f:フォルテ
※ヤンデレ警報
昔から大好きだったうた。
マザーグースの一篇のうた。
好きで好きで大好きだった隣に住むお姉さんが教えてくれた、唄。
その可愛らしい唇から溢れる唄に思わず嫉妬してしまうくらい大好きな、大好きだったお姉さんは、お嫁へ行ってしまった。
――お姉さん。どこへ行くの?
――お姉さん。置いて行かないで。
――お姉さん。僕を一人にしないで。
――お姉さん。ずっと、ずっと一緒に居てくれるって言ったじゃないか。
――お姉さんは、嘘つくの?
――オネェサンノ、ウソツキ。
――モウ、ウマエナンカ、イラナイ。
でも僕はそれからずっとずっとお姉さんのことを考えていた。
どうしたらお姉さんが帰ってくるのかなって。
そしたら僕の中の“ボク”が僕に言ったんだ。
『お姉さんが帰ってくるのは……』
うん。
きちんと守ったよ。
お姉さんが帰ってきてくれるんだから。
お姉さんはそれから程なくして帰ってきた。
お姉さんはますます綺麗になっていて、僕はすぐにまたお姉さんを好きになった。
お姉さんにちゃんと「ごめんね」って言ってから初めてお姉さんとキスをした。
あの桃色の唇は、白く、こわばっていて凄く冷たかったけれど。
お嫁に行くときに着ていたあの忌々しい白無垢ではなく、輝かんばかりの死装束をまとった姿で帰ってきたお姉さんに僕は、こう言ったんだ。
「ずっとずっと、一緒だね」って。
でも、僕とお姉さんが仲良くしているのを大人たちは止めようとする。
何で?
僕はお姉さんが好きなんだよ。
何で?
お姉さんと一緒にいたいだけなんだ。
何で?
お姉さんを閉じ込めようとするの。
何で?
僕はただ……
――オネェサント、イッショニイタイダケ……ナノニ。
僕の中の“ボク”がまた囁いた。
……うん。
分かった。
……怖ッ!!
と思ってしまうのは私だけでしょうか……