表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/54

第23話 獅戸玲緒奈とのプライベート

「ういー、鳥越くん、お疲れー」

「お、お疲れ」


 シフト終わり。


 今日のパートナーであるお姉さん系新人バイトこと獅戸さんが、俺に労いの言葉をかけてくる。……これ毎回言っている気がするけれど、どっちが先輩だよ。


 初日、俺の目の前で着替える、という凶行を始めた獅戸さんも、反省したのか、今日はちゃんと更衣室で着替えていた。……当たり前の話だけどね。


「そういやさ、打ち上げの話、前の店長に話したらさ」

「うん」

「割引してもらえることになりましたー!」

「よっしゃー!」


 深夜テンションで盛り上げる俺たち。持つべきものは前職居酒屋の新人バイトだ。 


「あと五日寝ると打ち上げだー♪」

「あといくつ寝るとお正月みたいに言わないで」

「いやー、ガチで楽しみだな、打ち上げ」

「確かに。うちの職場、そういうこと滅多にやらないからワクワクするね」

「鳥越くんは飲めるの?」

「いやー、実は苦手で。一杯でも飲むと、もうキツイね」

「うちが酒の飲み方教えたるぜー」


 獅戸さんはそう言いうと、腕を俺の方に回してくる。……俺は地元のツレちゃうぞ。


「そういやさ、前の店長が、いつくらいに来るか知りたいって。何時集合なん?」

「あー、そういえば考えていなかったな。逆に相場は何時くらいなの?」

「えー。そりゃあ、他の人の都合にもよるけど、うちが働いていた感覚からすると、仕事終わりの七時くらいからじゃね」

「まあそうだよね。俺たちは仕事終わりでもないし、少し早めの六時とかからにしようかな」

「おけまる水産。んじゃ店長に言っておくわ」


 言うが早いが。獅戸さんはデコレーションがついたド派手のスマホを開くと、とんでもないスピードで操作する。


「よしっ、言ったぞ」

「早すぎるだろ……」

「なあなあ、鳥越くん。映画のこと覚えてる?」

「うん。『たびっこ』の劇場版でしょ?」

「そうそう。今度行こうってなってたけど、歓迎会の話でなんかうやむやになったじゃん」

「そーいえば、いつの間にか話題から消えてたな」

「だから、明日行こうぜ」

「明日⁉ 随分急だな」


 どうしてこう陽キャというのは即断即決即行動するんだよ。人生長いんだからゆっくり行こうぜ。


「シフト表見たら、明日ちょうどうち達、休みじゃん? だから、行けんじゃね」

「確かに……ちょうど二人とも休みだわ」

「だろ! こりゃあ行くしかねえな。おっ、明日空いてんじゃん。二人分、予約しておいたぞ。いやー、楽しみだな映画」

「マジか……」


 どうやら、俺の明日の予定が既に決まってしまったらしい。

 決断からの行動が早すぎるだろ、この陽キャ姉さん。


「んじゃ、明日に備えてクソして寝ろよ」

「レディーがクソとか言うな!」


 ☆


 そして翌日。


 昨日獅戸さんが予約した映画館の最寄り駅に向かっている。玲緒奈が予約してくれた映画館は、七姫駅から数駅先にある隣町の映画館だ。


 暫く待っていると、パンツが見えそうなくらい短いレザーショートパンツと、へそが出ている丈が短いモノトーンのカットソーを着こなし、ニット帽とサングラスをかけた、どっかのモデルのような人が近づいてくる。

 この人が、陰キャアルバイターである俺の待ち合わせ相手であるって言ったら、果たして何人の人が信じてくれるのだろうか。


「ういっす」

「おはよう」


 周囲の視線を一身に受け、獅戸さんがやってくる。そりゃあ、こんな格好をしていたら、どこぞの芸能人だと思われるよな。


「ねえ、時間見てよ」

「見たけど、何か?」

「ピッタリだろ!」


 そういえば珍しく獅戸さんが定刻通りにやってきた。


「で、それがどうしたの?」

「凄くね? うちが時間ピッタリにやってきたんだぞ!」

「そりゃあ、まあ」

「褒めてくれよ」

「いや、当たり前だから!」

「ちぇっ、ケチだなぁ」


不良が普通のことをしただけで褒められるみたいな現象、認めねえから。普段から遅刻しない人の方が偉いに決まっているだろ。


 しかし、なんてまあ露出度の高い服装だよ。へそに太ももに……これ公然わいせつ罪につま先だけ突っ込んでいるだろ。

 その刺激的な服装に、待ちゆく男どもが獅戸さんに釘付けになっている。甘い蜜に寄ってくるカブトムシか、きみたちは。


「……さっきからへそと太もも見てるの分かってるからな」

「うぐっ」


 良い子のみんな! 女の子の身体をジロジロ見ているの、バレているみたいだぞ! 注意せよ!


「別に見ていいぜ。減るもんじゃねえし。ほらー」


 獅戸さんは服をめくりあげて、よりへそを強調して見せてくる。

 これ公然わいせつ罪に両足突っ込んでるだろ!


「すまなかったって! だからしまってくれ!」

「しまえねえんだわ、もともとへそ出しのやつだら」

「そうでした!」


 そんな際どいことを朝っぱらから言いながら、俺と獅戸さんは横並びで映画館に向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ