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拳銃使いのデッドナイト  作者: 夜風リク
10/15

ラグナ・イスティア

他愛もない雑談を挟みながら、俺と少女は、洞窟の中を更に進み続けていた。出口が見える気配は今のところない。もしこのまま出口が見つからなかったら……そんなことは考えたくもない。

 俺は邪魔な思考を打ち払うように、強く頭を振った。

 すると発見した。


 それは綺麗な鉱物だった。

 壁際に、水晶のように生えている。その数はかなり多い。簡単には、数え切れないほどだった。

 種類は2種類。


 中に、燃え上がる炎を閉じこめたような鉱物と、中に、吹き荒れる吹雪を閉じ込めたような鉱物だ。どちらも猛々しくて、不思議なオーラを放っている。珍しいものなのだろうか?

 少なくとも、俺はこんな鉱物を見たことがない。ここに来て、初めて目に留めた。

 気になったので、少女に聞いてみることにした。


「なあ」


「……なに?」


「ここに今生えている鉱物って、どんな鉱物なんだ?」


「これ……?」


 少女はその鉱物を示してみせる。

それだ、と俺は頷いた。「珍しいものだったりするのか?」

 少女はかぶりを振った。


「……ちがう、ここに生えている鉱物は、珍しいものでも、希少価値のある物でもない。割とどこにでもある鉱物。探そうと思えば、すぐに見つかる」


「なるほど……」

 希少価値のあるものだったりしたら、記念に持ち帰えろうと思ったのだが。無価値の鉱物ならば、やめておこう。ただ無闇に荷物が増えるだけだ。道具などを持っていたりして、俺の荷はただでさえ重いのである。リュティノスFEは、一丁だけで200グラムほどの重量。レッドファイに限っては、なんと600グラムの重量がある。ハンドガンの中では、ぶっちぎりの一番だ。


 最初の頃は持つのさえままならなかったのに、今では発砲できるようまでになった。自分でも、かなり努力したと思う。

 などとしんみり回顧しながら、俺は平常な声で尋ねた。


「ちなみにこの鉱物、中で渦巻いている炎とか吹雪とかは、一体なんなんだ?」


 持ち帰るのはやめにしておいたが、今俺が言ったようなことは、ちょっとだけ知りたかった。

 少女は一瞬、思い出すような表情をして、


「……中で渦巻いているのは確か、魔力の残滓とかだったと思う」



「魔力の残滓?」


「……そう、ちなみにこの鉱物は、〈ラグナ・イスティア〉というのだけれど、〈ラグナ・イスティア〉は、魔力の残滓を取り込んだ石だと言われている。だから〈ラグナ・イスティア〉は、こういう風にできる。――まず、1つの石がありました」


「うん」


 俺は相槌を打っておく。なんとなく、そうしないといけないような気がしたからだ。

 少女は俺に向かって、ありがとうとでも言う風に微笑んだあと言葉を続けた。


「……で、その罪も無いただの石が、なんの因果か、ある魔法の巻き沿いをくらいました。だけど幸運なことに、魔法は石を直撃せず、掠っただけに留まりました。それでなんとか石は、生き残ることができました。そうすると、〈ラグナ・イスティ〉ができるのです」


「つまり、〈ラグナ・イスティア〉は、魔法が当たったけど、それでも破壊されなかった石の成れ果てということか?」


「……そういうこと。理解が早くて助かる」


「それは褒めてるのか?」


「……もちろん」


「そうか、ならありがとう」


 俺はお礼を言った。

 洞窟の道はまだまだ続いている。

 コウモリなどはもういないが時折、上の天井からは、水滴が落ちてくる。顔に当たれば当然冷たい。



 あれからも道を歩き続けた。まさしく、永遠にも思えるような道のりだった。なんせ、道がアスレッチクのようになっていたのである。ただアスレチックと言っても、それは安全なアスレチックではない。

 人の手が一切施されていない、危険なアスレッチクである。

 正真正銘の天然ものだ。

 


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