11 蛇足的な告白
何から話そう。
別の世界からやって来たなんて言って、何処まで信じてくれるかなぁ。
でも、他に適当な理由もないし。
ええい、細かい事考えるのは嫌いだ!
「信じてもらえるかわかりませんが、私は別の世界からやって来た人間なんです」
静けさがやけに感じられる。
三人ともが自分に集中しているのを感じて、緊張が込み上げてきた。
「なので、実は記憶喪失は嘘です。嘘吐いてごめんなさい」
身元詐称はやっぱり重罪だろうか。
…正直に告げた事をちょっぴり後悔する。
「いつかはわかりませんが、いずれ、元の世界に戻る事になると思います。
なので、それまでここに置いてもらえるとすごく助かります。
その、仕事は頑張りますし! 変な騒動も起こさないよう気をつけますので!」
不可抗力は別にして!
沈黙を破ったのは腕組みしたマグノリアさんの低い声だった。
「アンタ、それ、マジで言ってんの?」
ううう、美人に睨まれると恐すぎる。
「常識外れもいいところの言い訳ね。異世界人ですって? 今時、三歳児でももっとマシな嘘吐くわよ」
でも、全て本当なんです。
この説明何度目だろう。一発で信じてくれる人はやっぱりいないなぁ。
「シゼル隊長、ご判断は?」
「…まぁ、信じるかどうかは別にして、隊務に支障が無ければ問題無いだろう」
「シゼル隊長って度量が広いっつか、広すぎるっつか。だから、二番隊は変な奴らばっかり集まるんだよな」
私も思ったけど、アイン、正直に言いすぎ。
でも、それをすんなり飲み込んでいるアイン自体も只者ではなさそう。
でも、信じられない事にこのまま受け入れてもらえそうだ。
衣食住が継続確保できて本当に有難い。
そういえば。
「あの」
「何よ」
まだ何かあるのかと、あからさまに聞きたくないと書かれた顔でマグノリアさんに睨まれてしまった。
「いや、確認というか、些細な事なんですけど」
「言ってみろ」
「その、女でも警吏隊に入隊できるんですよね…?」
「…」
沈黙。
…やっぱり男だと思われてるよね。
というか、まぁ、そう振舞ってはいたんですが。
「…タチの悪い冗談が聞こえたわ」
「はぁ!? 女!?」
発言を撤回して逃げ去るべきだろうか…。
「カズミは女性なのか?」
隊長に真顔で尋ねられるとこちらも恥ずかしすぎる。
「待て待て待て! 風呂とかどうなんだよ! 俺、お前と一緒に入ったよな!?」
うわ、飄々としているアインが珍しく動揺している。
「それは幻術でちょっと細工をして、普通に一緒にお風呂に入ったけど」
「マジかよー!!!」
「お前、女じゃねぇ!」と頭を抱えて叫んでいる。
シゼル隊長も眉間を押さえて顔を伏せているが、気のせいでなければ、もしや笑っているのか、あれは?
初めて笑っているとこ見た。
「信じられない! アンタを女だなんて認めないわ! ただの小ザルじゃない!」
あーはいはい、好きなように言ってください。
だって、女捨てなきゃ、生き残れないんだもの。今の私には肌の手入れより何より生き延びる事が大事!
「…まぁ、通常は入隊を認めていないが、例外的に許可しておこう。
ただ、混乱を避ける為にも、今まで通り、男として振舞ってくれ」
多分、言わなければ誰も気付かないと思うけど。
「了解です」と私は深くお辞儀をした。
この小話が書きたかっただけだったり。