mf:メゾフォルテ
すいすい進みます。
……やっぱり。
そうか、これで分かった。
決して繋がることの無かった数々の謎が。
名無しの通報者。
恐怖の楽譜。
現場に在った不自然な違和感。
なぜ、この件に関わることを咎めるのか。
……繋がった。
繋がったけど、何で……あの人が。
どうして、こんな事になっちまったんだろう?
……考えても、分からない。
でも、俺たち刑事の仕事は犯人を捕まえること。
哀れな被害者をもう、これ以上出さないこと。
犯人を、もうこれ以上放っておけない。
と言っても休憩室と資料室は大分離れている。
今すぐに、先輩に電話を――
誰もいないような静まり返った休憩室に携帯のコール音が虚しく響いていく。
――プルルルル……プルルルル……ガチャ。
――こちらの電話は、現在電源が入っていないか、電波の届かない所に御座います。
――ご用件の方はピーという発信音の後に……
繋がったのかと思いきや、数回のコール音の後に続いたのは留守番電話の為の機械音声だった。
「電源入れとけって、自分が言ってんだろ!」
イライラして電話を切り、同僚の東に電話を掛けた。
東とは同期で入って仲が良く、よく一緒に飲みに行ったりすることが多い。
頭の回転が早いあいつならきっと理解してくれるはずだ。
チラと時計を見やれば時刻は2:19。
まぁ、起きているかどうかが問題なのだが……
『んだよ! っせーな!!
こちとら、寝てねーんだよ!
って、ん? さ、桜木? てめぇ、こんな時間に……』
……やっぱり、起きてた。
「ハハッ。先輩が寝たんで、さっさと調べようとさー」
『……てめぇ……いつかぶっ殺す!!』
「そんなことよりさぁ、11年前の事件について今すぐに調べてくれない?」
『! “あの事件”何か分かったのか?』
「今は、まだ詳しく説明出来ねぇ。とにかく調べて連絡くれ」
『分かった。今度の飲み、お前の奢りだからな。一番高いのがぶ飲みしてやるからな、覚悟しとけよ』
「……アーアーアー、聞こえ…」
ブツッ!
――ツ―ツ―。
「……ふーっ……」
最後の否定の言葉の前に電話を切られたのは正直言ってショックだ。
……しゃーねー。あいつの本命の北沢さんとの合コンをセッティングしてやろう。
いい友達を持って本当に幸せだな、東!!
……と、まぁおふざけは終わりにして、後は東の報告を待つだけだ。
……目が疲れてきたし。少し休むとするか。
自販機でコーヒーを買っている桜木のわずか15歩後ろに、不穏な影が近づいていた。