罰ゲーム
時刻は夕方。夕食を食べる前に、二人はテーブルを挟んでにらみ合う。
ヤマメ「最初は…」
ヤマメがポツリとつぶやく、それを聞いて、お互い拳に力を入れてその拳を頭の高さまで上げる。今にも殴り合いに発展しそうな気迫が部屋中に漂い、そして二人は叫んだ。
ヤマメ・ケン「グー!ジャンケンホイ!」
振り下される二人の手、ケンはチョキ、ヤマメはパーを出している。ケンの勝利で終わったジャンケン勝負だが、ただのジャンケン勝負ではなかった。
そう…罰ゲーム付きのジャンケンである。
ヤマメ「う…負けた」
ケン「ふぃぃぃやっほぅぅぅぅぅ!!」
ハイテンションで、何故かドジョウ掬いを踊りながら喜びを表現するケンは、その場でクルクルと回り、ピタリと止まってヤマメを指差す。勝ったことがよほどうれしかったのだろう。
ケン「さぁ!約束は守ってもらうぜ!?今夜寝るまで、これを付けてもらう!」
テーブルの下からケンが取り出したのは、メイド服と猫耳、そして猫の尻尾のアクセサリーと首輪。
ヤマメ「本当に…着るの?」
ケン「ああ、もちろん、語尾には「にゃあ」とかつけてもらう」
ヤマメ「うぅ…分かったわ」
そう言って目の前で服を脱いで着替え始めるヤマメをじっと見つめる。
ケン「下着は…黒か」
ヤマメ「何見てるのよ…。ケンなら見られてもいいけど…なんなら、この奥も…」
そう言って黒のシルクのパンツに指を掛けるが、自分は手を前に出して制止させる。
ケン「そういうのは興味無い。俺は、コスプレして、にゃあにゃあ言ってるヤマメが見てみたい!早く!下着脱ぐ前に着替えてほらほら!」
ヤマメ「やっぱりアナタ変わってるわ…」
ケン「変わり者だからこんな場所にいるのかもね」
着替えたヤマメは、驚くほど似合っている。白と黒のヒラヒラのメイド服は煌めき、猫耳を付けて恥ずかしがるヤマメの表情は、全世界の男を虜にできる程の力を持っていると断言できる程可愛かった。
ヤマメ「恥ずかしい…スカートも短いし…」
ケン「にゃんが無いぞ。にゃんが」
ヤマメ「は…恥ずかしい…にゃん」
ケン「ひぃぃぃぃやっふぅぅぅぅぅ!」
ゴールさせたサッカー選手のように膝で体をささえ、両腕でガッツポーズをとって喜ぶ自分を見て、どこか嬉しそうなヤマメは言う。
ヤマメ「そ、そんなに嬉しいにゃん?だったら、ずっとこのままで…」
ケン「分かっていないな。こういうのはタマにするから良いんじゃないか」
ヤマメ「そうなのかにゃん?」
ケン「ああ!やっぱり可愛い!超可愛い!たまらん!実家の飼い猫が恋しい!」
そう言って立ち上がりながらヤマメに向かって走り、隣の部屋に敷いてある布団にヤマメを押し倒す。
ケン「ちょっと…しばらくこうさせてくれ…」
そう言ってヤマメを抱き寄せたままヤマメの胸に頬ずりする。
ヤマメ「…ふふ。甘えん坊さんにゃ…ケンは…」
ケン「あぁ、そうだ。今は甘えさせてくれ…」
ヤマメの匂いとコスプレを堪能していると、ヤマメは自分の頭を撫でながら、背中をトン、トン、と一定のゆっくりとしたリズムで叩く。どこかで感じた、心地良い感覚…どんどん睡魔とヤマメの温かさに包まれていく。あぁ思い出した。母親にあやしてもらっている時にされてたんだ…。
ヤマメ「ケン…可愛いわ。私の愛しい人…ずっと離さない…」
妖艶な笑みの中に、子蜘蛛を可愛がるような優しさが見え隠れする。それにも気づかずケンは眠りこけている。
布団を上から被り、一つの布団を二人で温める。愛しい時間がゆっくりと、恋しい時間はゆっくりと過ぎていく…。
可愛いにゃん。個人事だけど、私生活が忙しいにゃん。こんな妄想染みたことを書いてるのは高校生にゃん。日頃のストレスを糧にして書きなぐっています。
ヤンデレっていいですよね。浮気するような女性より、一途な人の方が好きです。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」