4.5 女の戦闘(師匠サイド)
師匠サイドのため師匠の三人称を「師匠」⇒「女」にしています。
女はラクサと別れてから魔物を斬り続けていた。走っては斬り捨て走っては斬り捨て……。まるで辻斬りのように、早速女の通った後には魔物の死体しか残らなかった。
女は自身の体重よりあるだろう大剣を、さも軽々と振りまわしてゆく。それはまるで敵が止まって見えているかのような早業で、誰が見ても女がものすごい使い手であるとわかるものだった。
一振り、二振り、三振りすると女の周りにいた魔物たちは倒れ伏す。女は、それをチラリと見ると技と神妙な顔を作り剣を鞘にわざわざ納めて言った。
「またつまらぬ物を斬ってしまった」
静まり返る戦場に、女はため息をつく。きっと今家出中の愛猫≪親友≫なら、この快心のギャグをわかってくれただろうに。
「きっと君にはわからないんだろうな」
音もなく首めがけて飛んで来たナイフを風の魔法で吹き飛ばす。それと同時に雷の魔法『雷』を放つ。
あたりにバリバリっという雷鳴が轟くと、避けきれなかったのだろう、ところどころ黒く焦げた魔族が姿を見せた。浅黒い肌に大きな鎌を持つその姿は、見る者に悪魔を思わせた。
「貴様…よくもやってくれたな。吾の可愛い部下たちを……」
魔族は短い髪を逆立てて「噛み砕いてくれるわ!!」と唸った。
それを涼しい顔で眺めていた女はにこやかな笑顔でこう言った。
「お久しぶり魔族さん。かれこれ400年ぶりくらいかな。これって感動の再会ってやつだよね、ウワ―ナミダガデルヨ」
「なにっ!よ…よんひゃくねんぶりだと…!?ま…まままさか、き…ききき貴様は」
見る見るうちに顔色を真っ青にしていく魔族。それを面白そうに眺める女。先程までの威勢が全く見えない魔族に「ここだけ見ればわたしが悪者に見えそうだな」と女は思った。
「魔王復活なんて眉唾ものだと思ってたけど、この分じゃあ本当のお話なのかな?」
そこんとこどうなの?と魔族に聞く女。声だけ聞けば実に穏やかだが、体は先程の大剣を抜き魔物につきつけている。魔続は震え上がった。
400年前魔王をメッタメタに叩き潰した勇者。実はこの魔族一度その勇者が戦っているところを見たことがあった。その勇者はたった一人で何百もの魔物を屍に変えた。その姿をはるか上空から見ていた魔族は思ったのだった。「魔物よりも魔物らしい」と。その後、魔族たちにして「その姿悪鬼のごとし」と言わしめた魔族のトラウマ「勇者」。その本人(?)を前にして魔族は土下座をする勢いで懇願した。
「おおおおお願いします!謝りますっ謝りますからどうか命だけはお助けをーー!!」
「だめ。お話してくれなきゃ返さない。じゃあ戦闘開始5秒前…」
焦る魔族に無情にもカウントを開始した女。
「5・4・3・2・1・戦闘開始♪」
再び轟く雷鳴に、「ぎゃーーーーー!!」という叫び声が混じった。
その後、いたぶること数十分、命からがら何とか逃げ出すことに成功した魔族は4人の人影を発見する。そう、ラクサと行方不明だった三人の子供である。
その時、魔族の標的は変わった。最初は魔物を田舎から都市へ向かって大々的に暴れさせることにより魔王様の力が再び強まっていることを誇示することが目的だった。しかしそれが失敗し、女に痛めつけられた今早速そのやつ当たりに目的は変わった。
「ちくしょぉーーーー、許すまじ人間!!」
魔族は一度大きく羽ばたくと再度標的に4人を捉えた。
その頃の女は。
「あーあ、逃げられちゃった。空を飛ぶなんて反則だよ」
と、これからのことなど知るよしもなく魔族の逃げた空を眺めていた。
魔族サンはぼろぼろ。師匠に高笑いされながらいじめられたと思います。次はラクササイドに戻ります。ちゃちゃっと更新行きますよ~♪
読んでくださった方に感謝!!!