ひゃあん
食事を終えた自分とヤマメ。何故かヤマメは自分を抱き寄せたままジッとして動かない。
ケン「…なにしてるの?」
ヤマメ「貴方の温もりを…」
ケン「布団の温もりの方がいいんじゃ」
ヤマメ「貴方じゃなきゃ嫌」
ケン「…」
ヤマメ「うふふ…」
自分を抱き寄せるヤマメの背中に手を回して自分もヤマメを抱いてみる。
ケン「10~」
ヒッソリ呟いてみると、ヤマメはすぐに離れた。惜しい。
ヤマメ「それは止めて、いくらあなたでも」
ケン「チッ」
ヤマメ「…どうしてもっていうなら、また…くすぐっても」
ケン「嫌がってるのをするのが良いんじゃないか。そんな受け入れられたらする気が失せちゃうよ」
ヤマメ「そんなものなの…?」
ケン「そんなものなの」
くすぐられないと分かったヤマメは、すぐにまた自分に抱き着く。
ヤマメ「はぁ…貴方の温もり、癖になるわ」
ケン「俺は寝てる時の感覚が好きだよ」
ヤマメ「釣れないこと言わないでよ、変に私を怒らせたら怖いわよ?ほら」
ヤマメがそう言うと、ヤマメのスカートの中から大きな4本の蜘蛛の脚が出てきて、自分を捕まえる。
ヤマメ「私は蜘蛛の妖怪よ、元の姿はいろんな人から恐れられてたんだから」
ケン「…蜘蛛の脚か」
ヤマメ「こうすれば、絶対に離れられないでしょ?」
4本の脚と二本の腕が、自分をギュッと抱きしめる。少し苦しい気もするが、可愛い子に抱き着かれるのは嫌いじゃない。でも、正直に言ってしまえば暇だ。
ケン「何かすることない?」
ヤマメ「ジッとこうしてれば、それだけでいいわ」
ケン「そうか…。あ、一個だけしてみたいことあった」
ヤマメ「何?」
ケン「脚、舐めてみてもいいか?」
ヤマメ「何を突然…良いけど。随分変わった趣味を持ってるのね」
ケン「人外と触れ合うのも悪くない。では…」
自分を掴んでいる脚の一本を掴んで、銜えて舐めてみる。
ヤマメ「ひゃあんっ!」
ケン「可愛い声出たね」
ヤマメ「思った以上に慣れない感覚だった…」
口元を押さえて声を出さないようにするヤマメだったが、自分が脚を舐める度に息が漏れそうになり、顔も赤くなっていく。味はしないが、何か不思議な風味がする。味はしないのに。
ケン「満足」
ヤマメ「そ、そう…」
ケン「ありがとうな。ヤマメ」
ヤマメ「ケンにそういってもらえれば嬉しいわ。もっと舐めてもいいんだけど…」
ケン「いや、もういいや」
ヤマメ「そう…」
どこか、物寂しげな表情をするヤマメ。それを気にせず、部屋に飾ってある時計を見つめる。
ケン「今2時くらいだから…散歩でもしたいんだけど。ジッとしてるのも体に悪いし」
ヤマメ「そうね、さすがに閉じ込めっぱなしなのも貴方が可哀想よね。じゃあ行きましょうか」
借家を出たはいいが、何故自分に首輪と手錠がされているんだろう。今に始まったことじゃないけれど、毎回この拘束は疲れる。
ケン「なぁ、これ外してくれない?歩き難いし手首に汗が溜まって気持ち悪いんだけど、もうちょっとサイズの大きい手錠なかったの?なんでこんなギリギリのサイズなの?てか、手錠の型古くない?」
警察が持っているような奴ではなく、木の板に穴の開いた手錠。その穴に手を入れて、カギをかけられているのだ。
ヤマメ「他の奴らに取られないようによ。なるべく人通りの無い場所を歩きましょう」
ケン「は~い」
首輪に繋がれた頑丈なヤマメの糸。首輪と手錠にも糸が繋がれていて、逃げ出しても動き辛そうだ。随分念入りにしているが、自分を好いてくれる女性がほかに居るんだろうか?
ケン「…なぁ、これ楽しいか?」
ヤマメ「楽しいよ?ケンと居る時はどんな時でも」
予想通りの反応、別の質問もしてみよう。
ケン「大体、顔を褒めてくれるのは嬉しかったんだけれど…毒が効かないってのもなんか信用ならないな。本当は毒なんて一切撒いてないけど、俺を納得させるために嘘ついてるとか…」
ヤマメ「どうしたら信じてくれるかしら?」
ケン「ん~。人を殺すのはダメだし、かと言って妖怪や他の動物だと、その種類にしか効かない毒を使ってる可能性もある…難しいね」
ヤマメ「…考えておくわ。どうすれば納得してくれるかを…」
今回はペロペロでした。なんとマニアックな主人公でしょうか。人外相手に考えることじゃないですね。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」