たたかい。
教室へ入ると、既に大勢が登校していた。
昨日見たテレビの話、登校中に何やら事故を目撃してしまった話など、自分の席に着くまでに一体いくつトークテーマを耳にしたのだろうか。
そんな喧騒の中、僕は窓際の席に着いた。
それと同時に、1人の男が声をかけてきた。
「おはよー、あらた。今日俺全然寝てないや〜。」
その正体は、同じクラスの友人の滝川 習作だった。
「早く寝ろよ。テスト近いんだぞ。ゲームなんてやってないで、勉強したらどうなんだ。」
彼はあくびをしながら答えた。
「まぁなぁ。でも前回の定期テスト前日だけ教科書見たんだけど、学年一位だったよ?」
そう、つまりは天才なのである。
「まぁいいや。それより朝会行こうぜ。」
気づけば、周りのクラスメイトは教室から出始めていたので僕たちも朝会へ向かった。
うちの高校は理由は知らないが、朝会は外で行う。
夏は地獄だ。
「…であるからして…」
長々と校長の話を聞いている。
隣のクラスの担任の先生がウトウトしてるのを見て、先生というのも大変なんだなと感じた。
その時、どこからか視線を感じた。
辺りを見渡すが、生徒以外の人間は見当たらない。
しかし僕にはわかった。
こちらを見ているのは生徒ではないと。
そのうちに視線は感じなくなった。
「なんなんだろ。今朝の白い髪の彼といい、今の視線といい、なんだか変な一日だ。」
……体育館の屋根の上。
一人の男が座っている。
「ふーん。ここが君の学校なんだね、新汰。」
彼は、バチっという音と共に屋上の上から去った
ーー放課後ーー
学校を終え、帰宅の用意をする。
いつものように和葉、習作と共に帰るため、和葉のクラスの前へ行く。
その時であった。
僕は信じられない光景を目の当たりにした。
「と、虎?」
廊下の窓から校庭を見る。
そこには紛れもなく、虎がいる。
しかしただの虎ではない。漆黒の毛に覆われ、状況を掴めない僕でも良いものではないことは理解できた。
「おい。習作。あれ見えるか?」
「うん、みえるよー。」
習作に見えているようだ。
しかし、帰宅のために校庭を通る生徒たちにはすぐ側にあんな化け物がいるのに気付いていないようである。
「他の人間には、見えていないのか。」
一体あの怪物は何者なのか。
検討はつかないがひとまず下に行こう。
「習作!和葉を頼んだ!」
習作に待機するように伝え、僕は校庭へ向かった。
靴を履き、外へ出る。
すると虎は僕の動きに反応して動く。
「グルル…」
急すぎる展開ではあるが、放ってはおけないのも肌で感じた。
これが最初の戦いであり、最後の日常だった。