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after story~名前を捨てた勇者伝  作者: むらまき雀
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3.ラクサと戦闘 前編

 朝食の後、二人は出発した。

 もちろんラクサの額には例のバンダナがしっかりと巻かれていた。




 森を抜けると街道が続く。とはいってもあまり整備されておらず、ただ村と村とを繋ぐ田舎道という感じだった。利用者もあまりいないようで人影は見えない。おかげでゆったりと旅が出来そうだ、とラクサは思った。


 しばらく歩いていると沿道に魔物の足跡を発見した。

 思わずラクサは師匠に問いかけた。

「お師匠様、ここにも魔物は出るんですか?」

「まあ出るだろうね、ここに跡があるんだから」

師匠の答えは実にあっさりとしたものだった。ラクサがあまりに不安がっているのがおかしかったのだろう。師匠ははははと笑った。

 そして安心させるようにラクサの頭にポンポンと軽く触れた。


 「といっても、この辺が危険なのは夜だろうな。人気もないし明かりもない。野生動物なんかも出るだろうね。大丈夫だよ。魔物が活発化してきているとは言ってもまだ森や山の奥地での話で、むしろこういうところでは盗賊や追剥に注意したほうがいいだろうね」

という師匠の話に、ラクサは一応の安心をしたものの、油断は禁物。もしもの時のため、腰に下げた短剣に触れあることを確認した。




 その後も旅の注意点や持ち物、買い物の仕方などを詳しく教わった。流石に多くの弟子を育てたというだけあって師匠は教え方がうまかった。ラクサの質問にも気を悪くすることなく何度でも答えてくれた。

「…じゃあ火はすごく大切なんですね」

「そう。魔術師がパーティーにいるとすごく便利。だけど何かの時のために用意だけはしておいたほうがいいね。例えば火打石とか…あと鏡も重宝するね」

「鏡ですか?」

「便利なんだよ。光を集めて火を起こすこともできるし、空を飛ぶ仲間に合図を送ることもできる。持っていて損はないよ」

 師匠の話はラクサの知らないことばかりでとても為になった。

 いろいろと話し、最後に戦闘についての話になるとラクサの目の色が変わる。「戦闘」はラクサにとって重要かつ最も難関な課題だ。

 ラクサは一言も聞き洩らすまいと耳を大きくした。


「いいね、大事なのは生き残ること。何があっても目を閉じない。それともし勝てないと思ったら悩むことなく逃げなさい。全力で」

師匠は大事なことを言うようにラクサの目をまっすぐに見つめて言った。

「人は案外あっけなく死んでしまうものだよ。とくに君たちユニコーンは誇りのためなら死をも厭わず、なんて言うからね。ラクサ、覚えておきなさい。誇りのために死ぬくらいなら、生きて誇りを捨てなさい。生きていれば、誇りなんかよりもっと大切なものが見つかるはずなんだから」

いいね、と再度ラクサに念を押し、師匠はまた歩き出した。


 

 相変わらず人気のない街道をひたすら歩く。

 

 ラクサは師匠の後を追いながら、先ほどの言葉を思い返していた。

 正直言って普通のユニコーンなら到底受け入れられない話だと思う。しかしながら、ラクサは違った。

 なぜならば、一族のアウトサイダーとして育った彼は、そこまでしっかりとユニコーンとしての自分を確立していなかったのだった。そしてそれ以上に、ラクサの胸の中にはすでに誇りよりも大切なものが芽生え始めていたからだった。そう、師匠という掛け替えのない絆が。


『生き残ることが大切』と師匠は言っていた。きっと師匠は多くの死を見てきたのだろう。真っ黒な服はその人たちを悼んでのことなのだろう。

 誇りよりも大切なもの…。ラクサにとって師匠がそうであるように、師匠にとっても自分がそうだったらどんなに幸せだろう。なれるだろうか……、とラクサは思った。







 昼を過ぎ、もう少しで今夜の宿となる村が見えてくるだろうというとき、師匠が急に走り出した。

「!!お師匠様!?」

ラクサも急いで後を追うと少し先に黒い影が見えた。さらに近づいてみると、なんとそれは血まみれの人間だった。




「っ大丈夫ですか!!!」

 急いで駆け寄るラクサ。近づいてみるとよくわかる。黒い影は全身にけがをおった中年男性だった。師匠は急いで男性の全身に目を走らせる。けがは獣か魔物か、それに襲われたのだろう。見るからに痛そうな傷に、ラクサはすがる思いで師匠を見つめた。

「お師匠様!この人の容体は?」

「大丈夫。傷の数は多いけど命に別状はないようだ。ラクサ、応急処置を頼める?」

「任せてください!!」

だてに昔から毎日怪我をしていたわけじゃない。おかげでラクサは剣術の腕はからっきしだが怪我の治療と逃げ脚には自信があった。

 師匠からの初めての課題にラクサは大きくうなずいた。



 ラクサが腕の怪我に薬草を塗っていると「ううっ」と呻いて男性が目を覚ました。

「お師匠様!気がついたようです」

「!もしもし、大丈夫ですか?」

師匠はうっすらと目を開けた男性の目の上で手のひらをひらひらと振る。しばらくぼんやりと焦点の合わない目をしていたが、次第にはっきりとしてきて、急に師匠の手をがしっとすがるように握った。

「頼む!!助けてくれっ!!」

「何があったんです?」

師匠が落ち着いた声で問い返す。男は動いたせいで怪我が痛むのだろう、痛みに顔を歪めながらも師匠に答えた。

「魔物に襲われた!!この先の村!俺の村だ!!俺はどうにか逃げてきたが村にはまだ人がいる!頼む助けてくれ!!!」

「大丈夫です。安心してください。村は必ず助けます。だからあなたは安心して休んでください」

男の決死の懇願に師匠はあっさりと答え、安心させるように柔らかくほほ笑んだ。

「すまねえ」

力尽きたのだろう。男はかすれた声で礼を言うと再び意識を失った。


 そこからの師匠は素早かった。魔法で小鳥を召喚すると「この人を見ててね」といって男のそばに下ろした。そしてラクサに防御の魔法をかけると足元に魔法陣を展開した。

「私につかまって。一気に飛ぶから」

急いでラクサが師匠の腕をつかむとその瞬間、世界が歪んだ。


 次に目を開けるとそこは魔物に蹂躙されている村のまん前だった。


 ラクサは目を丸くした。聞いたことがある。『瞬間移動』それは今や使える者がいないという古代魔法だった。




「魔物は私が相手をする。ラクサは逃げ遅れた人やけが人をお願い。無理はしないで、出来る限りでいいから」



 衝撃の事実に固まりながらも、目の前の事態が最優先。それについては後回し、と頭を急いで切り替えてラクサは村の中に駆けて行く。


 緊張と恐怖で震える手足を叱咤して、腰のナイフを握りしめた。


『目は閉じない、勝てないと思ったら迷わず逃げる、そして必ず生き残る』

ラクサは教わったばかりの戦闘の教えを心の中で繰り返す。 


 そしてメジハ村でラクサの初めての戦闘が始まった。


あああ~、なぜか戦闘まで行かなかった!!長くなったのでここでカット。

タラタラと書いちゃう癖が出てきました。自重!自重!次こそ戦闘です。そして村の名前、逆から読むとハジメ村、安直です(汗


読んでくださった方に感謝!!!

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