第16話 ライントーーク②
さあて、ラノベの続きでも読むか。
本棚にささっている未読のラノベに手をかけようとしたその時、ポン、とスマホの通知が鳴った。
送り主は卯月さんだ。
《卯月兎紗梨:あ、やっときた(笑) 待ってましたよ~、せんぱ~い(笑) 接客だけは得意なので頑張りますよ~(笑) まだ決まってないんですね。りょーかいです。それはそうと、せんぱいから教わったこと考えていたら、ここ二日間授業に集中できません(笑)》
なんとも卯月さんらしい可愛いらしいメッセージだ。もう、文字が可愛く見えるもん。しかし、卯月さんは本当に真面目な子だな。俺の中で好感度がうなぎ登りだ。
そんな、はやる気持ちを抑えて、冷静にメッセージを返す。
《授業は集中して聞こうか(笑)。でもレジ打ちは次のシフトまでに予習しておいた方がいいかも。次、いつ入るの?》
すぐに卯月さんから返信が返ってくる。
《卯月兎紗梨:レジ打ち、難しーいんですもーん(泣) 次は明日入ってます》
《明日、俺休みだから頑張ってくれ》
《卯月兎紗梨:えー、せんぱいいないんですかー? 寂しいですー(笑)》
《頑張って独り立ちしてくれ。ということは店長が入っているのかな?》
《卯月兎紗梨:犬塚さんって方が店長さんですか?》
《だね。店長は俺みたいに甘くないから覚悟しておいてね》
《卯月兎紗梨:えー! ヤバいじゃないですか! 助けてくださーい、せんぱーい(泣)》
《冗談冗談。普通に優しい店長だから大丈夫だよ》
《卯月兎紗梨:もうせんぱい、いじわる! とりあえず安心です!》
あー、女の子とラインするの楽しー。
世のリア充はこれを毎日やっているのか。そう考えると、俺はどれだけ人生損しているのだろうか。考えるだけでも怖くなってきた。
卯月さんとのトーク画面を閉じると、獅戸さんからもメッセージが届いていた。
《獅戸玲緒奈:褒めたってなにも出ねーぞ。そういえば、鳥越くんは『たびっこ』の映画やってるの知ってる?》
《もちろん知ってるよ。日本縦断編でしょ? めちゃくちゃ面白そうだよね》
《れおたん☆:ね。今度一緒に行かない? 彼氏、アニメとか興味無くて誘えないんだよね》
映画のお誘い……だと!
それはいわゆる世間的にいうところのデート、ということではないのか?
お花畑の思考を、全力で否定する。
そもそも、獅戸さんは彼氏持ちだ。そういうことではない。
男や女の境界線が薄れている獅戸さんのことだから、俺を異性として全く見ていないのだ。
同性の友達と映画に誘うような軽い感じで誘ってきたというわけだ。
だが、女性に映画に誘われているのが確かなわけで、恋愛経験ゼロの陰キャの心臓はその事実だけで悲鳴を上げている。
お誘いは嬉しいし、普通に『たびっこ』の劇場版は見たかったし、ぜひとも行きたいところなんだが、彼氏持ちの女性と二人で映画に行っていいものなのだろうか。
《ぜひとも行きたいんだけど、二人で行っていいの? 彼氏さんに迷惑かからない? 俺嫌だよ、自分が原因で険悪になるの》
《れおたん☆:あー、それね。気にしなくていいぜ。うちら、そういうのフリーだから》
そういうものなのか。
恋人が居たことないから分からないけど、俺だったら彼女が他の男の人と一緒に遊びに行くのは普通に嫌だが。
まあ、彼女なんて一生できるわけがないので、捕らぬ狸の皮算用ではある。
獅戸さんカップルは特殊なのかもしれないな。
本人がそう言っているんだし、お言葉に甘えるとしよう。
《じゃあ行こうかな》
《れおたん☆:よしきた。いつにする? うちはいつでもいいぜ》
《いや待て。シフト決めるのが先だろ》
《れおたん☆:確かに! てかシフトってどうやって決まるの? 再来週の分のシフト希望まだ出してないんだけど》
デートの予定立てている場合ではねえ!
新人バイトちゃんたちとのラインが楽しすぎて、つい忘れていた。
店長にこの三人のことを全て丸投げされた俺は、彼女たちのシフトも考えないといけないのだ。なんてこった。
《シフトは俺が決めることになっているんだよね。忘れてた。再来週、というか来月からの予定ってどんな感じ?》
《れおたん☆:今いった通り、暇だぜ。週5までだったらどこでもぶち込んでいいいぞ》
《それがシフト作る側にとっては一番助かるんよ。いつでもいいってことだな?》
《れおたん☆:おっす》
普通に助かる。だが獅戸さんの性格上、急にブッチされそうで怖い。
この調子で二人の予定も聞かなくては。
そう思っていると、猫屋敷さんから返信が届く。
《猫屋敷宮緒:『ミナリア』はいいゾ~これ。なぜミナリアが尊いかと言うとですね、ミナの異変に一番最初に気づいたのは実はリアなんですよね! 主人公のレイは気づかなかった! わかりますか、この違いが! 分かりますよね! 結論『ミナリア』が最高!》
《勉強になります、先生!》
ネット用語に、オタク特有の早口(文面)。
こういうメッセージを見ていると、猫屋敷さんは本当にこちら側の住人のようなので会話していて安心する。
……おっと、いかんいかん。シフトのこと聞かないと。
《話変えちゃって申し訳ないんだけど、今月の予定ってどうなってるかな? シフト、俺が決めることになっていて》
《猫屋敷宮緒:そうなんですね。特に予定ないので大丈夫です》
《了解。ありがとう》
猫屋敷さんもいつでも大丈夫らしい。
遊び盛りの二十歳の女の子が、全く予定がない、というのも不安になってくるが。
シフト作る側にしてみれば、こんなにありがたいことはない。
募るところ、学校に通っている卯月さん中心に考えればシフトが組めそうだな。




