第38話 アオハル☆リロード
ついに本編開始!?
高校生編、いよいよ開幕です!!
春だ。
桜が咲き誇る4月。
俺たちの物語の新章が始まる季節。
慶鳳大学附属高等学校。
その名を聞くだけで、誰もが憧れる進学校。
確かに、俺たちにとっては3年間慣れ親しんだ中学の隣の建物にすぎない。
でも、それでも胸の高鳴りを抑えられない。
「よし、行くぞ」
俺は小さく呟いた。
空は青く、雲ひとつない。
まるで俺たちの未来を祝福しているかのよう。
桜並木の下を歩く。
ふわりと舞い落ちる花びらが、俺の肩に優しく降り立つ。
この道も何百回と通ったけど、今日は特別な気分だ。
真新しい制服がサクサクと音を立てる。
これが、今日という日の新鮮さを主張している。
校門をくぐる。
見慣れたはずの風景が、今日は少し違って見える。
石畳の道。歴史を感じさせる重厚な校舎。
そして、希望に満ちた表情の新入生たち。
まあ、大学までエスカレーターの一貫校なので、半分以上は知った顔なんだが。
それでも、制服が変わったからなのか、何だか輝いて見える。
これが高校生って感じなのかな。
「おーい、ヒロ!」
聞き慣れた声に振り返る。
そこには、中学からの友人、健太の姿があった。
「よお、ケンタ! 今日はなんかいつもと違うな」
「だろ? 俺もなんかワクワクしてるぜ」
健太の言葉に、俺も思わず笑みがこぼれる。
そうだ。これからが本番なんだ。
新しい出会い、新しい経験。
そして...
ふと、頭をよぎる二人の顔。
美玖と真奈美。
中学のとき、二人から告白されて、俺は「高校生になったら答えを出す」と約束した。
「いよいよ…だな」
胸が高鳴る。期待と不安が入り混じる。
俺たちは肩を並べて歩き出す。
桜の花びらが舞い、春の匂いが新しい生活への期待を膨らませる。
そして、俺たちは会場へと足を進める。
入学式。
高校生活の幕開けだ。
「お、あそこにいるのハルキじゃねえ?」
「ああ、行こう!」
健太と春樹と俺、中学から仲の良かった3人で会場に入っていった。
この時はまだ知らなかった。
この何気ない今日という日が、俺の人生を大きく変える日になるなんて。
そして、予想もしなかった驚きの連続が、俺を待ち受けているなんて──
まず、最初の驚きは入学式が進む中で訪れた。
「続きまして、新入生挨拶。新入生代表、北里真紀」
司会の先生の声が会場に響き渡る。
「はいッ!」
その瞬間、会場が静まり返った。
俺の目の前で、一人の少女がゆっくりと立ち上がる。
艶やかな、少し赤みがかった茶色い髪。
ポニーテールに結われたその髪が、彼女の動きに合わせて揺れる。
「まさか…」
思わず呟いてしまう。
隣の健太が「どうした?」と小声で聞いてくるが、返事をする余裕すらない。
彼女が舞台に向かって歩き出す。
その一歩一歩が、妙に艶めかしい。
ザワザワ。
男子たちの間で小さなつぶやきが起こる。
「うわ、めっちゃ可愛い…」
「あれ、附属中の子か?」
「いや、見たことないぞ」
「胸でっか……」
舞台に立った彼女が、ゆっくりと顔を上げる。
優しそうな目。柔らかな微笑み。
そして──
「えっ!?」
思わず声が漏れる。
彼女の目が、真っすぐ俺を捉えたのだ。
「おい、ヒロ。知り合いか?」
隣で春樹が不思議そうに尋ねる。
「ああ...」
答える声が震えているのが自分でもわかる。
北里真紀。
俺の幼なじみで、斜め前の家に住んでいる。
小学校までは一緒だったけど、中学からは別の学校で…
「慶鳳大学附属高等学校に入学した新入生を代表して、御挨拶申し上げます」
凛とした声が会場に響く。
その声に、会場全体が引き込まれていく。
俺は、呆然と彼女を見つめるしかない。
中学に入ってからは、何度か遊ぼうとしたけど、いつも「忙しい」と断られて…
そのうち、俺も部活や友達で忙しくなって...
「これからの3年間、共に学び、共に成長していけることを、心より楽しみにしております」
真紀の言葉が、深く胸に刺さる。
彼女の姿は、もはや俺の知っている幼なじみのそれではない。
まるで、別の生き物のように輝いている。
「嘘だろ…」
小さくつぶやく。
隣の健太が「なんだよ、お前」と首をかしげる。
挨拶が終わり、真紀が席に戻ってくる。
彼女と目が合う。
にっこりと微笑んで、真紀が小さく手を振る。
「うわっ」
思わず後ろに倒れそうになる。
慌てて姿勢を正す。
「ヒロ、大丈夫か?」
心配そうに春樹が声をかけてくる。
「あ、ああ…大丈夫」
落ち着こうとするけど、心臓の鼓動が収まらない。
真紀の再登場。
そして、美玖と真奈美との約束。
『高校生になったら結論を出す』
その言葉が、またも頭をよぎる。
これが偶然なのか、それとも…
俺は深呼吸をして、もう一度前を向いた。
入学式が終わり、教室に移動する時間。
俺は周りの流れに身を任せ、ぼんやりと歩いていた。
「おい、ヒロ。さっきからずっと上の空だぞ」
春樹の声で我に返る。
「あ、ああ... ちょっとな」
「あの子のことか? 新入生代表の」
鋭いな、健太。
「まあ... な」
「知り合いなんだろ? 幼なじみとか?」
「よく分かったな」
「お前の反応見りゃ分かるよ。それにしても、すげえ美人になったんだな」
健太の言葉に、つい頷いてしまう。
そうだ。真紀は本当に...
そんな考えに耽っていると、突然、背後から声がかかった。
「ヒロっちー!」「宏樹!」
「おお、美玖! 真奈美!」
「ハルキとケンタも久しぶりね! 教室まで一緒に行きましょう!」
「ヒロっちクラス分け見た? 1組! 高校でも一緒のクラスだね! 1年間、よろしくね」
「おう、こちらこそよろしく!」
「ハルキとケンタは残念ね」
眉をちょっとしかめて真奈美が言った。
「ま、こっちはこっちで楽しくやるさ」
そう。俺と真奈美、美玖の三人は奇跡的に同じクラスになった。
何やらラブコメの神様が仕事をしているのを感じる。
「お前ら本当に仲いいよな。それじゃ、俺は3組だから」
「俺は6組。またな!」
健太と春樹の言葉が行き交い、二人と別れを告げる。そうして俺たちは、1組の教室へと足を向けた。
教室に着くと自分の席を探して座る。
机の上に置かれていた資料など、荷物を整理していると、俺の目の前に美少女が現れた。
真紀だ。
「久しぶりだね、ヒロ!」
「真紀! さっきはめちゃくちゃ驚いたよ!」
「代表挨拶の時、すごく呆然とした顔してたよ。エヘヘ、サプライズ大成功、かな?」
「ああ、驚いた。勉強、頑張ったんだな」
「うん……頑張った。頑張ったんだよ……」
「それに、すごく綺麗になったなあ……」
ついつい、親戚の子の成長を喜ぶオジサンのようになってしまった。
「あ、ありがと……」
顔を赤くする真紀。
その後ろからもう1つの驚きが顔を出す。
「北里さんだけじゃないんだぜ、ヒロ!」
「まさか……よ、ヨッシー!?」
佐竹義明。かつてイタズラで真紀の命を危うく奪いかけ、俺が更生させた少年がそこにいた。
短く揃えられた短髪、切れ長でちょっと目つきの悪い顔は精悍になり、筋肉質な身体と相まってスポーツに打ち込んできたのがわかる。
「俺は野球の推薦だぜ」
「スポーツ推薦か! やるなぁ!! うぉぉぉ!」
俺は席を立ち上がり、佐竹と熱いハグを交わした。
「男の子同士っていいな……」
と、小さく呟いた真紀。バッチリ聞こえているぞ。
そこへ、美玖と真奈美もやって来た。
「あら、宏樹、こちらの新入生代表の方は知り合いだったの?」
「ヒロっちー、私たちにも紹介してー!」
「ああ、こっちの2人からな。
彼女は北里真紀。俺の斜め前の家に住んでる幼馴染だ」
「んなッ!?」
(美玖ちゃん、いきなり新キャラで強敵来たよ!?)
(マナミン、私もそれ思った! 幼馴染枠とか反則!! それにあの胸!)
(同じ人間とは思えないわね。何なのかしら、あの駄肉……)
(駄肉……許すまじ………)
2人がヒソヒソと何か話しているが、構わず紹介を続ける。
「で、こいつが佐竹義明。同じ小学校の友達だ」
「よろしく!」
「「よ、よろしく」」
真紀と佐竹にも美玖と真奈美を紹介していく。
そして、今日一番の驚き。その瞬間が訪れた。
ガラッ!
教室のドアが開くと同時に、俺の人生も大きく開かれたような錯覚が訪れる。
まるで異世界からの来訪者のように、彼女は現れた。
プラチナブロンドの髪が春の陽光を受けて眩しく輝き、まるで天使の後光のよう。腰まで伸びた美しい髪は、ゆらゆらと揺れて俺の心をも揺さぶる。
「うわ…」「マジか…」「天使様…?」
クラスメイトたちの小さなつぶやきが聞こえる。
だが、俺の耳にはそんな声はほとんど届かない。全身の感覚が、目の前の光景に吸い込まれていくような感覚。
エメラルドグリーンのリボンがふわりと揺れる。
スラリとした長身から醸し出される優雅な雰囲気。
透き通るような白い肌。
そして、記憶のどこか遠くを刺激する、あの青い瞳。
「え…」
俺の口から小さな呟きが漏れる。
その瞬間、彼女の瞳と俺の目が合った。
時が止まったかのような錯覚。
周囲の空気が凍りついたような感覚。
彼女の瞳に、驚きの色が浮かぶ。
次の瞬間、喜びの涙が光る。
「Hi…ro…ki…?」
聞こえるか聞こえないかのような小さな声。
だが、俺の耳にはハッキリと届いた。
「Hiroki!」
彼女は叫んだ。
そして、駆け出した。
教室中の視線が、俺と彼女に集中する。
まるでスローモーションのように、彼女の姿が俺に近づいてくる。
髪が風になびく。
瞳に涙が光る。
制服のスカートがひらりと舞う。
そして──
「Hiroki...」
彼女は俺に飛び込んできた。
そんな彼女を俺は受け止めた。
柔らかな感触と、なぜか懐かしい香り。
そして、予想外の出来事が起こる。
彼女の唇が、俺の唇に重なった。
「えええええええっ!?」
クラス中が驚きの声を上げる。
だが、俺にはもはやそんな声すら聞こえない。
目の前の光景が、頭の中をぐるぐると回る。
なんてこった。
俺の高校生活、始まって数時間で修羅場確定かよ!
頭の中がぐるぐる回る中、やっとのことで彼女から離れた俺。
教室中の視線が刺さる。男子からは羨望と嫉妬、女子からは好奇心と驚きの眼差し。
そんな中、一番ヤバいのは──
「ヒッ!」
背筋に冷たいものが走る。
ゆっくりと振り返ると、そこには俺の運命を握る3人の美少女が立っていた。
美玖の笑顔が引きつっている。
真奈美の瞳が怒りに燃えている。
真紀の表情が凍りついている。
「ねぇ、ヒロっちー?」
「宏樹、説明してもらえるかしら?」
「ヒロ、これはどういうこと……?」
3人の声が重なる。
その声には甘さなんてみじんもない。
俺は喉の渇きを感じながら、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「あ、ああ、これは...」
言葉を探していると、謎の美少女が俺の腕にしがみついてきた。
「Hiroki ! Tu m’as tellement manqué... tellement manqué. Je suis entrée dans cette école juste pour te voir, tu sais ?」(ヒロキ! 会いたかった…会いたかったです。私はあなたに会うために、この学校に入ったんですよ?)
突如、彼女の口から飛び出すフランス語に周囲は更に驚く。
しかし、このプラチナブロンドの髪……やはりどこかで見覚えが………
そうして俺はハッと気づく。
「Chloé ? C'est toi, Chloé ?」(クロエ?クロエなのか?)
「oui !」(はい!)
そう言って彼女は微笑む。
「Je suis surpris. Comment as-tu su que j'étais ici ?」(驚いた。どうして俺がここにいるってわかったの?)
「Hiroki, tu es célèbre, alors je t'ai tout de suite reconnu. J'ai une correspondante japonaise, et elle a trouvé ce magazine et me l'a envoyé.」(宏樹は有名人だからすぐにわかりました。私、日本の女の子と文通していたの。それで彼女がこの雑誌を見つけて送ってくれたんです)
彼女が手にしていたのは、中学二年の時に表紙を飾ったバスケットボールの専門誌だ。かなりボロボロだ。きっと数えれないほど読んだのだろう。
「Ah bon ? Je suis content de te voir. Oh, les autres sont surpris. Chloé, tu parles japonais ?」(そうだったのか。会えてうれしいよ。おっと、他のみんなが驚いているね。クロエ、日本語は喋れるの?)
「あー、まだ勉強中ですけど、それなりには喋れるつもりです。日本人の子と文通していたし、おばあちゃんが日本人だったので、教わったのです」
「そうだったのか。うん、日本語も普通に喋れてるよ。
それじゃクロエ、みんなにも自己紹介をして」
「はい! 私はクロエ。クロエ=ルクレール。フランスのリヨン出身です。日本にはヒロキと結婚するために来ました!」
自己紹介を促したら特大の爆弾が降ってきた。こんな事ってある!?
「「「はあぁ!?」」」
美玖、真奈美、真紀、佐竹の4人だけではない。俺を含めクラスの全員の反応がコレだ。
冷静に真奈美が質問をする。
「宏樹のフランス語にも驚いたけど……結婚って、あなた宏樹の何なの?」
「私は中学生の頃、旅行でリヨンを訪れたヒロキに命を救われました。その時に決めたのです。私の一生をこの人に捧げる、と。それに、唇も奪われましたし、あんなに胸を激しく触られた事は今でも忘れません……」
顔を赤らめて恥ずかしそうにいうクロエ。
キッと俺を睨みつける真奈美。
「そ、それなら私もヒロっちとキスもしたし、おっぱいだって…」
「美玖は余計な事言わないで!?
クロエもいかがわしい感じで言わないでよ!?
ただの心肺蘇生だよ!?
人工呼吸と心臓マッサージだよ!?」
「みんなズルい……私はキスだけなのに……」
「真奈美さん!?」
「わ、私だって! ヒロを思う気持ちは負けてないもん! キスしたのは一番早いと思うし、一緒にお風呂に入って一緒に抱き合って寝たことだって何度もあるし!」
「真紀さんも!? ってか、それは幼稚園の頃の話だよねぇ!?」
ヒートアップする俺の周囲。
そしてそれ以外のクラスメイトから降り注ぐ、ゴミを見るような目。
それはそうだろう、入学式の直後から美少女ハーレムを作り上げ、その彼女たちが性体験の暴露大会を始めてしまったのだ。
俺の高校生活は、こうして早くも終わりを迎えた。
だが、俺は諦めない。俺の青春を取り戻す戦いはこれからだ!!
【完】
皆様ご愛読ありがとうございました!
先生の次回作にご期待下さい!
……じゃねぇよ!!
ふう、落ち着け。
俺は高校に入って、美玖と真奈美、2人のどちらと付き合うのか決めないといけなかった。
そこへ現れたのが真紀。
これだけ彼女が頑張ったのは、どう考えても俺を想ってのことだろう。
そしてクロエ。
フランスで助けた彼女が、まさか俺を追いかけて来てくれるとは……
重い。
みんなの想いが重すぎる……
ガララッ
そうこうしていると教室に先生が入ってきた。
スーツを軽く着崩し、メガネをかけた若い女教師だ。
きっとサバサバ系お姉さんタイプの教師に違いない。
「おーいお前ら、席に着けー」
驚くほどハスキーでボーイッシュな声が響く。
先生が自己紹介を始める。
「私は『灰原祥子』。気軽にショーコ先生とでも呼んでくれ。数学担当だ。それと、年齢は聞くな」
ほらやっぱそうだ! 間違いない!
ここへきてラブコメの神様が突然勤勉になったのを感じる。
「それと、席なんだが、とりあえずは出席番号順になっている。が、西森だけは例外だ」
何故か呼ばれる自分の名前。そう、実は俺も不思議に思っていた。なぜ俺だけズレているのかと。
「西森はフランス語がネイティブレベルで話せると聞いている。悪いが一年間はクロエの隣で面倒を見てやってくれ。この学校に入れるくらいだ。とりあえず日常会話に問題はないレベルだろうが、授業なんかは難しい日本語があるかもしれん。ひとまず明日席替えを行うが、西森とクロエはひとまとめにして動かすから理解してくれ。それじゃ、こっちの端から各自簡単な自己紹介を──」
灰原先生の言葉に、教室全体が緊張感に包まれる。
最初に立ち上がったのは、クラスの端に座っていた小柄な少女だった。
「は、はじめまして! 相沢さくらです! 趣味は...あの...」
声が震えている。緊張のあまり言葉が詰まってしまったようだ。
「大丈夫だ、落ち着けー」
灰原先生の優しい声に、さくらは深呼吸をして続けた。
「趣味は読書です。特に推理小説が好きです。よろしくお願いします!」
拍手が沸き起こる。さくらは赤面しながら席に座った。
そして、自己紹介は順調に進み、いよいよ問題の4人のうち、最初の一人の番が来た。
立ち上がったのは真紀だ。
「はじめまして。北里真紀です」
凛とした声で語り始める真紀に、教室が静まり返る。
「部活はまだ決めていません。それで、えっと…私は…」
真紀は一瞬俺を見つめ、頬を赤らめる。
「私は、失っていた大切な絆を取り戻したいと思います!」
真紀の言葉に、女子たちから「キャー!」という歓声が上がる。
そして美玖の順番が来る。
「はーい! 東城美玖です! 部活は未定です。そして…」
一瞬俺の方をチラッと見る。
「高校生活の目標は、大切な人とずっと一緒に過ごすことです!」
キラキラした笑顔で宣言する美玖に、男子たちからため息が漏れる。
真奈美の順番が来て、彼女が立ち上がった。
「皆様、初めまして。堀北真奈美と申します」
凛とした姿勢で語り始める真奈美に、再び教室が静まり返る。
「文芸部に入部予定です。そして、私も…大切な方との絆を深めたいと思っています」
真奈美の言葉に、また男子たちがざわつく。
そして…
「Bonjour! クロエ=ルクレールです!」
クロエが立ち上がった瞬間、教室中の視線が彼女に集中する。
「フランスから来ました。日本の文化をもっと知りたいです。そして…」
クロエは真っ直ぐ俺を見つめる。
「私の運命の人と一緒に、素敵な思い出を作りたいです!」
「うおおおー!」
男子たちから歓声が上がる。
全員が自己紹介を終えた後、最後に立ち上がったのは、クロエと共に特別席に配置されていた俺だった。
この状況でトリを務めるとか、マジで勘弁して欲しい。
「えっと…西森宏樹です」
言葉に詰まる。4人の美少女が俺を見つめている。その視線の重さに、頭が真っ白になる。
「部活は…帰宅部の予定です」
その瞬間、教室中がざわついた。
「えっ? 西森バスケやらないの?」
「マジか? あの西森が?」
驚きの声が上がる。中学時代のバスケの実績を知っている生徒たちは、特に驚いた様子だ。
「あと…みんなと仲良くなりたいです…」
緊張のあまり、ありきたりな言葉しか出てこなかった。
「ふーん、"みんな"ねぇ。ふふふ……あなた、面白いわね」
灰原先生が意味ありげな笑みを浮かべる。
「西森くん。君の高校生活、とっても興味深いわ」
先生の言葉に、教室中が再び騒がしくなった。
これが俺の高校生活の始まり。
初日からこんなことになるなんて誰が予想したであろうか。
この先どうなってしまうんだろう。
俺は深いため息をつきながら、窓の外に広がる青空を見上げた。
ラブコメの神様……
何もここまで仕事しなくてもいいんですよ!?
俺の悲痛な心の叫びは、春のさわやかな空に消えていった。
続きが読みたいと思って頂けましたら、高評価の程よろしくお願いいたします。
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今回から、私生活の都合により週二回の投稿に変更させて頂きます。
月・木の更新となります。よろしくお願いいたします。




