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after story~名前を捨てた勇者伝  作者: むらまき雀
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5.ラクサと戦闘 後編

 出だしは行方不明の女の子視点です。

 その日、リッテは朝食を食べると、家の手伝いもそこそこに、いつも通り近所の遊び相手のトキとルーイを連れて遊びに出かけた。

 今日は村の裏手にある森でかくれんぼとサバイバルごっこをする予定だった。のどかな田舎道を三人で昨日の悪戯について話しながら歩く。


「あれはなかなか傑作だったね」

リッテが言った。

「だな。ロッソの爺さん全然気づかないで、一日あのままだったし」

ルーイはクククッと笑った。

 

 リッテの言う傑作とは、村一番のひねくれ者ロッソ爺さんのさみしい禿げ頭にキリクの花の冠(村の祭りの時、娘たちがそれをしていると恋人募集中の意味になる)を載せるというものだった。悪戯は見事成功。三人は午後心地よく惰眠をむさぼるロッソ爺さんの頭に花を載せた。その後何事もなく日常生活を送る彼の様子を見て、三人が陰で笑い転げたことは言うまでもない。

 結局夜鏡を見て心底驚いたのだろう、顔を真っ赤にしたロッソ爺さんが、リッテの家に乗り込んできて三人はボロクソに怒られたのである。


「こってり母さんたちに怒られたけどね」

トキは散々叩かれたお尻をさすった。

「まだひりひりするよ。僕は当分いたづらはご遠慮申し上げたいな」


 そんなこんなで、次の悪戯はあーでもないこーでもないと言い合いながら、楽しく過ごしていた三人は今現在、腰にナイフを下げたちょっと弱そうな少年に背中でかばわれながら、母親たちに口を酸っぱくして言われていた「いつか天罰が下る」という言葉を思い出し、心底後悔しているのであった。

 目の前には実に愉快と言わんばかりの表情の魔族。見るのは初めてだが、今にも襲いかかって気そうなオーラをひしひしと感じる。

 

 三人は恐怖でいつもは無駄に働く頭を鈍らせながら心の中で誓った。

 ここから生きて帰れたらロッソ爺さんに土下座して謝ろう、と。





「ちょうどムシャクシャしていたところだ、貴様らまとめていたぶってやる!!」 

 

 ラクサは焦っていた。

まさか本当にこういう状況に陥るとは、ついてない。

震える三人を背中にかばいながら考える。この状況をいかにして突破するか。

 

 第一に、あの魔族に勝つ、は論外。絶対無理!

 第二に、戦いながら逃げる機会をうかがう。普通の冒険者ならそうするだろうが、主戦力は見習い冒険者のラクサだ。相手は空を飛ぶ上に魔法の上級者。これも無理。

 第三に、ただ逃げる。戦えないのなら逃げるのみ。それにここは深い森だ。逃げ込めば空を飛ぶやつからこちらの姿は見えまい。その上そこから魔法をぶっ放せば、その騒ぎを聞きつけて必ず師匠が助けに来てくれるはずだ。

 

 師匠、今どこにいるのだろうか。無理をしない、という言いつけを絶賛ぶった切り中のラクサ。村の魔物はどうなっただろう。ここ一日ですっかりなじんだあの華奢な背中を懐かしく思った。


 ラクサは気付かれないように鞄を探る。そしてつるっとした丸いものに手が触れるとそれを握りしめて相手の様子をうかがう。勝機は一瞬。相手の意識がこちらから離れた瞬間……、今だ!


 敵が魔法を放つ瞬間、ラクサは握りしめたものを力いっぱい敵へ投げつけた。ラクサ渾身のストレート球。見事、ストライクだ!

 辺りがまぶしい光に包まれる。ラクサが投げつけたもの、それは手製の閃光弾だった。手先の器用さを手持無沙汰に、集落にいた時たくさん作っておいたのが役に立った。


「うわっ!!なんだ!!眩しい!!」


 敵はあまりの眩しさに思わず目を覆う。魔族は強い光が苦手なはずだ。よし、今の内に。


「皆走って!!」

ラクサの陰で光の影響を受けなかった三人を急かし、森の中へ逃げ込む。

 第一段階は成功だ。あとは死なないことを祈って師匠を信じるしかない。

 

 後ろのほうから、すごい爆音と魔物の酒部声が聞こえてくる。


「逃げるがいい!どこまでも追いかけて貴様ら全員肉塊にしてくれるっ!!」


 すさまじい殺気に思わず足が止まりかける。

しかしここで捕まるわけにはいかない。すくむ身に鞭打って4人は木の間を縫って走る。


「とにかく逃げよう!お師匠様を信じて」







「どうした。もうかくれんぼは終わりか?」

ラクサは一人追い詰められていた。


 あれからどれ位たったのだろう。順調に逃げていたかのように見えた4人だったがじりじりと追いつかれ、あわや一巻の終わりか!と思われたときに偶然にもまだ聖なる結界が残っているボロボロの神殿を見つけた。とっさのことにも、3人の子供たちをそこに押し込むことには成功したが次の瞬間、背中にものすごい衝撃を受けラクサが大きく吹っ飛ぶ。結界越しに見ていた3人は叫び声をあげた。


「「「ぎゃーーーーーーっ!!」」」


 体を強く木にぶつけたラクサ。その衝撃に顔をゆがめうめき声を上げる……、かと思いきや思ったような衝撃がない。痛みもなければ傷もない。

どういうことだ、と眉を寄せた。



 そこへ敵は近づくと面白いものを見るような顔をしてこう言った。

「ほぉ、流石はあいつの防御魔法…。これくらいの攻撃では傷もつかぬか……」


 防御魔法…、そうか!

ラクサは思い出した。村へ入る前師匠がかけてくれたものだ。

 ラクサは立ち上がり全身を確認する。…体は異常なし。あの3人も、聖なる結界に入ってしまえば魔族には決して入ることはできない。もう安全だ。

 問題はラクサ自身。さてここからどうやって逃げようか…。


 逃げる方法を考え込んでいると魔族が無情にも言い放った。


「クックック。ここから逃げても無駄なことだ。貴様にかかったその魔法から、忌々しいあの女の気がぷんぷん臭う。どこへいっても逃げられない、貴様の未来は吾に切り刻まれるのみ……」


 そう言うとすごい勢いでラクサに向かって突進してくる。両手には大鎌を持ちながら。

 

 当等本当に追い詰められてしまったラクサ。背後にはぐるりと囲むように木が生い茂り、前には目前に迫る敵。


 ラクサは死を覚悟した。そして師匠の教えを思い出す。生き残ることは無理だったがせめて最後まで敵から目を離さずに死のう。

 視界にチラリと三人が映る。自分はだめだったが3人は無事生き残ることができた。村人との約束が守れたことにほっとする。出来ればこれからはあまり危険なことはせずに生きてほしいと思う。


 スローモーションのように迫る大鎌。ラクサの脳裏に走馬灯のように今までの思い出が浮かび上がる。両親には死なれ、角は折られ、仲間からは心ない言葉で虐げられる。思い返すまでもなくいいことのない人生だった。

 ただ一つ心残りがあるとするならば師匠のこと。

旅続けられなくなっちゃってごめんなさい。約束守れなくてごめんなさい。もし生まれ変われるのなら、次は最初から師匠に遇いたいと思います。


 


 ぎらぎら光る大鎌がラクサの視界いっぱいに広がる。

 



 魔族の高笑いが聞こえ、ラクサの意識は途絶えた。








 ………はずだった。



「まぁったくもう。ラクサのおバカさん。わたしが弟子を見捨てるわけないじゃないさ」


 聞こえてくるのは師匠ののんびりした声。目の前にはあの懐かしい背中。




 師匠は、実に颯爽と、恰好よく、英雄的にタイミングばっちりで現れた。



「それと君、逃がさないっていったよね」


 大剣片手ににっこり笑う師匠と顔面蒼白の敵。



ギャーーーーー!という叫び声を最後にラクサの初めての戦闘が終わった。

長かった。ちょっとgdgdしちゃったかな?戦闘描写って難しいです。

あ、あとお気に入り登録ありがとうございます!これからもがんばりますよ♪  おなかへったOLZ


読んでくださった方に感謝!!!

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