散歩、抱っこ
地底を流れる川を沿って歩く二人。首輪で繋がれ、暇そうな表情をしているケンとは裏腹に、ヤマメは上機嫌だ。
ヤマメ「楽しいね~♪」
ケン「俺ぁちぃぃぃっとも楽しくない!手首蒸れて痒いし、首輪が喉に当たって痛いし、歩き難い!」
ヤマメ「わがまま言わないでよ。これしか貴方を守る方法は無いんだから…」
ケン「もっといい方法があるのにな~」
ヤマメ「それは何?」
ケン「手錠と首輪外したら教えてあげるよ」
ヤマメ「それはダメ」
ケン「ヤマメを抱きながら俺が歩けば、ヤマメの体温を感じられるし、俺も幸せで一石二鳥なのにな~」
ヤマメ「…」
誰に言うでもなく、ワザとらしく呟いた言葉をヤマメは聞き逃していなかった。実際、幸せなことは確かだ。学校じゃ同級生の女子は全部不良グループだったりサッカー部や野球部とばっかりつるんで、俺が入り込む隙なんて無かった。でも女性とやってみたいことはたくさんある。その内の一つが今叶おうとしているのだ。
ケン「どう?」
ヤマメ「…やってみるわ」
ケン「やった。じゃあ、これ外してくれ」
ヤマメ「お姫様だっこなら首輪と手錠をしててもできるでしょ?」
ケン「せめて、手錠だけでも…。じゃないとどうやって背中と脚持つんだ…」
ヤマメ「そういえばそうね。うっかりしてたわ」
手錠のカギを取り出し、ガチャリと外され、地面に落ちる手錠を踏みつける自分。
ケン「コイツのせいで手首が痒くてしょうがない」
ボリボリと手首をかく自分を、待ち遠しそうに妖艶な笑みで見つめるヤマメ。
ヤマメ「ねぇ、早く…」
ケン「分かってるわかってる。お~痒い痒い」
かき続けたせいで手首が少し赤くなってしまったが、そんなことは気にしない。ヤマメの脚と背中に手を回し、ヒョイっと持ち上げる。女性とはいえ、軽すぎる気もしたがそっちの方が楽だ。
ヤマメ「重く…ない?」
ケン「全然。軽いよ」
ヤマメ「ケン…嬉しいわ。こうやっていつか、幻想郷中を巡って…」
ケン「それは俺の腕が壊れそうだからヤダ」
横を流れる川の流れは緩やかで、深くなければ水遊びができるくらいだ。そんなことを考えていると、ヤマメがギュッと自分の首に手を回して抱き着いてくる。
ヤマメ「ふふふ…」
ケン「?」
ヤマメ「ケンが私を抱いてくれてる…それをその内、布団でも」
ケン「俺本番に興味はないんだぜ。すること自体に興味ない。ただ、女性を愛でたいだけだ」
ヤマメ「そう…。残念」
シュンと頭を下げるが、両手は自分の後ろに回したままだ。
どれくらい歩いたんだろう。30分くらいだろうか。突然ヤマメが自分から降りた。
ヤマメ「ケン…ん」
ヤマメの突然のキスに驚く。が、すぐに平常心を保つ。自分の背中を抱き寄せて、深いキスを数秒に渡ってし続ける。
ケン(嫌いではないけど…毎回これ息苦しいんだよなぁ…)
ヤマメ(ケンとキスしてる!ケンとキスしてる!ケンとキスしてる!嬉しい、嬉しい!)
口同士を離し、息を整える。
ヤマメ「…そろそろ帰りましょう?続きは家の中ででも…いいや、今ここでも」
ケン「そういうのはしないって言っただろ?ここでも、家の中でも」
ヤマメ「興味ないってだけで、嫌いじゃないんでしょ?」
ケン「興味もないししたいとも思わない。なんでだろうね?男性としておかしいと自分でも思ってる。ヤマメ…妖怪とだからかな?」
ヤマメ「キスやくすぐりはしたくせに…」
ケン「それは俺がしたかったからだ」
ヤマメ「変わってるわね」
ヤマメにそういわれるが、変える気もないので特に反応はしない。
その後、ヤマメと手を繋いで家に帰ることにした。
そろそろ、外は夕方か…。
散歩中でもキスしたり抱き合ったり…羨ましい二人です。自分にもこんな彼女とかが居たらな~・・・。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」