第03話 ルート3.「金銭のことは自分にはわからない」と答える
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「金銭のことは、自分にはわからない。命令されているのは、
王都からお前を追放することだけだ。」異世界の勇者は答える。
「なるほど、王国の命令は私の王都追放ということですか。」
エチゴーヤは確認する。
「そうだ。」勇者は訝しく思いつつ再確認する。
「それでは、私は今日限りで隠居し、娘と娘婿に店の経営を任せることとします。
王都近郊の街に屋敷を買って、そこで暮らすとしますよ。」
「えっ」勇者は困惑する。
勇者の想定では、エチゴーヤが王命に抵抗し、取り巻きの兵士たちを呼びよせて
武力で抵抗する。それを、衆人の中で光の剣を振りかざし、悪の手先をバッタ
バッタと切り捨てるところまでがシナリオだったのに。
勇者の振りかざす光の剣は、端的なところ、悪の血に飢えていたのだ。
この振り上げた剣を、どこに降ろすべきか。
「それでは、エチゴーヤは王都から素直に退去するというのか。」
「はい。店を娘たちに譲って退去します。」悪徳商人は素直に頭を下げる。
しかし、王都近郊では店に逐一経営の指示をすることもできるだろう。
実質、無罪ということになるではないか。
そう指摘すると
「私も人の親。よんどころない事情で店を譲ることになったからと言って、
娘の境遇を知りたいと思うのは、人情として当然のことではありませんか。
まさか、勇者様は親が娘を心配するのはいけないというのですか。」
なぜか勇者が改心しようとする人間を、人情なく責め立てる悪人のようではないか。
周囲の市民たちの視線も勇者に冷たい。
エチゴーヤは王都から出ていく、それでいいのではないか。
だが、この腹黒い笑顔を張り付けた悪徳商人が悪事を企んでいないことがあろうか。
王都から追放、ということは王都で商業活動ができなくなるよう遠方に追放する、
ということではないのか。
エチゴーヤ一族が商店を握り続ける限り、王命を果たすことにならないのではないか。
そこで勇者は決断する。
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ルート1「王都から出ていけ」と告げるなら ⇒8話へ
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