第17話 ライントーーク③
卯月さんからメッセージが届いていた。
《卯月兎紗梨:せんぱい、歓迎会とかやらないんですか?》
歓迎会か。
そういえば、そんなことやった試しがないな。
インドア派が集まる書店員には、あまり肌が合わないイベントなのだろう。
……でも、ちょっとやりたいな。
そう思った理由としては、うちの店は基本的に二人一組で業務を行うことになる関係上、皆が一堂に会することがないのだ。
だから皆揃って親睦を深めてもらうには、歓迎会しかない。
《いいね。歓迎会やってみよう。それに鹿島くんとのお別れ会も並行して出来るしね》
《卯月兎紗梨:鹿島……さん? ごめんなさい、誰でしたっけ?(笑)》
《俺と一緒に働いていたスタッフだよ!》
《卯月兎紗梨:あー、そういえば! すっかり忘れてました(笑)》
鹿島くんの扱いが不憫でならない……。
この三日間、一番の功労者は鹿島くんだからな。
バイトを辞めても、俺はきみのことを忘れないぞ!
《ちゃんと覚えなさい。それで、歓迎会ってどうやって開くの? そういうの、開いたことないから分からないんだけど》
《卯月兎紗梨:私に聞きますそれ(笑)。分からないですよー。せんぱいが幹事やってくださーい(笑)》
《ですよねー。頑張ります(震え声)》
《卯月兎紗梨:ちなみに、歓迎会するとしたらいつですか?》
《来週の水曜日になると思う》
来週の水曜日というのは理由がありまして。
実は我が店『カンガルー書店七姫店』は、毎月第四水曜日は、大規模清掃で業者が入るので定休日なのだ。
《卯月兎紗梨:その日なら授業早く終わるので大丈夫ですよ~》
《おっけー。じゃあ後日、他のメンバーに聞いてみるよ。幹事役大変そうだ(笑)》
《卯月兎紗梨:明日、店長に聞いてみましょうか? もしかしたら店長がやってくれるかもしれないですよね!》
《うーん。それはあまり期待しない方がいいかも》
《卯月兎紗梨:そうなんですね》
《卯月兎紗梨:(泣いているウサギのスタンプ)》
店長が歓迎会の幹事なんて面倒くさいことするわけないし、そもそも参加するわけない。
限界サラリーマンの店長は、休日の睡眠に命をささげている。業務外のイベントに参加するはずない。
歓迎会もいいが、俺にとっては来月のシフト作成の方が大事だ。
忘れないうちに聞かないと。
《話変わるんだけど、来月の予定どんな感じ?》
……あれ、返信が止まった。
あれだけ爆速で返信が返ってきた卯月さんからのメッセージがパタリと止まってしまう。
気づけば深夜0時を回っていた。学生の卯月さんにとっては眠る時間だろう。
すると五分くらい経ってから、返信が来た。
《卯月兎紗梨:なるほど。そういうことですね。せんぱいは、そんなことでお願い使っていいんですか?》
は? 何言ってるんだ、急に?
卯月容疑者の意味不明な供述に、たまらず質問を投げかける。
《ちょっと待って。全然意味わからないんだけど》
《卯月兎紗梨:今月の予定聞くってデートのお誘い的なことじゃないんですか?》
はああああああああ⁉
なーに、変な勘違いしちゃっているんだ、この天然ちゃんは!
というか、俺の言葉足らずのメッセージも悪いな、これ。
確かに、「来月どう?」とかしか言っておらず、シフトのことなんて一言も言ってない。
《ごめん。そういうことじゃないんだ。来月のシフト、俺が組むことになっていて、それで来月の予定を聞きたいだけなんだ。つまり、バイト関連ってこと!》
《卯月兎紗梨:そういうことだったんだ(笑) からかわないでくださいよ、せーんぱーい!》
《ごめん。何と言ったらいいか分からん》
恥ずかしめてごめん、卯月さん。
でも、きみが勝手にあらぬ想像をしただけだからね!
《卯月兎紗梨:シフトですよね! 火曜日は夜まで授業があって、金土はサークルがあるので、日月、水木が大丈夫です》
《ありがとう!》
さすがは現役大学生。多忙である。……いや、俺と他二名が暇すぎるだけか。
とりあえず、キリがいいのでライントークはここで終了しよう。
明日から毎日ラインチェックしよう。というか、今まで毎日チェックしなかった俺がヤバいだけなのだが。
シフト作成に、歓迎会。ベテランアルバイターは案外忙しい。




