愛した理由
借家に戻った二人。ヤマメは冷蔵庫を開けて、ちょっぴり驚いている。気になって何なのか聞いてみると、どうやら料理に使う食材が無いとのことで…。
ヤマメ「ついて来て頂戴」
ケン「嫌だ。俺はここで腹筋でもしてる」
ヤマメ「そんな事言わずに…ねぇ」
ヤマメが色っぽい声を出しながら自分の頬を手で撫でるが、それを振り払う。
ケン「やめい。くすぐったいを通り越して痒い。俺は肌弱いんだ」
ヤマメ「私がこんなに頼んでもついて来てくれないなん…悲しいわ」
ケン「まだそんなに頼まれてないな…」
ヨヨヨ…と悲しむヤマメをよそに腹筋に勤しんでいると、それに不満を抱いたヤマメのボディプレスが自分の腹筋を襲った。
ケン「げふぅ!?」
ヤマメ「ついて来てよ!アナタと一緒じゃなきゃ嫌だ!ご飯食べられないよ?!アナタの好きな肉も!」
ケン「うぅ…そこまで言うなら…しょうがない」
ヤマメ「うふふ。決まりね」
ケン「とりあえず、退いてくれるか?」
ヤマメ「しばらくこのまま…このままで…」
ケン「…」
タダならぬ気配を感じてケンから離れるヤマメを見て、ケンは舌打ちをする。
ヤマメ「くすぐる気だったわね…?」
ケン「惜しかった」
ヤマメ「隙あらばするのね…」
ケン「もちろん」
両手をワキワキと奇妙に動かしながらニヤつく。現実世界でやってたら、同級生から100%キモがられる動きだが、ヤマメはそんなひどいことは言わない。
ヤマメ「…行きましょうか」
落ち着きを取り戻したヤマメは籠を持って立ち上がる。
借家を出て八百屋や肉屋を周り、食材をゲットしていく。が、そんな自分達を店の妖怪達は不思議なものを見る目で見ている。
ヤマメ「なんで皆あんな目で見るのかしら…失礼じゃない?」
ケン「…。たぶん、俺がずっとヤマメを抱えて品物注文してたからじゃないか」
未だにケンにお姫様抱っこをされているヤマメは、ケンの首に両手を回して抱き着いている。もうそれが不思議にも思わなくなってしまった自分は、外の世界じゃ変な奴なんだろう。
ヤマメ「うふふ。やっぱりケンは優しいわ」
ケン「?」
ヤマメ「私の愛に答えてくれるもの」
ケン「ヤマメは可愛いからな」
ヤマメ「じゃあ、私が可愛くなかったら…アナタは私を好きにならなかった?」
ケン「…かもなぁ。まぁ、顔・性格、それと自分を受けて入れてくれるか。だからね」
ヤマメ「以外と自己中なのね」
ケン「まぁね。だから、自分が思う条件を全部そろえてるヤマメだから、自分も愛情を注げるってもんよ」
ヤマメ「それが、妖怪でも?」
ケン「おう」
ヤマメ「うふふ…ありがとう」
より一層、ギュッと抱き着くヤマメに微笑み返し、帰路につく。ふと、思ったのだが、ヤマメが持ってるお金って一体どこから出てきているのだろうか?仕事をしている姿は見たことが無い。だってずっと一緒にいるから。
ケン「ヤマメが持ってるお金って、どこから出てるの?」
ヤマメ「ヒ・ミ・ツ♪ いくらアナタでも教えられないわ」
ケン「ふーん。まあいいか。よほど変なお金じゃなきゃね」
ヤマメ「変なお金かもよ?」
ケン「分からないよ。自分には」
今回はパッとしないお話でした。書いてて腑に落ちないです。次回からはもっと自分の欲望を吐き出してみようかな、と思っています。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」