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みんなに優しい美少女幼馴染が俺にだけ辛辣

作者: 氷河涼

 俺が通学路を歩いていると周りからは楽しそうに話す高校生達の声が聞こえる。一方俺の心は沈んでいく一方だ。


「なんたって今日は高校のクラスメイトとの初めての顔合わせがある大事な日…。今日の印象でスタートが決まるからな」


 一応自己紹介をしておくと俺の名前は陽向。ごく一般的な高校一年生で個性はあまりない。なんか言えることがあるとしたら恋愛ジャンルの本が大好きって事位か。


「俺、クラスに馴染めるかなぁ…窓側最後尾引いて昼休み1人で読書してるような人間になっちゃわないかなぁ…」


 そう言いながらため息をつく。

 こういう時にいつも励ましてくれた幼なじみはもうここには居ない。何故かというと小学生の時にもう離れ離れになってしまったからだ。連絡先も交換していないし今どこにいるかも分からないのだ。

 

 そんなことを考えているうちに気づいたら俺は学校に到着してしまった。説明をしておくと俺が通う高校は成績が良くないと入れないというわけでも無く、中間ぐらいの人でも入ることができるような高校である。

 俺は、ここまで来たらもう怯えるも何も無いかと思い、思い切って校門を通り抜け進んでいく。

 1度進み始めた足は思いの外止まることは無く、指定された教室まですんなり行くことが出来た。

 古くからある学校だが、教室は最近行われたリフォームでそこら辺の新しい学校と変わらないくらいに綺麗になっていた。

 だが俺は教室の前で立ち止まっていた…なぜなら、


(こういうのって挨拶して入るべきなのか? それとも何も言わないで入るべきなのか?)


 というしょうもないような内容で俺はテンパっていたからだ。もう意を決して入ろうとしている所で急に横から俺に驚く声が聞こえた。


「あれ…もしかして貴方は…」


 声が聞こえた方を振り向いて見れば俺も顔が少し記憶と違うように見えるが見覚えのある美少女と誰もが答えるであろう少女がそこにはいた。


「もしかして美月なのか!?」


 美月は俺の幼なじみで成績優秀、運動神経抜群、スタイルも良く、どこをとっても完璧なのだ。小学生の時に親の都合で俺が転校して以来、連絡も取れなかったのでもう会えないと思っていた。


「ひ、久しぶりね。あんたが同じ高校だなんて思いもしなかったわ。とりあえず教室入りたいからそこどいてちょうだい。」


「あ…あぁ。ごめん」


 そう言って美月は素早く自分の席を探して席に座った。中央の最前列の席が美月の席のようだ。

 さっき話をしてみて、俺は美月が自分に接する態度が前と違うのではないかと思ったが、会っていない期間の間に性格なんかいくらでも変わるよな。と思い気にしないことにした。

 俺はもう教室への入り方なんて気にせずに普通に挨拶して席に着いた。ちなみに俺の席は美月の右後ろだった。それから少しして担任が来て挨拶が終わり、自己紹介の時間がやってきた。

 俺は男子順でいうと前から7番目で、先人たちの自己紹介を糧にして自己紹介することは十分に可能だろう。

 そのまま自己紹介は順調に進んでいき、とうとう俺の前の人まで来たのだが…


 (なんだよ俺の前のやつら全員陽キャかよ! なんだよあの俺とは真反対なタイプ自己紹介! あれじゃ参考のしようがないだろ…)


 と考えてるうちに前の人の自己紹介が終わり、俺の番が来てしまったようだ。

 もうこうなったらノリで乗り切るしかないのか?


「えっと…名前は萩山陽向で、趣味はまぁ読書とかで、特に読んでるのは恋愛のラノベ系かな。高校生活でラノベ関連の話するの夢だったから知ってる人はぜひ話してくれると嬉しいな。これからよろしくお願いします」


 今回の自己紹介は俺にしては上手く行けた方なのではないか?と思い少しニヤけた。

 そのまま他の人の自己紹介を聞いていくと、美月の番がやってきた。


「桃乃美月です! 得意な事は家事全般…とかかな?特に料理するのは結構上手いかな〜と思います! みんなと仲良くなりたいからいっぱいお話しようね!」


 (完璧な挨拶すぎて声も出ないな…)

 さっき俺と話してた時と空気感なんか違くないか? 朝は気分悪くなるタイプだっけか?

 そう思いつつ、一応周囲の声を聞いてみると、


男生徒「桃乃さん可愛くね? 性格も好みかもしれん」

女生徒「どうやったらあんなモデル体型になれるの?」


 近くの生徒の羨望や憧れが混じった視線を感じ、やっぱり美月は凄いのだと俺は再確認させられた。

 

「たしかによく見れば体型とかいいんだな…貧乳だが」

 

 直後、美月の方から殺意のこもった視線を向けられた。その視線で無意識に声が出ていたことに気づく。俺は相当酷い発言をしてしまったと思うので美月には後で謝ろうと思う。

 

 そのまま自己紹介も順調に終わっていき、あっという間に下校の時刻になった。時間の流れが早いのは助かるな。それにしてもあの後美月と話せる機会なかったな…

 なぜなら美月は今日1日でこのクラスに驚くくらい馴染んでいるのだ。常に近くに誰かしら居て、人見知りの俺には話しかけることが出来ない。今も1人、近くに女の子がいる。確か名前は菫崎美希さんだったな。あの二人はさっきの自己紹介で聞いた感じ、中学からの親友ってやつらしい。仲がいい友人がいるのはいい事だな。


「それじゃ一緒に帰ろっ!」


「私、まだ準備終わってないからもう少しだけ待ってくださいな〜」


「分かった〜」


「それとさ美月ちゃん! 今日帰る前に良い激辛ラーメン屋さんあるんだけど寄ってかない?」

 

「なんでそこで選ぶのがラーメンなのよっ!もっとなんかクレープとかそういうのじゃないの〜? まぁ別にそんなに行きたいならいいけどもっ!」

 

「やった〜!誰も一緒に行ってくれる人いなかったんだ!ありがと〜!」

 

 どうやら今日の放課後の予定を決めているらしい。笑顔で抱きついたり手を握ったり…見ているだけで仲が良いのが伝わってくる。これは百合好きの俺にとっては至福の光景である。

 そう考えながら美月のことを見ていたら、見ているのがバレてしまったみたいでこちらに近づいてくる。これはまずい。


「何さっきからちらちらこっち見てんのよ。気づかないとでも思った?変態」


 とりあえず正直に言おう。


「ご、ごめん…つい美月がなんの話してるのか気になっちゃって…」


「人の会話盗み聞きするのは嫌われるから辞めた方がいいわよ」


 やっぱり俺にだけ当たりきついな…どうしてだろう…


「分かった…教えてくれてありがとう。それと…さっきは失礼なこと言ってごめん」


「絶対許さないから」


 美月が怒気を纏わせながら言った。

 (これ相当怒らせちゃったな…)

 気まずい雰囲気になったがすぐに美月が口を開いた。


「帰りましょうか、美希」


「分かったっ!」


 そう言って美月と菫崎が離れていく。


 俺は余計なことを言ってしまったな…こういうことの積み重ねで美月にも嫌われてしまったのだろう。


 そう自分を責め続けながら俺は1人で自宅までの道を歩いていった。


―――――――――――――――――――――


「ラーメン美味しかったね! 激辛系って苦手だと思ってたけど案外好きかも!」

 

「とうとう激辛ラーメンの良さに気づいてしまったか〜! 今度また食べに行こうねっ! それでなんだけど…さ? 陽向くんの事はよかったの? まだ何か言いたかった、言えればよかったのにって後悔してる顔してるように見えるんだけど」


「言いたかったことなんて…べつに…」


「絶対なにかあるパターンじゃんか」


「…」


「何か悩み事があるなら遠慮なく話してくれてもいいんだよ〜?」


 そう言って美希は距離を詰める。


「じゃあ少しだけ…ね? 陽向と私が幼なじみってのはわかってると思うんだけど、それもあって小学生の時はずっと一緒にいた。でも小3の時に陽向が転校することになっちゃったのね? 親の仕事の問題とかだったかな。ちょっと恥ずかしいけどその頃には既にあの…なんというか…陽向の事が好きでさ。当時の私はすごいショックだったわけです。ほんとに1週間丸々学校休んで引きこもった位にはね」


「陽向くんの事幼なじみくらいしか聞いてないし恋バナしようとした時も話してくれなかったから知らなかったな。それくらい教えてくれても良かったのに〜」


「それはまぁ…ごめん。 で、話を戻すけども…私は陽向が居なくなったあともずっと陽向が好きだったんだよね。で、中学生になった時も知っての通り好きだったんだけどそこで少し問題が起きちゃって…」


 そこで美月は言い淀んだ。


「多分私が知らないことだな…。言えないようならべつに無理して言わなくてもいいんだよ?」


「いや、大丈夫…少し躊躇しただけだから。で、中学校でも最初は楽しくやれてたんだけど、何人かの女子だけで恋バナをした時があってね? 自分は小学生の時から好きな人がいるけど、もう転校しちゃって会えないって話をした時に【そんな昔の叶いもしない恋を追い続けてるなんて面白くないし気に食わない】的なこと言われちゃって…。多分それを言ったのは私を嫌いな人だったんだと思う。聞いてて支離滅裂で意味もわからないような意見だった。何かしらいちゃもん付けたかったのかな。勿論反論してくれる人もいたし、私も反論したんだよ? でも聞いてくれなくてその日を境に私はその人の集団全員から結構の期間虐められちゃって…そのせいで今でも陽向の事は好きでも口に出すのが怖くなっちゃったんだ…」


 少し俯きながら美月が答えた。


「私が知らないところでそんなことが…気づいてあげられなくて…ごめん…私が気づいてあげられてれば…」


「あの人たちいつも絶対にバレないような時にやってきてたから気づくってのも無理な話だったと思うの。だからそんなに気に病まないで?」


「でも…いつも美月のそばにいた私が気づいてあげなきゃならなかったはずなのに…。気づいてあげられてれば今頃陽向くんともいい感じだったはずなのに!」


 泣きそうになりながら美希が言った。その直後、美月は美希の頭を撫で始めた。


「ちょっといきなり何するのよ…」


「私の事でそんなに悩まなくても大丈夫だよ。そういう風に考えてくれるだけで私は嬉しい。この問題は私が解決するべきだし、私だけでもちょっと勇気を出せば解決出来る事だから、ね? だからいつもみたいに元気になって?」


 美月が美希の頭を撫でながら優しい声で言った。


「美月ちゃんは優しすぎるんだよ…ほんと好きになっちゃったらどう責任とってくれるの」


「好きになられるようなことはしてないと思うんだけどな…万が一に好きになられても私は陽向一筋だからね!」


「陽向くん一筋発言頂いちゃいました〜。これ聞いてるだけでにやけてきちゃいますな〜」


「ちょっと…恥ずかしいからあんまり言わないで! もう…早く帰るわよ!」


「はいはい。じゃあ帰りますか!」


 そうして2人は自宅への道を歩いていった。美希を家まで送った後、美月は一人で自宅まで歩く。その顔色は優れず、瞳には涙が浮かんでいた。


 ――――――――――――――――――――


 次の日、俺は美月ともう一度仲良くなるために菫崎さんに話を聞いてみることにした。


「菫崎さん、少し話あるんだけど場所移動して話せない?」


「いいよ!」


 案外すんなりと了承が得れたので安心。


 そこら辺の人気のない空き教室に入り、話を始めた。


「えっと…話っていうのは美月の事なんだけども…大丈夫かな?」


「大丈夫だよ!」


「俺やっぱり美月からの態度が変わりすぎてると思うんだよな。会ってない時間が長いからといってここまで変わることは無いと思うんだ。それについて何かわかる事とかないか?」


「えっとね…。あの詳しくは言えないんだけれども中学の時に陽向くん関連でイジメを受けてて、そのせいで態度が変わっちゃったんだって。本当は仲良くしたいとは言ってたよ?」


「そう…なのか…。美月でも虐められることってあるんだな。でも、嫌われたのかと思ってヒヤヒヤしてたから嫌われてないってわかって良かった…」


「後聞いておきたいことはある?」


「うーん…そろそろ時間も無いし今は大丈夫かな。付き合ってくれてありがとうな!」


「全然大丈夫だよ! 美月ちゃんのためにもなるし!」


 そうして俺たちは教室に戻った。そしてそのまま特に何も無く放課後になった。俺は菫崎さんの元に行き、


「菫崎さん、行ければでいいんだが明日カフェにでも行って例のことについて話さないか?」


 と言ってみた。気持ち悪いと思われなければいいのだが。


「全然行けるよ! 行こう行こう! 後菫崎さんっての辞めてよ〜。長いし! 美希でいいよっ!」


「お、おう。分かった」


「後連絡先も教えて? 後はそれでやり取りしよ!」


「分かった。俺のはこれだ」


 流れるように連絡先交換か…すごいな女子高生。コミュ力がありすぎて尊敬する。


「それじゃあまた明日」


 それだけ言って俺は去った。後ろから見つめてくる美月に気づかずに…。


―――――――――――――――――――――


「えっと…美希? どうして陽向と…?」


 横を見ると絶望しかけの顔をしている美月ちゃんがいた。悪いことをしちゃったな…。一通り問題が解決したら謝ろう。


「ただ来週の授業の話をちょっとしてただけ! あんまり気にしないで〜」


「そ、そう…? そう言うなら信じるからね?」


「もう任せて! それじゃそろそろ帰ろっか!」


 これだけは話せないんだ。ごめんね。そう思いながら自宅への道を2人で他愛のない話をしながら歩いた。

 家に着き、お風呂に入ったりご飯を食べたりして、少し経った頃にスマホを見ると陽向くんからメッセージが来ていた。


陽向『明日何時にする?』


美希『出来るだけ長く話せそうな時間の方いいから1時にする?』


陽向『了解。集合場所は××駅前の広場でいいか?』


美希『うん! 楽しみにしてるね!』


陽向『そろそろ寝る時間だな。おやすみ』


美希『そうだね! おやすみ!』


 そこでスマホを閉じた。やっぱ陽向くんって可愛いな。友達の好きな人に対してそんなこと思うのも問題かもしれないけど。可愛いものは可愛いんだから仕方ない。一刻も早く美月と付き合ってもらわないと私まで好きになっちゃいそうだよ。

 そう思いながら、私は眠った。


―――――――――――――――――――――


 次の日も俺は寝坊することも無く起きることが出来た。いつも通りの準備をして朝ごはんを食べても、時間はまだ沢山余っているので、久しぶりに本でも読んで過ごすことにした。ちなみに今の時間は11時頃。

 30分ほど本を読んで、昼食を食べることにした。食べ終わった後にスマホの通知音が聞こえたので見てみると美希から連絡が来ていた。

 

美希『陽向くんって清楚系とギャル系どっちが好き?』


 これはどういう質問なんだ?まさか着ていく服を決めて欲しいわけでもないだろうしな。とりあえず答えるが。


陽向『俺は清楚系をイチオシしてるが…。聞いてどうするんだ?』


美希『秘密!』


 よく分からないな。まぁあまり気にするようなことでもないだろう。少し経った後余裕を持ってそろそろ家を出る事にした。俺は家を出て、そのまま××駅前の広場に着いた。多くの人が広場にいるのでそれらの人々も誰かを待っているのかもしれない。今の時刻は12時強なので流石にまだ美希はいないだろう。


「陽向くん! こっちーー!」


 なんか聞いたことのある声が俺を呼んでるんだが。ほぼ1時間前なのにもう居るんですか? とりあえず呼ばれたほうに向かってみるとそこにはやはり美希がいた。


「来るの早すぎないか?」


「そんなこと言ってるけど陽向くんも私と変わらないからね? 後、なんか私を見て言うことは?」


 見て言うこと…服が清楚寄りだな。偶然なのか? うん、似合ってるし可愛いな!


「えっと…清楚系の服着てるの似合ってるし可愛い…よ?」


 うわ恥ずかし…死ぬだろこんなん。美希は俯いてそっぽ向いちゃったし。謝るか。


「ごめん。キモかったよな」


「いや、そんなことない! 私がただ…なんというか恥ずかしくて…」


 可愛いかよ。俺じゃなきゃ恋に落ちてたね。


「とりあえずカフェ行くか!」


 話を変えなきゃ生きていけない空間だったな。


「陽向くんもうどこのカフェにするかは決めてるの?」


「あぁ。いつも行ってる店があるからそこにしようかと思ってる」


「OK! 陽向くんいつもカフェ行ってるんだ」


「考え事をする時とか勉強する時にちょうどいいぞ。今度やってみたらその良さが分かる」


 俺たちはそのまま他愛のない話をしながら歩いて、数分後にはカフェに着いた。そのまま店内に入って席に座った。


「オシャレな感じの店だね。ここにいつも来てるなんてオシャレさんだ」


「ここはオシャレなのに安いからな。俺たちみたいな学生にはとても有難いな」


 ここのカフェはほかの店と比べても比較的値段が安いのでいつもお世話になっている。誰かと来たことは勿論ないのだが。

 

「それで…何頼む? 俺はアイスコーヒーと苺のケーキだな」


「う〜ん…じゃあ私も同じので!」


 頼むものが決まったのでパパっと注文してしまう。


「なんか陽向くんかっこいいね!」


 唐突すぎる。一体どこを見てそう思ったのだろうか。


「一体どこを見てそう思ったんだ…? 後あんまりそういうことは簡単に言わない方いいぞ」


「私もさすがにそう簡単にはかっこいいなんて言わないよ〜」


 俺は頭が混乱してきた。勘違いしそうになってしまうな。


「とりあえず本題に入るか」


「そういえば逸れちゃってたね」


「まぁ今考えるべきはどうやってまた仲良くなる…というか美月を変えるかってとこだな」


「うーん。難しいところだよね。トラウマも関わってくるし、無意識的な反射みたいなものらしいし…」


「心苦しいが俺が美月の事を無視して美希とかと遊ぶ生活を続けてたらあっちが折れてくれたりしないかな?」


「いいかもね! でも美月ちゃんの精神的負担は増えちゃうだろうなぁ…」


「仕方ない…と思うしかない…か。それで治るなら…」


「じゃあ決まりだね! 月曜日からやってみようか! てかもう決めたいこと決めちゃったね? 余った時間でどっか遊びに行く?」


「確かに…もう目的は達成したのか。美希が行きたい場所あるなら全然行くよ」


「じゃあショッピングしに行ってもいい? ちょうど服とか買いたかったんだ!」


「よし。じゃあ行くか!」


 そうして俺たちはショッピングに向かった。そこからは美希の買い物に付き合ったり、一緒にクレープ食べたり、ついでに俺が欲しかった本を買ったりもした。正直マジで楽しかった。


「そろそろ時間的に帰るか?」


「分かった! けどもうそんな時間かぁ。楽しくてそんな時間経ったとは思えないな〜」


 時計を見ながら美希が言った。


「じゃあ送ってくよ」


「ありがと」


 帰り道も他愛のない話をしながら帰っていると、いきなり美希が


「もし、私が陽向の事好きって言ったらその時はどうする?」


 と聞いてきた。俺は今物凄くテンパっている。どう答えるのが正解なんだ? 下手に答えるとやらかすぞ…。


「どうだろう…まだ会ってからそんなに経ってないしなぁ…でもYESかNOならYESかな?」


「なるほど〜」


 その後はなんとなく話をせずに、そのまま美希の家まで着いた。


「それじゃあね! 陽向くん! また月曜日ね!」


「おう! じゃあな!」


 そのまま俺も家に帰った。そしてベッドで考える。


「俺、美月の事どう思ってるんだろうな…」


 今までは親友!って感じで見てたが…俺は美月の事が好きだったりするのか?まだ分からないが…嫌いじゃないってことは分かる。とりあえず今日は寝てまた今度考えよう。


 ――――――――――――――――――――


「嘘でしょ…?」

 

 今日、私は1人でショッピングに来ていた。そこで陽向と美希が楽しそうにデートしている所を見てしまったのだ。どうして陽向が美希と? 美希は私に嘘をついてたの? 疑問は色々と出てくるが答えは出てこない。目からは涙が溢れ落ちる。


「私がもっと素直になれてれば…あの場所に居られたのは…私だったのかな…?」


 今更後悔してももう遅いのかもしれない。でも…。もう無理だとしても…私の意志を伝えることだけは…まだ出来るよね…?


 私は近いうちに意志を伝えることを決意した。


 ――――――――――――――――――――


 とうとう週末が終わり、月曜日になった。テレビを見ると今週はまだ春だというのに夏のような暑さのようだ。それを見てしまったせいなのか、週末を挟んだせいなのかは定かでは無いが登校日は多少の気だるさがあった。


 学校に着き、教室に入るといきなり、


「陽向くん! おはよう!」


 と言って俺に抱きついてくる美希がいた。


「え、あ…? どういう状況だこれ」


「美月ちゃんを嫉妬させるための演技?みたいなものだよ」


 と小声で美希が囁く。


「そうだとしても恥ずかしいんだが…それにクラスメイトからの視線が痛いんだが…美月に関しては死にそうな顔してるぞ…本当に大丈夫なのかこれ…」


今言った通り美月は今ここで死んでしまおうかという顔をしている。流石に心配になってくる。


「てかそろそろ離れてくれ。流石に俺も恥ずかしい」


「しょうがないなぁ…分かった!」


 まさかずっとこんな感じでいくのか? このままじゃ俺がもたないんだが。

 その後の少しはなにかしてくることは無く、油断していた。しかし昼休憩の時は一緒にご飯を食べようと言ってくるわ、今も放課後にも一緒に帰ろうと言われるわでまるで恋人なのではないかと錯覚してしまう位だった。


「ずっと思ってたんだが、今日流石に距離が近すぎないか?」


「そんなことないと思うんだけどなぁ…嫌ならもうちょっと距離はとるよ?」


「嫌ではないんだが…もう少し距離はとってもらえると嬉しいかもしれない」


「分かった! ごめんね?」


「いや…全然大丈夫なんだ。こっちこそ文句言ってごめん」


「いやぁ…ほんと私陽向くんのこと好きだなぁ〜」


「ん?」


 俺は混乱した。人生で1番かもしれない混乱だ。


「もしかして…聞き間違えだったりする…か?」


「そんなこと無いよ! てか陽向くんがかっこいいのが悪いんだし!」


「待ってくれ。これは告白なのか?」


「いや? ただ好きってだけで告白だけど告白じゃないよ。私はふさわしくないし、もっといい人がいるから…。私は別に今のまま楽しくやれてたらそれでいいんだよ」


急すぎてまだ頭が追いついてない。まず美希は俺のことが好きなんだよな。でも付き合いたいわけでもない…ってことだよな。なんでだろうか。


「本当にそれでいいのか?」


「私は本当にそれでいいの。私のせいで迷惑かけたくないんだ」


「ならいいんだが…出来れば後悔はしないでほしいな?」


「後悔しないで…なんて私は無理な話だと思うよ…」


 後ろを向いてるから見えないが美希は多分泣いているのだろう。だから俺は少し躊躇いながらも後ろから頭を撫でることにした。


「撫でてくれるなんて嬉しいなぁ。蕩けちゃいそう」


 そう言って、少しした後美希はこっちを向いた。


「よし! もう悲しむのは終わりにする! 私は陽向くんの事は好きだけど諦めて親友ポジとして死ぬまで一緒にいることにする!」


「切り替え早いな…。俺も良い友達だと思ってるから一緒にいたいのは事実だが」


「ほらもうそんなことをすぐ言う! だから女の子にすぐ好かれちゃうんだよ…」


「おれそんなにたくさんの人に好かれた覚えはないんだが?」


「そっか…そういえばそうか。ごめんごめん! 気にしないでおいて!」


「そう言われると気になるな…。まぁとりあえずもう家も近いし帰るか」


「そうだね!」


 そう言って俺たちはまた歩き始めた。今日は驚くようなことしかなかったが、思い返してみれば案外楽しかったのでこんな日々が続けばいいと思う。美希の気持ちには応えてあげたかったな。本人が嫌だと言うなら仕方はないんだが。

 そんなことを考えながら歩いているうちに、美希の家に着いた。


「それじゃあね、陽向くん!また明日学校で! それと美月の件は今のまま続行でいいんだよね?」


「おう。まだあんま変化ない感じだから続けようぜ。それじゃまた明日な!」

 

 そう言って俺も家へ向かう。家へ着く頃には、空は夕日によって真っ赤に染まっていた。

 俺はどうすればいいのだろうか。美希の件は本人が気にしないでと言っているから大丈夫なのだろうか。まぁ考えても仕方ないから明日学校に行ってから考えるか。

 そう思い眠りについた。


 ――――――――――――――――――――


私は事実が自分の想像と異なることを心の底では願っていたのかもしれない。しかし、陽向と美希の距離は誰がどう見ても有り得ないくらいに縮まった。一日中ベタベタしてるしあれはずるいよ。


「私だって陽向とイチャイチャしたいのに…。やっぱり私が気持ちも伝えられないような子だからダメだったのだろうか」


 考えれば考えるほど思考が悪い方に偏っていく。2人は付き合っているのだろうか。もう色んなことをしてしまったのだろうか。付き合ってたら悲しすぎて立ち直れそうにない。陽向がいない未来なんて…私には考えられない…。もう後悔しないために、そして真実を確かめるために、明日になったら、私の意志を伝えてみよう。


 ――――――――――――――――――――

 

 次の日学校に行くと、今から戦に行くのではないかというような面構えの美月がいた。一体何があったのだろうか。

 そう思いながら美月を見ていたら、突然立ち上がり、近づいてきて


「ちょっとついてきて…話したいことがあるの…」


 決意を固めていることがよく分かる。話したいことってなんだろうか…。とりあえずついて行ってみよう。


「分かった」


 そうして美月はいつか見たような空き教室に俺を連れてきた。


「えっと…話っていうのは?」


 俺が聞くと、美月が深呼吸をしてから話し始める。

 

「えっとね…まず私は陽向の事嫌いじゃないんだ」


「それは美希からも聞いたな」


 美希という単語が出てきて少し雰囲気が重くなった気がするが流石にそんなことは無い…よな?


「そこら辺聞いたなら説明は省くね。で本題に入るんだけど、今日は私の意志を伝えに来たんだ」


 ――――――――――――――――――――


「私の意志を伝えに来たんだ」


 たとえ無理だとしても絶対に行動した方が後悔は少ないと思うから…。でも、嫌な予感ばかりが頭に浮かび目に涙がたまる。言う前からこんなんじゃダメダメなのに涙は止まらない。


「おい? 大丈夫なのか?」


 陽向にも心配かけちゃった。私なんかにも心配かけてくれるなんて優しくて好きだなぁと思う。これを言えれば苦労はしないのだけれど。


「大丈夫…だよ」


 そろそろ覚悟を決めないとまた何も言うことが出来ずに機会を逃してしまう。そんなのは嫌だ。嫌なんだ。


「私は…ね? 小学生の頃から今の今まで…ずっと陽向の事が好きだったのっ!」


 言っちゃった。拒絶されちゃったらどうしような…。


「え? それって本当なのか?」


「うん。もう私、陽向のことで後悔したくないんだ」


少しの沈黙の後、陽向が話し始める。


「俺も…さ。美月のことどう思ってるのか最近考えてたんだ。小さい頃からずっと一緒にいて気づいてなかっただけなんだと思う。俺も昔から美月のことが好きだったんだ」


 私は夢でも見てるのかなぁと思った。こんなに幸せなことがあっていいのだろうか。

 でも今はそんなことを考える前に言わなきゃいけないことがある。これだけは私が言うんだ。


「私と付き合ってくれますか?」

初めての作品なので、直した方がいいよ!という点があったらご指摘お願いします!

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