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期間限定迷子  作者: yoshihira
本編
16/65

14 どたばた

すいません、シリアスです。


 このまま逃げ切ってしまえばいいのかもしれないけど、後々の事も考えると情報収集をしておくべきか。


 人数は三人。

 これくらいなら余裕で相手できる。―――この時の私は、魔学が使える事に安心しきっていて、調子に乗っていた。


 人気の無い、少し幅のある道に出ると、私はミーファを少し先の路地に隠した。


「片付けてくるから、ちょっとここで隠れててね」


 殺気立った男たちの前に立ちはだかる。


「てめぇ、あのガキをどこにやりやがった!」

「素直に教えるわけないでしょ」


 あの子を逃がしてしまった事に余程焦っていたのか、相手はあっさりと逆上して襲い掛かってきた。


 馬鹿正直に正面から向かってきたのでこちらとしても助かる。

 さっと横に足を滑らせ、勢いよく首の裏に手刀を叩き込むと、一声呻いて地に伏す。

 久々の格闘に腕がじんと痺れた。


「このガキ…」


 残りの二人の顔色が悪くなる。

 そうそう、喧嘩を売る時は相手を選ばないと。


 でも、油断をしていたのは私も同じだった。


「いたぞ!」

「!」


 げげっ、もう一人いたのか!


 背後の路地からミーファを引きずり出したもう一人の追っ手がいた。

 形勢逆転、だけど、そう簡単に思い通りにさせてたまるかい!


「ウィドウ・アグア・トーア!(水よ、ここに集え)」


 高速で誓印を斬り、指でまず二人の男を指し示す。


「クロウン!(閉じ込めろ)」


 次の瞬間、生き物のように引き伸ばされた水が上から襲い掛かり、男たちは悲鳴を上げながら水の中に絡め取られる。


「ばっ、化け物!」


 ミーファの首に腕を回した男は恐怖の形相でこちらを見つめている。

 …うん、その認識は正しい。

 魔学を操る私はこの世界ではまさしく異物なのだ。


 パチンと指を鳴らすと水は掻き消えて、男たちはぐったりと地面に投げ出された。


「あなたもあんな目に遭いたくなければミーファを放しなさい」

「寄るな! ガキを殺すぞ!」


 首を絞められ、ミーファの顔が苦しそうに歪む。


 どうする。

 何の魔学なら有効?

 落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせながら、手立てを探る。


「っ後ろ!」


 ミーファの声にハッと振り返った時には遅かった。

 一番最初に地に沈めた筈の男の拳が顔に飛んできて、壁にぶち当たる。


「っ!」


 まともに当たるのは避けたとはいえ、殴られた頬から骨に衝撃がきて、一瞬、意識が白くなる。

 …歯で口の中、切れちゃったじゃないか。


「邪魔しやがって!」


 次に飛んできた蹴りを転がって避ける。

 全く、とんだ休日だ。


「キャット・テラウン・トマーウナ(捕らえろ、土の手よ)」


 気付かれないように小さく誓印を切る。


「なんだっ、土がっ!」


 狙い通り、陥没した地面に両足がめり込んで、追っ手が身動き出来なくなる。


「ミーファ!」


 その間に、最後の一人はミーファを連れて、逃げようとしていた。


「させるか…ぐっ!」


 追おうとして身体を返した所にナイフを投じられ、左肩にぐっさり。

 いっ…痛い!!!!!


「き、キャット・アルブ・トマーウナ!(捕らえろ、蔓の手よ)」


 利き腕じゃなくて良かった。

 必死で誓印を描き終えると、地面から伸びた何本もの緑の蔓が男の足を這い登る。

 全身に絡みつかせて拘束すると、男は呻いて地に転がった。


「ミーファ!」


 ようやく駆け寄ると、緊張が解けたのか、ミーファは地面にぺたんと座り込んでしまっていた。


「大丈夫?」

「か、肩、怪我…」


 ごめんね、こんな怖い場面見せちゃって。

 残念ながら魔学に治癒術はないのです。


「これくらい平気だよ。ミーファに怪我が無くて良かった」


 そういうと、ぽろぽろと涙を落とさせてしまった。

 頭をよしよしと撫でてやると、ぎゅうとしがみついてくる。可愛すぎる。


 ナイフは今抜いたら出血が多くなりそうだし、転移術で帰ろうか。

 この四人の男たちの始末は…とりあえず蔓で縛り上げておけばいいか。

 私もこんなだし、今はミーファを優先させよう。


「ミーファ、ちょっと目を閉じてくれる?」


 お願いすると大人しく目を閉じてくれたミーファを左手で抱きかかえ、私は誓印を切った。




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