表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/54

第33話 カンガルー書店七姫店の歓迎会⑦

「えー、せんぱい、玲緒奈さんのこと好きなんですか⁉」


 もちろん、そんな話になってはこのおてんばガールが黙っていない。

 卯月さんが酔った勢いか、俺の身体をゆっさゆっさと揺らしながら喚きだした。


「ち、げえよ! このテキトー女がほら吹いているだけだ!」

「ひどい……。鷹雄くん……うちのこと、適当って……ひっく、ひっく」


 噓バレバレの泣き真似で、俺をおちょくる玲緒奈。酒が進み、どんどんテンションがおかしくなっている。


「大丈夫ですか、玲緒奈さん⁉ あー、せんぱいっ、女の子を泣かせちゃダメなんですよー」

「女の子ってたまじゃないだろ。……ほら、見てみろ! 舌出して、俺をバカにしてる!」


 あっかんべー、をする玲緒奈に、大人げなくムキになってしまい、思わず口をイーっとして悔し顔をしてしまう。

 玲緒奈はそんな姿の俺を見て、ニヤニヤしながらぐびぐびと酒を飲む。俺を酒の肴にするな!


「いやー、やっぱおもしれーわ、鷹雄くんは」


 バンバンと背中を叩く玲緒奈。叩かれる俺。

 意味もなくニコニコする卯月さん。

 一意専心に酒を飲む猫屋敷さん。


 歓迎会はますますヒートアップ。いや、グダってきた。

 酔いが回り、思考能力が落ち、つまらないことを繰り返し言ったり、したり……。

 まあ、これが飲み会のあるべき姿と言われればそれまでなのだが。


「あの、獅戸さんは好きな作品とかあるんですか? さっき、自分と同じでアニメとか好きって言っていたんで」


 酒が強すぎる陰キャ女、猫屋敷さんが一旦、場を整理するために玲緒奈に話を振った。

 さすが猫屋敷さん。やっぱり、最後に頼れるのは猫屋敷さんなのかもしれない。


「あー、『たびっこ』とかアツいよな」

「『たびっこ』面白いですよね。最近、劇場版やっていますよね。行かれました?」

「あー、行ったぜ。鷹雄くんとな! なー、鷹雄くん!」


 玲緒奈が俺の腕にまたしても絡みついてくる。

 サラッと、とんでもない暴露されたのだが。

 自然すぎて、一瞬何言われたか気づかなかった。相手が強者すぎて、やられた瞬間すら気づかなかった的な、あれ。


 猫屋敷さんは驚きすぎて、アイスのように固まっている。


「え……あ……二人で、ですか?」


 猫屋敷さんは何とか言葉を紡いだが、時すでに遅し。


「ああ、二人でだぜ。な、鷹雄くん」


とどめの爆弾が投下され、この場は焼け野原と化す。

そして死体蹴りするように、既に出来上がっている卯月さんが追撃を始める。


「えー、せんぱいと玲緒奈さん二人で映画見に行ったんですかー? あやしいですー! やっぱり、付き合っているんですか! 本当のこと答えてください!」

「だから付き合ってないって! ただ、バイト仲間で映画見に行っただけだって!」


 追撃をかわそうとするも、卯月さんは追撃の手を緩めない。


「先輩後輩の関係で映画、普通見に行きますー? それってデートってことですよねー?」


 ……俺もそう思う。


 しかも、あの日のラスト、あんなことがあったから余計にな。

 ヤバい。また思い出してしまった。あの日の玲緒奈からのキス。

 他意はない。そんなことは分かっているはずなのに、あのワンシーンが脳にこびりついて離れない。


「もう、勘弁してくれよ。付き合っていないのは本当だって」

「疑っていないから大丈夫ですよ、せんぱいっ。だって、もし玲緒奈さんと付き合っていたとすれば、この前私と駅前のK書房に一緒にいったあれが浮気になっちゃいますもんねー」

「へー、ウサギと一緒に駅前のK書房にねー。どういうことかなー、鷹雄くんー?」


 おい、別方向から爆弾投下するんじゃねえよ!

 もうカオスだよ、修羅場だよ、この歓迎会! 


「それは勉強のためだって。卯月さんは本に詳しくないから、色々と本のことを教えるために」

「せんぱいのアフターですっ!」

「おい、アフターとか、変な意味に聞こえるからやめろって!」


 卯月さんの心が汚れている気がする。まさか『おぱゆる』を読んだ影響がもう……。


 というか、今思ったら偶然の産物とはいえ、新人バイト三人とプライベートで会っているんだよな。

 その側だけ見ると、後輩アルバイターに片っ端から手を出す、ゲスアルバイターみたいで嫌だな。


 そんなことを考えていたら、その三人目から最後の爆弾が投下された。


「あの……隠しておくのもフェアじゃないんで一応言っておきますけど、私もこの前、鳥越さんと一緒に公園に行ってカフェに行きました」


「ええええええ!」

「おい……マジかよ」


 猫屋敷さんの暴露により、卯月さんと玲緒奈は阿鼻叫喚。歓迎会は更なる混沌へと向かう。


「あー、やっぱり浮気してるじゃないですかー!」

「おーい、どういうことかなー、鷹雄くん?」


 両隣にいる新人バイト二人から、両腕を引っ張られる。

 痛い、痛い……身体も心も。

 ……というか、誰とも付き合っていないのに浮気ってワードおかしいだろ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ