第05話 ルート2.「一度、話を聞いてみるか」と剣を納める
この小説には選択肢があります。
勇者は、血ののぼった頭を冷ますように振り払ったあと、剣を納めた。
「一度、話を聞いてみるとしようか。」
エチゴーヤは汗を拭きながら、勇者に話しかける。
比喩ではなく、自らの命が掛かっていることを理解したからだ。
目の前の勇者は血に飢えている。魔物と戦い過ぎて、命が軽く見えているのだ。
商人は必死に弁明した。
「私共は、王命に逆らおうとは思っておりません。ただ、円満に退去するための猶予と補償を求めているのでございます。
私は確かに前商務大臣様へ賄賂を贈りました。しかし、それは多かれ少なかれ
全ての大きな商会は行っていることでございます。
商務大臣は王都内の商売に対する許認可を握っているのです。
許可なくば店を出すこともできず、荷物の搬入もできません。
商店は生き物でございます。黄金の卵を産み続ける鵞鳥です。
その商店を縊り殺すような真似をすれば王国にとっても損害は大きい
のではないですか。
それに、お店は多くのお客様と取引がございます。中には注文を受けて、商品を届けていないお客様もございますし、遠方のお客様から代金を先払いで受け取ったものもございます。
それらの注文や代金を、委細構わず、即時退去となれば、多くの方にご迷惑が
かかります。
その損害は、無実の民への罰となりませんか。
罰の対象は私一人だけではないのですか。」
エチゴーヤの情理を尽くした弁明は、勇者だけでなく周囲の市民の胸をうった。
勇者は、まだ、うまく誤魔化されたような気がしている。
しかし金額によっては補償もやむを得ないか、という方向に気持ちが
傾きつつある。
あるいは、悪徳商人を追放するのも、一つの解決方法かもしれない。
そうすれば周囲への被害は最小限で済む。
勇者は思う。どちらにすべきか、と。
【読者様へ。以降、話の展開を選ぶ選択肢があります。
選択肢を読んだら目次へ戻り、選択先へ移動してください。】
ルート1「ある程度の金額は補償しよう。」と告げるなら ⇒ 7話へ
ルート2「王都からでていけ」と告げるなら ⇒ 8話へ
どの選択肢をとるか決めましたか?
選択肢への感想などもいただけると嬉しいです。