」勇者は頷いた。
「さすが、勇者様!」エチゴーヤは満面の笑みを浮かべた。
金で片が付くなら安いものだ。勇者は正直なところ、殺しに倦んでいた。
王命はエチゴーヤの追放であるから、それが果たされるのであれば
それ以上は政治の問題である。
勇者は王に問題を丸投げにすることにした。
契約欄の金額を確かめた後、勇者はエチゴーヤに尋ねた。
「もし万が一、補償金が払われなかったらどうするのか?」
悪徳商人は、笑みを浮かべて続けた。
「その時は、ここの市民の方々が商人になってくださいます。
そして、税金の支払いを拒否することになるでしょうな。」
それに、と続けた。
「勇者様の光の剣は、己の正義を信じている時、その輝きと切れ味は無限に
達すると聞いております。ケチな商人との約束を違えて、その輝きを
損なうような真似をするとは思えません」
余計なことを知ってやがるな、と勇者は舌打ちしたくなった。
勇者の力は、勇者であり続けるからこそ発揮し続けられるのだ。
魔族との大戦中は兵士達を鼓舞してきた評判が、
思わぬところで足をすくわれた形だ。
勇者は任務を果たし、城に戻ると王に報告した。
「エチゴーヤは王都から追放した。ついては、奴と約束した補償金を払ってもらいたい。」
でっぷりと太った王は濁った眼で勇者に目を向けると、
財務大臣と協議するよう指示をした。
こいつも、大戦中は、もう少しシャッキリしてたもんだがな、と
勇者は哀しく思う。
平和はブタを肥え太らせる。
勇者から契約書を受け取った財務大臣は、悲鳴をあげる
「こ、こんな金額は王宮予算のどこにもありませんぞ!」
勇者は取り合わない。
「そうか、何とかしろ。それがお前たちの仕事だ。」
そう言い捨てると、後ろも見ずに退出した。
2週間程後に、勇者は改めて王宮に呼び出された。
それにしても衛兵が多い。何か事件があったのか。
謁見の間には、王と財務大臣、それに見慣れぬ貴族の姿があった。
財務大臣は勇者に詰問を始めた。
「今回の補償金は、支払わないことになった。
理由は、金額が過大であること。それに勇者に着服の容疑がかかっている。
補償金額を膨らませて、懐に入れようとは・・・勇者が聞いてあきれる。」
勇者は、一瞬の自失の後、決断を迫られる。
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ルート1.「バカな!陰謀だ!」と叫ぶなら ⇒ 10話へ
ルート2.「補償金の支払いは自分がする」と言うなら ⇒ 11話へ
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