第09話 ルート2.「王国から一族まとめて出ていけ」と告げるなら
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「お前は何か勘違いしている、エチゴーヤよ。」勇者は厳かに言い渡す。
「王命は、エチゴーヤ一族の影響力を王都から排除する、との意味だ。
つまり、お前と一族は、この王都から身一つで出ていなかければならない。」
「財産は王室が一時管理した後に、しかるべき手順に従って売却される
ことになるだろう。」
「売却代金はなるべく、お前に渡るようにしようと思うが、
新しい商務大臣が決めることであるから、自分にはわからん。」
エチゴーヤは歯を食いしばって屈辱に耐える。
この店は自分が30年の時間と、血の滲むような努力と、
何度も鉄火場を潜り抜けた末に得た財産だ。
断じて、魔族との戦争の間も王宮の奥でヌクヌクと宮廷ゴッコや政治ゴッコに
現を抜かしてきた豚連中のものではない。
それを二束三文の代金で権力を使って奪おうとしている・・・!!
エチゴーヤは、周囲の有産市民達を仲間につけるべく、
大きく身振りを交えてさらなる弁明を始めた。
「勇者様、私どもを無一文で乞食のように追い出すなど・・・!
王権の横暴です!
我々のような良民の私有財産を保護することは、
王国の拠って立つ基盤ではありませんか・・・!」
しかし、エチゴーヤは勇者という存在を勘違いしていた。
勇者の持つ光の剣は、普遍的正義に従って切れ味を無限にする剣ではない。
勇者自身が信じる正義に従って切れ味を増す剣なのだ。
つまり、勇者は王命に従わない悪徳商人に苛立ちを感じ始めていたし、
周囲の市民を扇動して王宮への反対運動を始める危険人物に
映っている悪徳商人を光の剣で切り捨てることのできない理由は、
どこにもないのだった。
自分の命が、今にも失われる瀬戸際にあるのも気が付かず、
エチゴーヤは一世一代の演説を続けている。
周囲の市民たちも、次第に演説に頷く回数が増えている。
時には拍手をする者さえいる。
この男、やはり、この場で斬っておくべきだろうか。
それとも、ある程度はエチゴーヤの言い分を聞くべきだろうか
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この場で切り捨てるなら ⇒ 4話へ
ある程度は商人の言うことを聞き続けるなら ⇒ 14話へ
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