第45話 卯月兎紗梨のターン②
「な、な、な、何してるの、卯月さん⁉」
卯月さんは運転席に乗る俺の腰に跨るようにして、密着している。
卯月さんの身体という身体が俺の身体と触れ合っている。特に、彼女の巨大な二つの巨峰が、そのままかぶりつけそうなくらい、俺の口元にあてがわれている。
この態勢は本当にマズい。○Vかエ○本でしか見たことないもん。
「ちゅーしてもいいですか、せーんぱい?」
「え……?」
「ちゅっ」
卯月さんは俺に跨りながら、当たり前のように頬にキスをしてくる。
二度、三度、四度と、連続で続ける。そんなリズムゲームみたいにテンポよくキスされても……。
いくら何でもおかしすぎる。
まあ、卯月さんにキスされるのは居酒屋に続いて二度目なのだが……。
今回は前回とまるっきり意味が違ってくる。
だって、シラフじゃん! ということは正常な判断でキスをしているのだ。
というか、今更気づいたのだが……当然服越しであるというのは前もって伝えるが、俺の下半身にある膨らみが、卯月さんの股間に当たっている。
その事実に気づいた途端、その膨らみがどんどん大きくなっていく。
マズいマズいマズいマズいマズいマズい!
脳内に警報が駆け巡る。
このままだと俺……おかしくなっちゃいそうだ。
「卯月さん……ヤバい……もう、やめよう! ちょっとおかしくなっちゃいそうだから」
「一緒におかしくなりませんか、せんぱいっ?」
「~~~ッッッ‼‼」
そんなことを上目遣いで言われた日には、本当におかしくなってしまう。
下半身の膨らみが加速度的に跳ね上がり、卯月さんの股座にモロに当たっている。……何がとは明言しないが、これもう、半分卒業しているだろ。
「せんぱい、知っていますよ。私のおっぱいたくさん見ているの」
「うぐっ! ごめん……」
完全に無意識だった。こんな状況で更に卯月さんの巨乳に目が行くなんて最低すぎるだろ。
「本当に好きなんですね、おっぱい」
「ひ、否定はしないけれど」
「触りますか、せんぱい?」
「ななな、なに言ってんだ⁉ もっと、自分を大切にしてくれ!」
「せんぱいになら触られても良いですよ? むしろ触ってほしいくらいですっ」
「はあああああ⁉」
本当に何言っているんだ、この子は。
さしもの卯月さんでも、これはバグリ散らかしている。
「こういうシチュエーション、『おぱゆる』でもありましたよね」
「そ、そういえばあったなあ」
「あっちは放課後の教室でしたけど、私たちは車ですね。なんかオトナって感じですね」
「そうかもしれないけど」
マズい……。
俺が『おぱゆる』なるR18に片足突っ込んでいるエッチラノベを薦めたばかりに、卯月さんの倫理観がR18になっている。
「だって、本当だったら、私今日あのお客さんにおっぱい触られていましたから。せんぱいが助けてくれたおかげですよ。ありがとうございます。だから、今私のおっぱいの所有権はせんぱいにあるんですぅ」
「いやいや、意味分からんから」
どういう法律が適用されているんだよ、それ。全法曹関係者が二度見するだろ。
「せんぱいは私のおっぱいに興味無いんですか? それはそれで悲しい気がします」
「……そんなことは……ないけどさあ」
興味あるに決まっているだろ。こんな大きくて柔らかそうなSランクおっぱい、今すぐにでも抱き枕にしたいくらいだわ。
「じゃあ、いいじゃないですか。私がいいって言っているんですよ?」
そんなことを言われたら、理性が吹っ飛びそうになる。
……いいのか……いいんだよな……、本人がそう言っているんだし……。
本能が理性を呑みこむ。
手を伸ばせば、すぐにも彼女の胸に触れられる。
ゆっくりと手を伸ばす。卯月さんはそれを受け入れるように、目を瞑っている。
「この後はどうなっちゃうんでしょうね、せんぱい?」
「~~~~ッッ⁉⁉」
この後の展開……。
否が応でも、そういったことを想像してしまっている。胸を触った先は……どうなってしまうのだろうか。
幸か不幸か、過疎駅の深夜のロータリー。周囲には誰も居ない。このまま“始めても”誰にも気づかれないだろう。
あと数センチ、いや数ミリ手を伸ばせば胸に届くような距離で、ふとあるシーンと重なった。
それはクレーマーおっさんが卯月さんの胸を触ろうとしたあのシーン。
本人の同意があるとはいえ、本能のままに付き合っていない女性の胸を触ろうとしている。それは、あのおっさんとやっていることが何も変わらないのではないか。
煩悩よ、消え去れ――!
一気に理性が盛り返し、煩悩の撃破に成功。一件落着……なのか?
「せんぱい?」
こてん、と可愛らしく首を傾げる卯月さん。ちょっと可愛すぎるぞ。
「やっぱりダメだよ。こういうことは好きな人同士じゃないと」
「私は好きですよ? せんぱいのこと」
「えっ――」
一瞬脳がフリーズする。
す、す、す、す、す、好きって言った?
だが、すぐに脳内に更新データがアップデートされる。
そうだ。好きというのは男としてではなく、人として、職場の先輩として、だ。
「好きって……人としてってことでしょ? あ、ありがとね……これからも職場の先輩後輩としてよろしくね」
「違います。せんぱいのことが、男として好きなんです。……いや、大好きです、せんぱいっ」
「マジか……」
【速報】ベテランアルバイター俺、人生で初めて告白される。




